西郷どん 第24回「地の果てにて」

久光の京での朝廷工作(というか結果的にはただの薩摩内の同士討ちなんだけど…)のおかげで、久光は朝廷の覚えもめでたく、その勢いで江戸へ進出(?)し、その久光の幕政改革でもって松平春嶽一橋慶喜の幕政復帰が叶う。でも復帰にありがたがることもなく、久光を思いっきりイモ扱いして頭からバカにしてるひー様に苦笑。確かにこれまでもそういうキャラとして描かれてたわな。そして慶喜に罵倒されて滑稽なまでに悔しがる久光もまたダメっぷりが突き抜けていて良かった。唯一ガッカリだったのが慶喜のキャラに合わない西郷ヨイショのセリフ。「俺と腹を割って話がしたいなら西郷を連れてこい」とか(まぁ慶喜は相手が一番嫌がりそうなことを察知して口にする能力ありそうなのでそういう意味では)言いそうではあるけど、こんなにあからさまにわかりやすく西郷上げを入れられるとシラける…。

一方、その頃西郷は流された先の島の徳之島で、押しかけ女房の愛加那とラブラブ楽しい日々を過ごしていましたとさ。先週の寺田屋での悲劇をまっっったく引きずらない作劇に逆に感心する。悲惨な出来事があったら常に眉間にしわ寄せてるべしって思ってるわけではもちろんないけど、ドラマは構成から全て計算して作れるわけで、せめて吉之助が寺田屋騒動でどのような傷を受けたのか、そこから何を学びどのように乗りこえたのかを見せることで、悲劇を「消化」出来ると思うんだけど、今のままだと「郷中仲間同士で斬り合いになってしまってやりきれない、仲間同士で殺し合うなんてあまりにツラい」という当たり前のことを当たり前に嘆いて、結局それだけだったようにしか見えなくて物足りない。

久光がひー様にコケにされた腹いせに(?)沖永良部島へと更なる島流しとなった吉之助。海辺の隔離牢屋がどれだけ史実に基づいているのか知らないけど、牢屋と言うより見世物小屋っぽい感じがしたので、そういう性質の罰だったのかもしれない。ここでは食事も粗末で命の危険にさらされるわけだけど、むしろこれまで奄美大島では現地妻まで娶って超リア充、徳之島でも妻を呼び寄せて家族団らんと、あまり罪人扱いされていない印象が強い後での沖永良部島での仕打ちは結構エグい。そしてエグい状況になった途端、吉之助は走れメロスセリヌンティウスばりに「友(=一蔵)が薩摩に戻してくれることを信じる…!」と友情に目覚めるのであった…。見方が捻くれている自覚はあるけど、この部分それにしたってもうちょっと描き方があっただろって思ってしまう。これまで一蔵から吉之助に対しては執着している描写が多い割に、吉之助はそれほど一蔵に対して思い入れがないように見えていたので、辛い状況になったからっていきなり「信じる」と力強く言われても…都合のいいときばっかり(精神的に)頼るんだね…みたいな気持ちに。一蔵目線から見れば、ようやく一途な気持ちが通じた瞬間なのだろうか。

ダメ押しのように薩摩の仲間達も島の謎の老人(誰?)も「一蔵は吉之助を見捨てたのだ」といきなり二人の仲を裂くようなことを言い出す。なんだこの超展開。これまでも一蔵の真意が他の仲間に伝わらないシーンは何度もあって、一蔵自身もそのことに苦悩する姿も描かれていたので、多分一蔵は去年で言う但馬的な不憫枠なんだと思うけど、であるならばせめて一蔵が目指す未来をもう少し見せてくれてもいいような。吉之助と久光の仲が悪い状態で、一蔵がどういう未来を見ているのかわからないので、応援しようがないというか。この不穏な展開は、未来の二人を暗示した仲違いの種なのか、それとも未来と対比させるための真の友情表現なのかわからない。一蔵の真意を読み取れない=吉之助の一蔵を信じるという言葉の根拠が全くわからない=言葉が上辺だけに聞こえるという悪循環。なんだかなぁ。

意地を張ってるようにしか見えないハンスト(というか藩命以外の食事自粛?)で勝手に衰弱していく吉之助。極限まで弱ったところで突然現われる謎の老人。「そこまでなりつつ友を信じるのか…」と勝手に心打たれ、牢を破って死にかけの吉之助に口移しで水だけ飲ませて後は放置。結局意識のない吉之助を介抱してくれたのは薩摩渡航経験のある島民の…土持さん?であったと。この突然の口移しには(話題作り以外の)何の意味があったのか…。なんかもう、何もかもどうでもいいかなって。

この大河は「誰からも愛されまくる西郷を描く」とかだったと思うけど、見ていてなんとなく思ったのは、実際にあらゆる人物から愛されて矢印向けられまくっている場面をいくら見せられてもちっとも「愛され西郷」を受け入れることは出来ず、かえって理由もわからないのにやたら持ち上げられる不可思議さが制作者の押しつけに感じられて、愛され(ているはずの)西郷に反発を覚えてしまいかねないんだな、ということ。愛されている主人公を描くなら、視聴者自身が主人公を愛せるエピソードを重ねてもらいたかったなぁ。