西郷どん 第10回「篤姫はどこへ」

多分、作中の篤姫の失踪(というほど大げさでもなかったけど)と、将軍に嫁ぐ将来への漠然とした不安と、二つの意味をかけての今回のサブタイだと思うんだけど、正直「どこへ向かうのか不安なのはドラマの方だよ」とベタなツッコミを入れたくなる回だったような…いや、普通に見てて面白かったけど。ツッコミどころが絶えないので、そういう意味で楽しくはある。通常の痛快娯楽時代劇にテレビのこっちからヤジを飛ばすような気持ちで見ていられるというか…そういうのを目指してるのか?そうなら狙い通りでめでたしめでたしだけど…そうか、この路線か…

斉彬に「ヒー様を探れ」って言われて、品川宿に乗り込んで「ヒー様はいるか?」と店に直接聞いて座敷に乗り込んじゃう吉之助。正面から「あなたは一橋慶喜公では?」と聞いちゃう吉之助。びっくりすると必要以上に大声で秘密を復唱しちゃう吉之助。知ってるか?コイツ、これでも隠密なんだぜ…ほんと、今回一番びっくりしたのは、吉之助が取り立てられた「お庭方」が本当に隠密だったことだよ…いや、吉之助の忠義は確かに間違いないと思うよ? でも隠密にするにはあまりにもなんていうかこう…知性が足りないというか…いや、思慮?分別?足りなすぎない?? 愛すべき男であることは否定しないけど、決定的に隠密には向いていないような…このミスマッチ、何が一番ツラいかというと「吉之助を見いだして隠密として使おうとする斉彬」というのが最高に意味不明に見えてしまうところなんだよな…篤姫の護衛の方は間違いなく適任だと思うんだけど。

将軍になるだのならないだの、こんなとこでそんなデカい声でしゃべってていいの?な話題を遊郭でフランクにしてる最中に「お医者様はいらっしゃいませんか~?」とバタバタと店の中で女郎?が走り回るのを見て「フライト中の急病人かよw」と思わずツッコんでしまったw ウケるwww そしてどう見てもアヤシい優男(風間俊介)が瀉血してその場を救ったっぽく見せてるけど、のぼせた人に瀉血って効果あるんだろか? それ以上におタマさんさっき胸が重いとか言ってたような気がするけど、そっちは大丈夫なんだろか? 以前「仁」を見ていた身としては、微妙にヤブっぽいという印象を持ってしまったのだがそれでいいのか。

そしてこういうところにまで身分がわかっちゃう短刀持って来ちゃう吉之助~!いや、わかるよ。吉之助ならそうすると思うよ。肌身離さず持ち歩いて、時々手に取っては斉彬への忠誠を誓って涙浮かべてる姿とか容易に想像出来ちゃうよ。キャラ立てとしてバッチリだよ。だからこそ、そういう男を隠密に任じちゃう斉彬の人事差配への不信感たるや…お前は本当に名君なのか。

そして風間俊介さんは橋本左内として吉之助のところに来るわけだけど…当時こんなに他藩の人間を易々と寝所まで入れてくれたものなのだろうか…大丈夫?ここ、薩摩藩邸だよ?時代考証的に合ってる? そしてここでも秘密を大声で復唱せずにはいられない吉之助…相変わらずブレない男だな…最初は吉之助を自分と同じ立場の隠密だと思って親しげに情報をくれる左内だけど、あまりに知識のない吉之助に不審感あらわになっていく描写がめっちゃリアルで笑ったw これ、吉之助のダメさを描いてるというよりは、そういう吉之助を見抜けなかった左内のダメさの方がジワジワくるな。今後も注目したい男、橋本左内。それにしても、風間俊介さんと鈴木亮平さんが顔を突き合わせるシーン、顔の大きさが違ったなぁ…小顔過ぎるだろ風間俊介

今回もう一つの話の柱が篤姫で、前半の失踪事件は正直「このエピソード必要か?」って思ってしまうほど発端と結末が合ってなかった気が。庶民と着物を交換して姿を眩ませるってものすごい暴挙だと思うんだけど、その割に海岸で叫んで覚悟完了っていうのがあまりにもあっさりしすぎというか…着物の交換をさせたのも、吉之助が手がかりを得るための小道具が必要なだけだったのではないか疑惑。あと正直篤姫にはもっと鉄の意志を見せて欲しかったというか、実の父が死んだことをもっと一人でグッと堪えて堪えて、その堪えている心を吉之助が日常の中で解きほぐすとかの方がお互いの見せ場になって良かったんじゃなかろうかと。余計な世話か。しかし、もう一度会いたかったというのは、江戸に来るというのに覚悟なさ過ぎでは?せめて薩摩出る時にそれくらい覚悟して来よう?って思わせちゃうのは悪手だったと思う。

南野陽子さんの幾島、存在感がめちゃめちゃカジュアル! この軽さ、これはこれで嫌いじゃないけど当初の予定通り斉藤由貴さんだったらどうだったかなぁ?というのは正直ちょっと思ってしまったな。篤姫を立派な御台所にすべく特訓する日々、という描写は面白かった。特に無意識に同じ動作をしちゃう吉之助w 何故お前はこんなに無駄に愛嬌ばっかりステータスが振り切れているのかw 今作のヒロインはもう吉之助でいいや。部屋に貼られてる薩摩訛りの正誤表とか(正直ちょっとあざといとは思うけど)制作陣の遊び心だと思えば微笑ましく思える…かもしれない。

最後に「篤は不幸になる」と深刻な顔で言い切る斉彬で不穏を撒いて終了、なんだけど。ここ、渡辺謙がそれらしいオーラで押し切ろうとしているけど、やっぱりそろそろ厳しいのでは…? この斉彬は「一見人当たりがよく優しそうに見えるが情に絆されない厳しい名君」として受け取られることを想定して描かれているように思うのだけど、それにしてはあまりにも「厳しい名君」としての描写が足りなすぎるような。いや、もしかして「情に篤く理想が高く苦労ばっかり背負い込むが周りに人が集まる名君」を想定してるのか? 今回はその中で苦渋の決断で篤姫を犠牲にするという描写だった可能性もあるのか!? わからん…こういうところがブレブレだよなぁと思っちゃう部分なんだよな。こんなにバッチリカッコよく描かれている斉彬なのに、ここまで見ていてもその本心がサッパリわからない。このあたりも、痛快娯楽時代劇っぽい(=カッコよく決めゼリフを決めてくれることが最重要)と感じてしまう原因なのかも。それはそれでアリなんだろうけども。

面白く見てるけど何か物足りない、というのが今の正直な感想かなぁ。でも見ていて不愉快ではないので、気楽に見られてこれはこれでまぁ、という気もする。ツッコミ入れながら見るのは楽しいし、今年はこの感じで見続けることが出来るかも。