西郷どん 第46回「西南戦争」

西郷隆盛の大河で西南戦争がたった1話で終わるとか(これまでの時間配分からわかってたことではあるけど)まさかと思うよな~。まさしくダイジェスト風西南戦争という感じ。先週のBSの英雄たちの選択スペシャルの2時間特番の方が内容詳しかったもんな~。そこが描きたいわけじゃないと言われたら黙るしかないけど、せっかく西郷隆盛を描きながら西南戦争をダイジェストにするとか(わかってたけど)実際に見るとやっぱりがっかり感がハンパない。

正直、西郷がどうして大久保との実戦を決意したのか、私には全然わからなかったんだけどそれは作り手的にはどうだったんだろう。一年間、これまで45回かけて西郷隆盛という人物を見てきながら、なぜ一蓮托生だった親友と袂を分かつことになったのか、なぜ一番救いのない内戦という結末に行き着かなければならなかったのか、本当にちっとも理解出来なかったし、当然その悲劇性すら実感できなかった。

西郷は本当に大久保に「自分を殺そうとしたのか」って聞くために東京に行こうとしたという解釈なんだろうか。そんなマヌケな理由で西南戦争が始まってしまったとして(それ自体はドラマとしても結構面白い解釈だとは思う)その後半年以上闘い続ける理由が全然ドラマ内から読み取れず(武士の意地とか執念とかそういうのもほとんど感じなかった)、ただただ西郷が負けを認める時機を逸し続けたようにしか見えないのは、西郷ドラマ的にどうなんだろう…?いやそもそも半年以上闘ってたように見えなかったし。あまり知識無くぼんやり見てて、西南戦争って二週間くらいで終わったんだっけ?という疑問を持ち、まさかそんなと思ってウィキペディア読んだら2月から9月までやってたらしいじゃないですか…そんな長く闘ってるようには見えなかったぞ…。

大久保の内面も全然想像出来ない。本心では戦いたくないというのは、先週あたりに「立たないでくれ」って祈ってたことから確かだと思うんだけど、その割に西郷を信用してはおらず密偵とか送り込むわ士族への弾圧を繰り返すわ、言動がちぐはぐに見える。事実としてそうなんだから仕方ないという事情もわかんないわけじゃないけど、そこを創作で「事実こうだったかもしれない!」と思わせるのが作り手側の力量ってやつじゃないのか。わからないものをわからないまま出されても、生煮えの料理を出されたような困惑しかない。

好意的に見れば西郷にも大久保にもお互い以外の生活があって、どうしようもない流れに流されるまま不本意に戦に突入せざるを得なかったみたいに感じさせたいのかなって思わなくもなかったけど、でもそれは思いっきり好意的に見ての話だし、そう思わせたいのかなって感じただけで、そう思えたわけではないからな~。これまで見てきた限りでは二人(というか主に大久保)が個人の喧嘩の延長で政治をやってるという印象しかない。ここまで薩摩にも新政府にも心情的に寄り添えない状態で西南戦争が始まりましたと言われても、戦争の悲哀すら感じられず、歴史番組の映像資料にしか見えなくてツラい…。

そして最後にぶっ込んできた糸どんの戦地訪問!そこからの「旦那さぁが西郷隆盛じゃなければ良かった」発言!多分ここが描きたかった(というかこうとしか描けなかった)んだろうなぁと感じさせるなかなか趣深い(揶揄)シーンだったと思う。私の邪推では、西南戦争はただ闘ってるシーンだけだとつまらないしそもそも興味無い→糸と隆盛の夫婦愛を入れたら締まる→糸に戦地に出向いてもらわなければならない→菊次郎が負傷した事実があるので心配で出向いたことにしよう、みたいな脈略でこの場面が作られたことになってるんだけど、夫婦愛シーンのダシにされてる菊次郎(邪推)哀れすぎない?

ほんのちょっとでも糸どんに共感出来たらもう少し感動を味わえたのかもしれないけど、正直糸どんが見ている西郷像と私が見ている西郷像って多分かけ離れているんだろうなぁって思ってしまい、糸どんが遠く見える…なんかこうメロドラマに浸ってるヒロインを見ているかのようなこそばゆい感情がふつふつと…。黒木華さんの演技の妙だけはじっくり堪能できたのが不幸中の幸いか。あと多分この「西郷隆盛じゃなければ良かった」が第一回の銅像を見ての糸どんの「こんな人じゃない」発言に繋がるんだろうと予測。

西南戦争で隆盛の末弟がいきなり登場していきなり退場してびっくりした。以前から出てきてたっけこの末弟。そして実家で姉が訃報を偲ぶまでの流れが思いっきりテンプレをなぞっただけに見えたのが悲しかった。なんて言うか、歴史資料との兼ね合い?それを盛り込んだことによる義務的な追悼シーン?みたいな…こういうの義務感でやられると結構見ててしんどいということがわかった。

今回一番作り手の熱を感じたのは、久光が新政府の使者(名のある人?)に対して「シサツとは視察?それとも刺殺?」って聞いたシーンだったかなぁ。西郷に肩入れしてるわけではないんだけど、それ以上に新政府が気にくわないからイヤミを言う久光のキャラが輝いていた。それにしても一年通して久光ほど成長して成熟したキャラっていなかったような。しみじみとこの青木崇高さんの久光を見られただけで、西郷どんには意味があったんだよなぁって思い返している。

次回は最終回。もう今からかなりどうでも良くて気楽に見られるのは確定しているので、ふんわりと一年を振り返りながらサラッと流したい。来年のいだてんの予告もあるだろうし、そこはめちゃめちゃ楽しみ。