逃げ恥2021新春スペシャルに心底ガッカリした

大好きだった連ドラが久々にスペシャルドラマで帰ってきたと思ったら、めっちゃ説教ドラマになっていて私は…私は…!!

最近自分のセンサーの感度が上がっているのか、スペシャルになると知った時は「おっ!」と一瞬ウキウキしたけど、連ドラも前半のモダモダが好きで最後2話くらいは私の中では蛇足だと思っている派として、内容が妊娠・出産編だと知ってそっと着席して「懐かしいなぁ」くらいの距離感で楽しみにしていた。決して期待値爆上げしてたが故のガッカリとかじゃない。もともとそんなに期待してはいなくて、でも脚本の野木さんには絶大な信頼を寄せていたのでそこそこ楽しい2時間になるんじゃないかと思っていた。それなのに…あれはいったい…何だったの…?

めっちゃつまらなかったんですけど??ムズキュンどころじゃなく、最初から最後までどこを楽しめばいいのかわからなくてびっくりしてる間に終わったんですけど!?!?これ、本当に野木さんの脚本なんです!?!?!?

いやちょっと、本当に野木さんに何があったの?何か心境の変化が?あるいは壮大な実験か何か??社会問題を結構えげつなくぶっこんでくるのは想定内なんだけど、こんなあからさまな学芸会レベルで説教ぶちかますような脚本書く人じゃないはずでは??どうしちゃったの!?!?と混乱から抜け出せない。

説教してる内容については、別に異論は一切ないんだよな。今の社会は男女不均衡だと思うし、社会が女性を抑圧しているのも確かだと思うし、私自身が不当に扱われていると感じる時は声をあげたいし実際に身近で手の届く範囲ではあげているし。選択的夫婦別姓は賛成だし、産休育休が被らないように調整しないといけない空気は理不尽だし、親になる時に男親がサポート気分なのはおかしいというのもその通りだと思うし、性別問わず育休を取れる体制を整えるのがプロジェクトリーダーだというのもごもっともだと思う。経験がないから共感はないけど、妊娠時の体と心のしんどさままならなさで不安定になるのも当然でそこには適切なケアがあって欲しいし、無痛分娩も希望者にはどんどん取り入れられていったらいいと思うし、便利用品で楽が出来るならバンバン採用して苦痛を少しでも軽減して欲しい。すべてその通りだと思う。みくりと平匡はめちゃめちゃ教科書的な理想の夫婦道をひた走っている。主張にはまったく異議はない。んだけど。だけども!!

主張に異議は無くても、こんな風に「正しい世界プレゼンテーション」されちゃうとドン引きするというのは新しい発見だった。これから自分が正しいと思うことをプレゼンする時はマジで気を付けよう。そういう意味では勉強になった。別にこんなところで勉強したくなかったけども。しかし、何よりこれを野木さんが書いたというのがめちゃめちゃ衝撃。どういう意図でこんな脚本書いたんだろう…マジで謎。

なんつーか、宗教勧誘PVを見ているような気持ち悪さがあったんだよな。これぞプロパガンダって感じ。気持ち悪いというか、座りが悪い?居心地が悪い?「ぼくのかんがえたさいきょうの~」を語られているかのような共感性羞恥かなぁ…とにかくキモい。理想とする価値観そのものは共感できるはずなのに、このPVの世界には嘘くささ、うすら寒さ、薄っぺらさを感じてしまう。そう感じさせることが目的なんだろうか。こんな理想のはずの社会を薄っぺらく感じるってことこそが問題提起になってるんだろうか。いやでも、やっぱり私はこんな教科書みたいな社会は嫌だ…

ドラマで描こうとしてる理想の価値感以外のものを巧妙に排除している(しようとしている)世界だから…かなぁ?排他的なのにそれを隠して取り繕っているように見えるからかも。多様性から出てきている発想のはずなのに、好ましい多様性だけ残してそれ以外を排除したい願望が透けて見える(と感じてしまう)あたりが、私にとっては「キモイ」ってことのような気がしてきた。

野木さんのドラマに圧倒的な信頼感があったのは、野木さんの価値観(だと私が勝手に感じているもの)に共感するというのが一番大きかったのかもしれないけど、これまでは「そうじゃない価値観の世界の中で、もがいてあがいて最終的に自分なりの正しい価値観をつかみ取る」みたいな印象が強くて、その「もがいてあがく」部分が人間ドラマの面白さだと思うし、ままならない中で自分なりの正しさを選び取るからこそ気分が高揚して楽しい、みたいな部分があったんだろう。でも今回の逃げ恥スペシャルは全然違った。みくりと平匡にとって「生きていく中で性別が変わるかもしれないから、どちらでも違和感のない名前」を選ぶのはごく当たり前の価値観らしく、二人がそう考えるに至る過程は全く語られなかった。いや、その理屈も合理性もわからないわけではないのだけども。それが正しいから当然として描かれる世界はなんかとっても薄っぺらかった。なんでこんな薄っぺらさで良いと思ったのか。これのどこが面白いと思って作ったのか。マジで知りたい。本当に不思議。どうしてこういう作品が出来たのか、誰かに解説してもらいたい。

結局のところ、Not for meだったということなんだろう。それはそれでいい。私が楽しめなかったのは私が製作者が狙った層ではなかったからで、そこに文句を言いたいとかではない。でも、あんなに信頼していた野木さんの次のドラマが怖くなってしまったのは確かだ。この路線でアンナチュラルの続編出されたら私は泣く…今回のガッカリとか比じゃなく、膝をついて泣き叫んでしまう…やめて…頼むからやめて…