西郷どん 第45回「西郷立つ」

わかってたけど、結局ふんわりとした理由で西郷が立った。わかってたけど。

ボウズシサツについては最初よく意味がわからなくて、見終わって身内と感想をツイッターでやり取りしてる最中に「もしかしてシサツって刺殺と視察の同音異義語で勘違いってこと!?!?」って突然思いついて脱力した。聞いたら結構有名な巷説(?)だそうで…そうだったんだ…刺殺と視察…いろんな意味でくだらなすぎる…。あとボウズが西郷のことっていうのはどこかで説明されてたっけか。文脈的に西郷のことっぽいとは思ったけど、明確にそう判断できる根拠がなくて混乱した。どこか見落としてるんだろうか。

ここまでずっと新政府のやり方に従う方針だった西郷が立つ理由が「信じてた大久保が自分を暗殺しようとした疑惑」だった(少なくとも私はそう読み取った)の、安定の個人感情拗らせドラマだなぁという印象。ここまで個人の喧嘩・認識のすれ違いが歴史を動かしてきた解釈が続いたらさすがに驚かないけど、逆にそればっかりで飽きてきたとも言える。これまで散々勘違いで痛い目見てきた(あるいは見せて来た)西郷が、己のこれまでの積み上げた経験を何一つ反省したり改善したりしてこなかった証でもあって、なんかこう…最後までそれかよ感ハンパない。

いきなり庄内藩の人が出てきてポカーンだったけど、紀行見たら「なぜこのエピソード本編でやらなかったんだ」案件だった。戊申戦争時に無視して進むことに決めたのにあえてこのタイミングで触れてきたの謎すぎる。こういうトリビアっぽい小ネタを盛り込むことを否定はしないけど、取り込み方や時期によってむしろ「頑張って取り込んでるドヤ感」が出てしまい、途端にショボさに変わってしまう気がするので取扱には注意した方が良いような。

今回やたら息子と風呂に入ってるシーン多かったけど、なんか意味あったんだろうか。これもかなり謎演出だったな…西郷が風呂好きとかの俗説とかあったりするんだろうか。風呂場に突然「私学校の士族が政府にたてついた」って報告が来て、裸で「しまった…!」する西郷とかシュールすぎて笑えない。そこまで深刻な状況でのんきに風呂入ってるってイメージ操作をする演出の意義とは…?サービスシーンのつもりなんだろうか…?謎。本当にいろいろ謎。

愛加那の娘がまさしく二階堂ふみさんの娘っぽい表情してて、キャスティングの妙を味わうなど。でも史実準拠なんだろうから仕方ないんだけど、島の娘が島から出ちゃいけないみたいな掟があるわけじゃ無かったんだな~ってモヤモヤした。「真実の愛」とか言いながら愛加那を本土に連れてこない理由がよくわかんないな~とは思ってたけど、結局のところ本土に連れてきて本妻にするほどの愛ではなかったってことかよ…とあえて穿った見方をして毒づいてみる。愛加那が島を愛しているのはわかるし、好意的に見れば愛加那自身が島から離れたくないと思っているのだろうとは思うけど、であればその部分を強調するエピソード欲しかった。

糸どんが西郷に「新しい国を見せてもらってない」と言ったのもモヤる。薩摩藩がなくなって鹿児島県になって、藩政が終わって中央政権が始まって、これだけ士族の不平不満がたまっている状態を見た上で「新しい国」になっていないと言われると…。いや、わかるよ。西郷が思い描いていた「理想的な新しい国」ではないって言いたいのはわかる。ただドラマ内で西郷は本当に心底一人で新政府内で頑張ってたし、心底頑張った上で無理だって思い知らされたから下野したわけで、そういうのを見てきてる視聴者に「あなたの考えた理想の国を実現させるために行くんですよね?」って正論で責めるの残酷すぎない?って気持ちになってしまった。この場で糸どんにそれを言わせる必要ってあったんだろうか?そもそも菊次郎に対しては「愛加那さんから預かっている大事な命なのだから行っちゃダメ」って言ってるのに、西郷に対しては「あなたの理想の国ために行くんですか?」って聞いてるし、糸どんの言動が一貫性無いように感じられて残念。

なんか、毎回同じようなグチばっかり書いてて自分でもゲンナリするんだけど、この脚本はそれぞれのシーンを綺麗にまとめるためにそのキャラが本質的にどういうキャラなのかがあまり一貫してないように見えるのが本当に残念。ゲンナリしつつもグチってしまう程に本当に残念。作者がこの登場人物はこういう人物像だと捕らえていて、だからこそここでこのセリフを言わせたんだ、みたいな一貫性を演技や演出から読み解くのが私にとっての大河(に限らないけど)ドラマの醍醐味なんだけど、西郷どんはその場の盛り上がりや場当たり的なまとまりの良さのための決めゼリフみたいなのが先に決まってて、それをその場にいるキャラに適当に言わせてる感があって、出来レースを見せられてるみたいなシラけてしまう感覚がずっとある。そういう部分が合わないんだろうなぁと思う。

今回ネタとして面白かったのが海江田の(だよな?いまだに誰が誰やら…)国父様のモノマネが上手すぎる件。メタネタとしてはかなり秀逸だったけど、海江田がそういう(国父様のモノマネをするような)キャラなのかって観点から見ると謎演出でもあった。そもそも海江田という人がどういう人なのかドラマから全然読み取れないし。そういうとこがホントがっかりなんだよな…(結局グチになる)。