西郷どん 第43回「さらば、東京」

大久保~~~~~~~!!おまえ…おまえってやつは…!!今回もいろいろと言いたいことはあるんだけど、瑛太さんの大久保利通が演技的に素晴らしかったのでもうこれはこれでいいやと思った。圧倒的な演技で全部ねじ伏せられた。最近そんな感想ばっかりだな。

大久保と西郷の決別は、政治的な方向性の違いでもなければ西郷が全てを悟って捨て石となることを決意するのでもなく、なんとただの痴話喧嘩でしたって作劇に仰け反った。そういえばこのドラマ、鳥羽伏見も西郷と慶喜のただの喧嘩って描き方だった。そっか…そういう解釈なのか…いやまぁ、一貫しているといえば確かに一貫しているけども。

愛憎とは良く言ったもので、愛情が深ければ深いほど、裏切られたと思った時に反動で憎さは増すわけで。これまで大久保の執着の唯一の対象だった吉之助さぁが自分を選んでくれないとわかった瞬間から、大久保は完全に闇落ちして西郷排斥に動き出しちゃうわけで。そのあまりに極端な動きは政治家・大久保利通としてはどうなんだろう?と思いつつも、ドラマの作劇としてはかなり面白かった。まぁもともと政治的な部分を極端に排除したドラマだから仕方ない。

今回もうこの演技だけで勝ちでしょ、って思ったのが、「一蔵どんは自分を切り捨てたかったのか」と西郷に問われたときの「ん?うぅむ」みたいな相槌ね。あの、ギリギリの虚勢だけで取り繕ってる感じ、あれ最高に良かった。自分の味方ではなくなったと悟った瞬間から、西郷は大久保にとって「憎しみでもいいから自分に一番強い感情を向けて欲しい」相手になって、だからこそ一番西郷が最も嫌がる方法で排除しようとしたんだろうな。でもそれすらも西郷は全て飲み込んで「一蔵どんを嫌いになれるわけがなか」って許してしまう。その時の大久保の表情がまた良かった~。あの「あ、間違えた」って表情が素晴らしかった。

ただ、西郷が「これまでずっと二人一緒にやってきた」としみじみ言うセリフに視聴者として全く共感できなかったのはやっぱり残念な点かな。大久保がコンプレックスを感じるほどに西郷に固執していることは十分描かれて来たと思うけど、西郷が大久保に対してどれくらい心を許しているのかはわかりにくかったと思う。これは多分、西郷を「万人に対する聖人君子」みたいな描き方をしてきているせいだと思うんだけど、でもまぁ西郷って実際にそうだったのかもしれないし、このあたりは描き方も難しいよなぁ。

あと、大久保って(月照さんの時も思ったけど)西郷のことを肝心の時に読み違えるっていうか、そもそもお前は西郷のことをちゃんとわかってないんじゃないか?みたいな気にさせられたのも残念だった。固執しすぎて盲目的になってしまうことももちろんあるだろうけど、大久保に至っては一度でもちゃんと理解出来ていたシーンあったか!?と思ってしまうのが悲しい。もっと普段はガッチリはまっている二人という基盤がまずあって、その上でボタンのかけ違いでその基盤が崩れるという作劇の方が劇的だったと思うんだけどな。このドラマ内でガッチリはまっている二人を描いているつもりだと言われたら黙るしかない…。

今回熊吉も余韻があって良かった。長屋?で女性と仲良さそうにしていて、ついに熊吉にも春が!?でも西郷は政府辞めちゃったけど!?と思っていたら、薩摩に帰る時に少し寂しそうに未練を振り切っている演技がすごく印象的だった。あの、何かあったんだろうなぁ(でも具体的には描写しない)っていう演出がとても良かった。やっぱり部分部分はかなり好きなシーンも多い。

結構笑ったのが、西郷がおゆうさんに「一蔵どんが全国に鉄道を通したら鹿児島は近くなるから、皆で遊びに来い」って言ったこと。大久保の正妻のいる鹿児島に、妾に遊びに来いっていう西郷、かなりフリーダムw そんなに修羅場が見たいのか。私は見たい。

鶴瓶師匠の岩倉はもういろいろ諦めた。これはあれだよ。清盛での松田聖子枠だと思えばいいんだよ。大阪弁妖精さんだと思ってやり過ごす。それとは別に、明治編に入ってからの岩倉の老けメイクが精巧で毎回見事だなぁって思っている。そういう部分に手を抜かないスタッフの本気度は賞賛したい。

三条殿が伏せってしまい、西郷に「留守政府はよかった」と述懐するシーンはいただけなかった。ドラマ内でも山縣有朋の不正とか国政の停滞とか問題山積みでしたやん?西郷の韓国派遣にも結局回答出さなかったですやん?自分に都合のいい過去だけ美化している表現だとしても、この場面で三条にそういう言動をさせる意図が良くわからないし、ここは無くても良かったなぁ…まぁ、些細な部分だけど。

それにしても西南戦争ちゃんと終わるんだろうか…?