おんな城主直虎 第13回「城主はつらいよ」

ちゃかした感じのサブタイトルとコメディタッチの作劇でぼやかされてるけど、井伊家の状況が詰みすぎてて真顔になるしかない。オンナには従いたくないと大声で言う家臣。「但馬よりはマシ」という理由のみでしぶしぶ従う家臣。そして、領主としての才覚を全く見せない直虎…前半ツラすぎて直視したくなかったよー。情にほだされて徳政令出しちゃうとことか、すっごい森下さんヒロインそのもので「あちゃー」って感じで見てた。でもまぁ、その後に必ず手痛いしっぺ返しと、自省がありつつも個性を殺さない成長エピソードがあるってわかってるから、我慢して見ていられる。この信頼感が「脚本家でドラマを見る」ってことだよなぁと思ったり。
 
味方が皆無で、母上と南渓和尚(と寺の僧侶)は味方だけどどちらもあまり力を持ってない(あるいは振るいたくない)状態で、家臣は全員直虎を舐めてるし、直虎も現状の難しさをきちんと理解できていない。政次への反発だけでやっていけるほど領地経営は簡単ではないわけで…特に借金が詰みすぎててなー。そして借金の話から井伊がお金を借りてる商人の話へ。ここでいかにもな感じのムロツヨシが再登場!方久のわらしべ長者マンガが展開されるなど、なかなか攻めてる絵作りだったなーと。
 
今回見ていて「あー森下作品だなー」と思ったのは、直虎が領主としては全然ダメな部分をこれでもかってくらい描いてみせて、そこから一気に「ダメなまま」突っ走らせるところだったなー。ごちそうさんのめ以子しかり、天皇の料理人の篤蔵しかり、森下さんの描く主人公は基本的に猪突猛進で痛いキャラのことが多くて、痛いがゆえに周りと摩擦があったり妨害があったりで、見てて自業自得な苦労をたくさんするんだけど、そこからの成長が「ダメな部分を直す」っていう方向じゃなく「ダメだと自覚させ反省させつつダメなまま走る」ってところで、周りが主人公のダメな部分に呆れて受け入れて解決することが多くて、直虎もまさにその流れでめっちゃ面白かった。この流れって一歩間違うと本当にご都合主義で腹立たしいことになりそうなんだけど、不思議と視聴者としても主人公のダメな部分を呆れて受け入れる心持ちになるから不思議なんだよなぁ。多分自覚と反省の描き方が上手いんだと思う。森下マジック。