いだてん 第30回「黄金狂時代」

副題はチャップリンの映画だっけ? そういえばヒトラーの話ちょっと出てたな。

ロサンゼルスオリンピック編。こうやってドラマを見ているだけでストックホルム(日本初参加)→ベルリン(中止)→アントワープ第一次世界大戦後)→パリ(四三引退)→アムステルダム人見絹枝物語)→ロサンゼルス(水泳大国日本)と大まかなオリンピック史がちゃんと脳内で定着するからすごいな~。

水泳日本現地組の腹痛ドタバタ劇は安定のクドカン節という感じで怒濤の勢いで全てをなぎ倒していく感じに心地良く飲み込まれた。人情派だったはずの鶴さんがまーちゃんもびっくりのメダルの鬼に変貌してるのとか、一見コメディなんだけど、まーちゃんに影響されて&現地の雰囲気に飲まれて&なまじちょっと実現可能性を見てしまった結果、必要以上に結果を求めて突き進んじゃうみたいなの、戦争に突き進む非日常に飲み込まれていく一般市民の縮図みたいで笑えない部分も。

実感放送の話。バカバカしすぎるけど実話なんだろうな~。こんなとこで創作入れる必要無いもんな。陸上短距離で実際には10秒程度の競技が実感放送だと一分以上になるとか、めちゃくちゃありそうなエピソードで笑ってしまう。おそらく水桶でバシャバシャ効果音出したりするのも実話だよな。こういう本人たちが大真面目であるがゆえに面白いエピソードはいいなぁ…心穏やかに楽しめる。

オリンピックの日本招致の話。社交辞令?の「応援するよ!」って言葉にホイホイ乗せられて、いざ誘致合戦の場に乗り込んでいったら周回遅れ感たっぷりというシーン、すごい「日本っぽい」エピソード過ぎて笑えない。なんかこう、微妙にいろいろズレてる感じとか場の空気を読む能力が高いくせに最終的に読めない方向に突き進む感じとか、重いものを飲み込まされたようなゲンナリ感。これを来年オリンピックを開くというタイミングで見せてくるの、かなり(制作側が)強メンタルというかなんというか。オリンピックに向けたプロパガンダ大河かと思った時期もありました(いや、クドカン脚本という時点でプロパガンダは無いなとは思ったけどさ)…。

この時点ではローマが最有力候補であること、ヒトラーがオリンピック嫌いなのでベルリンが流れそうなこと、その結果ローマが繰り上がったら1940大会の日本開催も夢ではないこと、が嘉納先生のほんのちょっとの会話で説明される部分、すごい上手かった。こんなに近代世界史に疎い私でもすんなり事情が理解出来るというのがすごい。どれだけセリフが洗練されてるかってことだよな~。

オリンピックで勝ちまくった結果「一種目も失うな」が呪いのように選手にのしかかるの、なんて言うか人間の自己肯定感に対する麻薬のような依存心をまざまざと感じるようでかなりしんどい。今回のサブタイはこの状況を示しているという面もあるのか。勝つことが嬉しいことではなく義務になっていくの、冷静に考えたらかなりバカバカしいんだけど、そういう思考から逃れられないという状況はあるあるなんだよなぁ。あと、参加することに意義のあったはずのオリンピックが「勝つこと」にシフトしていく理由が「国民感情を上向かせること」であるのが心底恐ろしい。怖いよ~なんか全然過去の話に感じられなくて怖いよ~;;

今週の孝蔵。質屋で流れないように毎月お金を払ってくれている万朝さんに涙。そしてその万朝さんの噺を聞きに行って、楽しそうな妻の姿に奮起する孝蔵…だけど私は知ってるんだ。これは長続きしないヤツ。でもそういう生き方もいいのかもしれない。別に「心を入れ替えて努力家になりましためでたしめでたし」じゃない物語が当然のようにあり得ることを、孝蔵の生き方は私に教えてくれる。

嘉納先生の「柔道」に対する見解。「これまで誰も聞いてこなかったから話さなかった」という嘉納先生の言葉はまぁ間違いなく言い訳だと思うけど、まーちゃんがそういう「本音」を明かしやすい人間だというのはあるんだろうなと思う。まーちゃんが良くも悪くもあけっぴろげで正直かつ他人に対してたいした興味がない(ように見える)というのは秘密を明かす相手が多い理由の一つなのかもしれない。まーちゃんが面白いのは、まーちゃんがスクープを期待して下心丸出しでバー「ローズ」に入り浸ったりするとことか超俗人なのに、妙に肝心なところで功名心が引っ込む(からこそ偉い人に可愛がられる)ところだよな。これも多分フラだね、フラ。