西郷どん 第23回「寺田屋騒動」

北村有起哉回。これまで役者が北村有起哉というだけで識別していた薩摩藩士の名前が、ようやく大山格之助という人物だと把握する。いや、これまでも一応大山某と言うらしいというのはぼんやりわかっていたけども。有馬さぁや村田新八と合わせてここ数回でようやく郷中仲間それぞれの特徴が出てきて、見分けが出来るようになった感じ。有馬さぁがただの粗暴な藩士じゃないってことがちゃんとわかって良かった良かった…。でもこれ、どうして最初の頃にやらなかったんだろう?ここ数回でキャラを立ててきてるので、脚本家の実力的に出来なかったわけじゃないと思うんだけどなぁ。あえてこういう構成を狙っているのか、元々こういう作風なのか。直近の数回で話をこまめに完結させるというのも連ドラの技法として優れていると思うんだけど、それをあえて大河でやらなくても…他では絶対できないせっかくの一年間の大枠なのに…と思ってしまうな~。まぁ、これも大河の多様性の一つだと納得するしかないのかな。

先週命がけで吉之助が止めた藩士の暴発だけど、今週は寺田屋でやはり暴発してしまうわけで、そこをどうやって説明するのかと思っていたけど、危惧していたほど唐突な流れではなかった。無位無冠の久光が天皇から詔を賜ったことで肥大化した国父としてのプライドと、その久光をどうしても受け入れられない藩士たちの不満が、どうしようもなくすれ違ってしまった結果という説明は納得しやすかった。天主様の言葉に舞い上がっちゃう久光と、それを上手く舵取りしようとする家臣のバランスが見ていて面白い。ホント、久光の屈折したキャラが味わい深い。

久光と言えば、吉之助に関する報告を受けて「切腹」って言い放ったの最高だった。多分物語の中では偉大なる兄へのコンプレックスから自己肯定感を拗らせている暗愚な国父様なんだと思うけど、それにしては久光はチャーミング過ぎる。脚本家も絶対青木さんの久光の魅力がわかって書いてるっぽい気がする。脚本だけ読んだら暗愚な国父に見えてしまうけど、実際に青木さんの演技を加えるとそのダメさが魅力になる感じがわかってると言うか…実際に演技で応える青木崇高さんが素晴らしいのはもちろんだけど、あまり好きではないこの脚本も、久光の描き方という一点だけはめちゃめちゃ評価してる。ブラボー。

惜しむらくは大久保の描き方なんだよなぁ。根本となる「西郷どんラブ」に共感できないのが致命的だけど、それ以外でも、吉之助を慕いつつも久光の重臣として藩政に参加するその内面をもうちょっと掘り下げてくれてもいいのになぁと思う。今の描かれ方だと吉之助のためだけに仕方なく久光に従っているように(私には)見えてしまうんだけど、実際には大久保自らの野望や理想があったはずだし、そのためにあえて久光のやり方を受け入れる程度の強さがもう少し強調されてもいいと思うんだけどなぁ。

小松帯刀が今回初めてちゃんとしたセリフをしゃべった!篤姫での瑛太小松帯刀が印象深いので、画面にイケメン小松帯刀@町田啓太と一蔵@瑛太が一緒に映ってると混乱する。今回斉彬が昔「西郷は物差しだ」と言ったと久光を丸めこんでて、私は素直に(?)これは小松帯刀のハッタリだと受け取ったんだけど(もう一人の重臣や大久保も慌てて口裏を合わせたのかと思ってた)ツイッター見てたらあれはハッタリじゃなくて味噌汁案件(※)だったのか?と心配になる。

※味噌汁案件:軍師官兵衛の「幻の味噌汁」として話題になった案件。

今回だけでムリヤリねじ込まれた感のある郷中仲間の結束描写ではあったけど、腹が減ってウナギを捕った幼なじみ達が、立場が違ってしまい仲間同士で斬り合う結果となってしまう悲劇性は、役者の熱演もあって迫力あったと思う。特に有馬さぁの血を拭った懐紙を一蔵の懐にねじ込む大山の鬼気迫る表情が良かった。