いだてん 第7回「おかしな二人」

サブタイ見た瞬間、岡嶋二人!!って思ったんだけどもしかして違う?直虎の時、サブタイの元ネタ記事結構見た気がするけど、今年もあるのかな。ネットでの関連記事は、NHK側が発信してる情報が入ってる、ちゃんと番組の宣伝兼ねてるタイプの記事しか見ないようにしてるので、あまり情報が入って来ない。

四三と弥彦の二人を巡る物語の回。弥彦についてはこれまでもジワジワとその背景が描かれてきてたけど、今回答え合わせのようにばしばしピースがはまっていく感じに高揚感があった。弥彦が負けず嫌いなのは予選会の時に示唆されてたけど、嘉納がそれを把握した上で巧みに選手登録にもっていく手腕が見事だった。そしてタバコに火を付けようとして迷ってへし折るシーンで出場の決意を表す場面、初心者にわかりやすい演出でドラマの見方を教えてもらってるようで嬉しくなってしまった。あれってタバコが体に悪いからだよね?こういう演出を含めて見れば、喫煙シーンにも一定の意味はあると思うけどなぁ。

弥彦については、兄に対して劣等感があり、三島という家名に対して誇りもあり、自分の行いがそこから認められていないことを自覚してもいて、内心は母と兄に認められたいとも思いつつ、ヤケになって迷惑をかけるほどの反発心はない、という複雑な性格が良くわかる。基本的に本質は善良なお坊ちゃんなのが伝わってくる。

写真を現像してる場面で、四三の様子を聞きながら「羨ましい」って言ってたの印象的だった。そして現像した写真には、和歌子様のお姿が…!泣ける。そして感傷的なシーンで弥彦の部屋の裸のポートレートがめっちゃ映ってて、これぞクドカン!という感じ。一方三島家からの帰り道、四三は豪邸を見上げて口にすることも出来ない「羨ましい」気持ちに震えるんだよな。「金はあるが出場できない三島、出場は出来るが金がない金栗」という言葉が、その意味以上の重さでのしかかる瞬間。人は持たざるものを羨まずにはいられないのかもしれないなぁ。(わかったような顔で)

嘉納治五郎のヤバさに先週以上に磨きがかかってる。数回前から感じてたんだけど、いだてんでの嘉納先生ってまんま真田丸での昌幸ポジションだよな~。ただ、真田昌幸は完全に本人が自分の山師としての性格を熟知した上で楽しんでたけど、嘉納治五郎はやってることは山師的でも本質的には誠実でありたい人でギャップに苦悩してるイメージ。そのギャップと苦悩がそのまま嘉納治五郎の魅力になってるの、本当にキャラの積み上げとして神がかってる。

今回の勝海舟フロックコートのエピソードとか小憎らしいほどに上手かった。事前に嘉納先生のキレ芸があって「やっぱりヤバいし面倒な人だなぁ」って気持ちが傾きかけたところであのエピソードが入ると「でもいい人なんだよなぁ」って一気に反対側に気持ちが振れるし、でも両面を見ているせいで嘉納のいい人エピソードが美談になりすぎないのがいい。こういう「いい話ほど感動演出を控える」みたいなのは、多分クドカンさんの照れというかこだわりみたいなのが影響してそう。と言う妄想。こういう一歩引いた感じ、三谷幸喜さんと似てる気がする。そしてこの一歩引いてる感こそが脚本家への信頼感になってる気がする。

それにしてもフロックコートのエピソード、良かったなぁ。四三が「渡航費がない」って口にできないままなのに、お金に困っていることを察してからの一連の流れが小気味よいのと、結局「渡航費がない」という問題は煙に巻いたまま人情論で押し切った嘉納のキャラのブレなさに、さすがと言うしかない。

四三のために嫁ぎ先に借金の仲立ちをするスヤちゃん。あれ?スヤちゃんて四三と結婚するんじゃないの!?のちのち戦争で未亡人になるんだろか。あるいは結婚ではなくこれから先ずっと金銭的・精神的な援助する立場なんだろうか。今回あまりNHKのサイトとかも見てないので、これからどうなるのか楽しみが増えた。それにしても綾瀬はるかさん美しいなぁ~。今回結婚が決まったからか、女学生時代より少し艶めかしい髪型と所作になってて素晴らしかった。この時代好意を持っていることと結婚できることは全くイコールではなくて、それが当たり前に描かれていて切なかった。

美川君、兄に対して悪い方向の印象操作してるように見えるけど、美川君にとっては正しいイメージなのかもしれない。四三に対して「騙されてるよ」って諭すシーンも含めて、全面的に心から応援できるほど心が広くもなく、でも応援したい気持ちがあるのも真実で、複雑な心のうちが滲み出てる。いいなぁ、好きだなぁ美川君。

兄上、1800円現金で持ってきたの怖すぎ!そしてそんな大声で言っちゃダメでしょ!!(兄上の豪快さの表現だよね、わかります)

いだてん 第6回「お江戸日本橋」

サブタイ。お江戸日本橋ってそういう文学作品があるの?って疑問だったんだけど、民謡ってことでいいんだろか。文学作品タイトル縛りじゃないんだなぁ、そう言えば第4回の「小便小僧」も違うか…いや、でもこういう題名の作品、ありそうじゃない?とか混乱するなど。あまり深く考えないことにしよう。

予選会で使った足袋に無邪気にダメ出しした四三を「二度と来るな」って追い返した播摩屋さんなのに、ちゃんと改良版作ってくれてるあたり、かなり職人魂が刺激されてるんだろうなぁってほっこりした。

オリンピックの選手選考。前回「記録なんてどうでもいいから生きて帰れ」って語った永井が四三の世界記録にウキウキが隠せない様子なのかわいい。もちろん永井の信条は「心と体を鍛えるための体育」からブレることはないんだろうけど、それはそれとしてやっぱり記録は嬉しいというのもわかる。こういう相反する感情を持つ部分が人間らしさで、そこをこうやって愛嬌として描くところ、まさしくクドカン脚本て感じ。一貫性のなさとか自己矛盾とかをこうやって軽妙に見せて、その軽妙さまで含めて永井というキャラが練り上がっていくんだよな~。本当に面白い。

お金のない加納先生(の率いる大協)の話。加納のキャラがまだ第6回なのにも関わらず、第1回からどんどん人間的にかなり壊れた面が明らかになっていくのが面白すぎる。第1回とか普通に「偉大なスポーツ振興の祖だけどちょっとお茶目」くらいに見てたけど、その後ちょこちょこと「ん?」て思う部分を小出しにされて、今回のエピソードで「お茶目と言えなくもないけどかなりヤバい人」としてトドメを指された感ある。オリンピックに対する固執のし方とそれを実現するための執念が常軌を逸している。しかもそれなのに印象に残るのは「お茶目」な方なんだよなぁ。

中国からの留学生を日本に留めておくために自腹(?)で滞在費負担してあげたりとか、勢いと情熱だけで言っちゃう部分は絶対部下になりたくない(可児さんの顔芸w)典型なんだけど、その情熱こそが生徒や部下がついてくる要因でもあって、正に長所でもあり短所でもあるってやつなんだろうなぁ。そして多分、何か大きなことをしでかす人っていうのは、こういう長所と短所が飛び抜けていて、それ故に翻弄される人生を歩まざるをえないってことなんだろう。そういう「持っている人」のパワーを感じまくって面白かった。でもやっぱり部下にはなりたくないw

ナレで留学生の滞在費の借金を死ぬまで返せなかったって言ってたけど、それはアレか。数回前に言ってた「返す必要のない借金」てやつで踏み倒したんだろうか。それとも本当にずっと返済し続けたんだろうか。お金の件、勢いで言っちゃった後に可児さんと二人で死んでるの笑っちゃうんだけど、笑っちゃうシーンなのに画面から悲壮感とか加納の覚悟とかも伝わってくるんだよなぁ。四三を言いくるめて自費で行かせることにした後自己嫌悪に陥ってたり、笑いで包みつつじわじわと真綿で首を絞められるような緊張感もあったり。この辺も脚本と演技と演出の絶妙なさじ加減があってこその緊張感だと思う。

オリンピック選手に選ばれて感激するかと思えば、「無理です!行きたくありません!」と上ずった声で絶叫する四三の変わらない地頭の良さに唸る。この声の上ずり具合とかから、四三がいかに加納を崇めているかとかがわかるのに、あの瞬間「オリンピックって何?」と言うくらい無知でありながら「切腹ですか!」と本質を理解出来るのって四三の頭の良さゆえだよな。あと、優勝カップを返しに行った際に優しい言葉と情熱的な誘いにうっかり自腹でストックホルムに行くことになった後に、加納に丸めこまれたと理解しながら(だよな?ナレでメタ的に視聴者に寄り添っただけで、四三はだまされたままって解釈じゃないよな?)変に悲壮感を出さずにむしろスッキリとした顔で練習に励む四三というのがまた、常人離れした天才設定を際立たせてるよなぁとも思った。あと、すごいどうでもいいけど、加納先生に抱きしめられるたびに四三が「はぁっ…」恍惚とした声を漏らすの笑う。

森山未來さんのナレーションがすごく上手くて聴き惚れる。孝蔵っぽさをそこまで押し出さず、でも要所要所で孝蔵だって印象づけてくる語り口がとても上手い。一方でビートたけしを前面に押し出してる「噺」の方はちょっと聞き取りづらいかなぁ。まぁ聞き取りづらさも演出のうちなのかもしれないけど。

森山未來さんの孝蔵がどんどん味が出てきてとてもいい。憧れの落語の師匠に弟子入りして浮き足立ってる感がありつつ、その中で本質を掴みかけてる才能が感じられるのが上手いなって。あとあの勢いで走ってる演技と疾走感のあるナレーションが本当に小気味よくてドラマに勢いを付けてる気がする。すごいな~。

志ん生パートに関しては、去年の鶴瓶師匠の岩倉具視や、清盛での松田聖子と同じ括りとして見ている。ただ、ビートたけしさんがビートたけしさんにしか見えず、志ん生師匠という個性を感じることが出来ないのはちょっと寂しいかなぁ。大河の中にこういう「メタ枠」みたいな役はありだと思うので、これからこの枠がどこに着地するのかは興味深く見守りたい。

久々に昭和パートの田畑登場。最近ネットで騒がれてた喫煙シーン、これのことだったんだろうか?まぁ印象的なシーンではある…でも別に受動喫煙を推奨してると受け取る描写じゃないと思うんだけどなぁ。それにしてもこう見ると昭和時代のタバコの煙、本当にシャレにならなかったよな。今の分煙規制とか本当にありがたいし、ある一面では社会が確実に進んでいるのを実感する。

紀行で日本橋の(高速道路地下化の)再開発計画初めて知ったけど、これ実現するのかなぁ?今の圧迫感ある風景が変わるの、ちょっと楽しみかも。

いだてん 第5回「雨ニモマケズ」

追いつくどころかさらなる周回遅れ。でもまぁ自分のペースで見ればいいか…。

初回で嘉納治五郎の物語に見えたオリンピック予選会が、完全に四三側の(というか選手側の)物語として再構築される第5回。やっぱりこのドラマ構成凝ってるよな~。オタク心がくすぐられまくり。こうやってコアファンだけが純粋培養されていくのかもしれない。こういう構成を喜ぶオタクがいる一方、こういうのが楽しくない人にとってはつまらない大河って思われてるのかも。自分自身去年の大河をどっぷり楽しめなかったという経験もあって、とある表現方法を面白くないと感じる人がいることにもヤケにリアリティがあったりする。だからこそ、必要以上の叩き記事とか見たくないし、自分も面白くなかったものを必要以上に貶す感想は書かないようにしたい…と改めて自戒。

一話通してまるっと予選会レースという、結構チャレンジャーな回だった気がする。一話の裏話として、あの時のアレは実はこういう背景で…というのが判明する展開、もうこれだけで好きな設定過ぎてテンション上がりまくり。車に立ちションしてたのが四三というのは予想はついてたけど、こうやって答え合わせされるとやっぱり嬉しい。その上、一話を見ているからこその追加の面白さを足してくるこの感じ、まさにトリッキーな構成好きを狙い撃ってる感ある。好き。

三島家劇場。弥彦の優勝連発をあからさまに無視する兄・弥太郎と母・和歌子に対してプリプリ怒ってみせるシマちゃんがかわいい。弥彦に対して淡い恋心とか感じさせず、完全に女中としてお坊ちゃんに対する態度なのがモロ私好みの設定だった。これがいずれ淡い恋心に変わってもオイシイし、このままお坊ちゃんへの保護欲のままでもオイシイ。「女性のスポーツ」という言葉に目がキラーンしてたので、そっちで活躍する展開があるのかも?三島家、本当にいろいろと今後が楽しみすぎる。

それにしても弥彦のキャラが本当にいいなぁ。スポーツでいくら好成績を出しても、兄も母も見向きもしないどころか不名誉とすら思っていると自覚しつつ、それでもグレるでもヤケになるでもなく「三島家ではそれが当たり前」と(半ば諦めつつ)納得している。でもスポーツに力を入れることはやめないし、むしろ自室には自分の裸の特大ポートレート(…)を飾っちゃう。この抜群の自己肯定感の高さを感じるエピソード、本当に好き。そしてその弥彦が生田斗真さんのあの外見と本当にマッチしてるんだよなぁ。好き。

美川君~~~!!前回もめっちゃ気になる存在だった美川君が今回晴れて私の中の堂々殿堂入りするツボキャラっぷりを見せてくれて大歓喜。やたらデカい猫(あのデカさは何!?)を抱っこしてる美川君かわいかったし、ひっそりと中庭で一人で小さく拍手する姿もいじらしかった。薩摩の田舎蓮根仲間だと思っていた(というか明らかに自分の方がシティボーイ適正があると思っていた)四三が思いもかけない分野で一躍時の寵児となり、劣等感や嫉妬や羨望を感じつつ、友情や同郷のよしみで誇らしく嬉しい気持ちも間違いなくある、そういう複雑すぎる心境をあの表情とセリフと演技で表現してみせるの、本当に素晴らしかった。あと疲労で眠れない四三が兄の幻影を見た時に「なに!?怖い!!」って言ってたのめっちゃかわいかった。これからも美川君をイチオシしていきたい。私の中で明らかに前髪クネ男からの脱却が行われた感。

これまで全然四三に対して触れずに来たけど、なんて言うか勘九郎さんの四三は圧倒的な安定感のある演技で文句の付けようがない。この飄々としてて地に足がついていない感のある、でも実はしっかり現実を見つめている底力のありそうなキャラ造形って多分宮藤官九郎さん独特の味なんだろうなって思うんだけど、それを勘九郎さんが演じることで浮き世離れした感が逆に馴染むというか、絶妙な味わい深さになっている気がする。とにかく四三に対しては圧倒的主人公感が好ましい。そして今回ちょっとだけ出てきたスヤさんとの結婚までのエピソードが待ち遠しい。お見合い話が進んでいる(ように見える)スヤさんが、今後どうやって四三の妻となるのか興味がありすぎる。

裏主人公?の孝蔵(志ん生師匠の若い頃)の話もジワジワ進んでいるのが小憎らしい程に上手い。五りんがどういう身の上なのか、それはいつどこで四三の話と交差するのか、あらかじめタネを堂々と見せられているのに、それをどう使うかわからないまま気持ちが翻弄されるのが本当にもどかしい。でもこういうもったいぶった演出も好きなんだよなぁ。後で上手く料理してくれるという信頼感があるからこそだよなぁ。

私はそれほど本気のクドカン脚本作品と相性がいいわけじゃないと思うけど、あまちゃんのような「クドカンさんがNHK向けにチューニングしたテンションの作品」とはバッチリ合う気がするので今後も楽しみ。

いだてん 第4回「小便小僧」

やっと一週遅れの分まで見終わった。今週中に最新話見て追いつきたい。

前回よりもいっそう第一回を補完する話になっていて、ここまで見ないと真の第一回の面白さがわからないという構成は、こういうトリッキーな仕掛けが好きな人には嬉しい要素だと思う一方、わかりにくさで初回で脱落する可能性を考えるとリスキーだなぁとも思う。そういう(マニアックな見方が好きな)視聴者だけを対象とするには、大河ドラマという枠はあまりに間口が広すぎる気もする。枠が大きいからこそ、新しい挑戦に意味があるという考え方ももちろんあるけれども。

竹野内豊とシャーロット・ケイト・フォックスの大森夫妻、この数分の出演でキャラ立ちすぎだろ~!?何で妻の方がいちいち翻訳してるの!?ウケる。こういうごく短い尺で夫婦仲がいたって良いこと、どちらかというと妻の方が主導権握ってそうなこと、でも夫はそんな状態に満足していそうなこと、何よりこれから面白いことが起きそうなワクワク感が全部表現されててスゴい。いやもうホント、すごい。

せっかくマラソン大会で三位という好成績だったのに、田舎の長兄から「勉強だけしてろ」って言われちゃうの、この時代の「スポーツ」に対する認知の低さを表してて面白いな。今でこそスポーツで身を立てることが(もちろん一握りの選ばれた人ではあるけども)出来ることが広く浸透しているけども、そもそも「スポーツ」という言葉が広まっていない世界というのがほんの100年前くらいであるという事実が地味に重い。今でも発展途中であって、常に新しい感覚を取り入れていかなければならない分野なんだなぁって改めて気付いたりした。

四三が取り入れた水抜き脂抜きの練習法。普通に脱水症状で死にそうという感想しかないけど、これも練習法についてはほんの十数年前と今が様変わりしていることからも、当たり前にあり得るんだよなぁ。このエピソードが終始一貫してコミカルな描き方で「この練習法によって四三は自然に従う大事さに目覚めた」って簡単に済まされているの、むしろ怖さが炙り出されてる感あった。無知って怖い。あと結果的に死ななくて良かった、みたいな案件ってそこかしこにあるんだろうし、実際に名もなき犠牲は山ほどあるんだろうなって考えると…ぶるぶる。

第一回から思ってたけど、三島弥彦役の生田斗真さんが本当に見事な造形で毎回眼福。今回、天狗倶楽部の中ではリーダーとしての威厳を見せつけつつ、三島家の中では地味に自分の立場をわきまえて行動してるってことがわかって、なかなかこの人も気苦労のある人生なんだなと妙にしみじみしてしまった。スポーツが金持ちの道楽と周りから思われていることをわかりすぎる程に自覚し、それ故に表と裏を使い分けてどちらに対しても(一定の)誠実な対応をしようとしている、悩める若人に見えた。第一回であんなに威勢良く嘉納治五郎に対して「融資はまかせとけ」って言っておきながら、あの爽やかな笑顔で「ダメでした」で済まそうとする裏には、彼なりの葛藤があるんだろう。兄に対して「スポーツは国力を表す指標になるから投資してみては?」と提案した姿は、精一杯の矜持に見えた。

前髪クネ男…じゃなくて美川君は夏目漱石に傾倒中。(美川君的な)流行の最先端である「坊っちゃん」の有名なフレーズを引用して反抗するも、「坊っちゃん」を誰も読んでいないというオチ…なんだこの壮絶に胸を抉る痛々しさは…その結果「劣等生」の烙印を押される美川君。ということは後で何かドデカい巻き返しがあるのかなぁって期待してる。おそらく視聴者の思いも寄らぬ方向で…クドカン脚本への謎の信頼感。美川君、なんかこう不思議な存在感あるんだよなぁ。四三に対してあからさまな友人顔でもないし、むしろ前回「冒険世界」を押しつけてきたので悪友方向に行くのかと思ってたら、今回永井先生に真っ向から反抗したり、なんだかんだ言いながら四三のマラソンを応援してたり(控えめだけど)、この微妙な距離感がなんか結構気になる。美川君は今後も注目していきたい。

いだてん 第3回「冒険世界」

第2回がめっちゃ面白かったので時間を作って録画してあったのを早速視聴。やっぱりおもしろ~い!純粋に見てて「ワハハ」って笑える面白さ。コントみたいなやり取りがそこかしこに差し挟まれて、怒濤の勢いで押し流されるこの感じ、嫌いじゃない。ていうか、これ「あまちゃん」のノリだ~!大好き!

長兄~!海軍の士官学校に入れずに落ち込む四三に対する態度が父親そのものだよ~;;やっぱりいい兄ちゃんだ~;;自分たちが中学に行けなかったから弟に中学に行かせたい、せっかく中学に行ったんだから好きなことをやれ、ひとかどの人物になるには夢中になれることを探せ…重苦しくならないギリギリのラインで他人に自分の憧れを託すの、田舎あるあるな感じでなんか地味に抉られる。それに対して四三が罪悪感を感じるのがすごいリアル。でもこの罪悪感も、最終的には許してもらえるっていう甘えも内包している、家族ゆえの温かいエピソードにまとまっていたように感じられてほっこりした。とにかく中村獅童さんの長兄がすごくいいよ~;;「抱っこされに行くのか」「いや、さすがに今さら抱っこは」みたいなやり取りも最高だった。演技の息ピッタリじゃん。

東京へ行く四三を家族総出で見送り。金栗家一家揃ってテンション高すぎて笑うしかない。ドン引きの美川君の「キミのアニキヤバい(意訳)」というセリフに全力で同意するけど、そのヤバさがクセになるのも事実。それにしても長兄の見事な鼻水顔を作ったメイクさんに脱帽する。きれいに(?)鼻水垂らして叫ぶ演技をする獅童さんと勘九郎さんにも感嘆する。そして四三の朴訥なキャラクターはこの家族の中でこそ育まれたって素直に納得できた。良いシーンだった。

美川君役の勝地涼さん。私の中では八重の桜の山川健次郎のイメージが強いんだけど、今回の役はモロ前髪クネ男だ~!って懐かしくなった。あんな短い登場時間だったのに、我々視聴者に強烈な爪痕(?)を残した前髪クネ男…宮藤官九郎さん脚本の勝地涼さんはやっぱりこの路線で輝くんだなぁ。あと地味にお堅いイメージの山川健次郎とのギャップ自体が面白い。健次郎は小説をバカにしてた気がするので、美川君が漱石に傾倒していく姿が感慨深い。役がそうやって巡り巡るの、大河の醍醐味だよな~。

三島家劇場も面白すぎた。白石加代子さんのビジュアルがもうそれだけで完全勝利って感じ。シマちゃんの「漢字わかってんじゃん」に大笑いした。あの字幕はズルいよ~。あと「杖がむき身でございます」www あの匕首の存在自体は、三島家の関係者にとっては日常なんだな~。もうこの数分間だけで今後の三島家劇場の面白さが約束された感あった。こんなの好きにならずにいられないよ~。ズルい。

スヤちゃん。SLとチャリの併走シーンがすごいとネット上の話題の方を先に見てたけど、実際に見たら想像の数倍スゴかった。確かに自転車は結構速度出せるものではあるけど、あの衣装であのセリフ叫んで演技しながら爆走しつつ、それを楽々こなしているように見せてしまう綾瀬はるかさんの身体能力、本当にすごいな…。さすがバルサ。四三とスヤちゃんの関係も、状況やセリフを一つ一つ見るとどう見ても恋愛パートなんだけど、実際に見ていると心地良い程に色恋オーラがなくて、スッキリサッパリ爽やかシーンに仕上がってるのが不思議。でもこの感じすごく四三とスヤちゃんに合ってると思う。スヤちゃんが四三に惹かれた理由がイマイチわからないけど、あの提灯持ってすっ転んだときおぶってもらったエピソードが効いてるんだろうか。そのあたりはそのうち語られるのかな?(四三がスヤちゃんに惹かれるのはわかりすぎる。あの眩しすぎる笑顔の綾瀬はるかさんに惹かれないなんてありえない…)

兄に「夢中になれることを」って言われた四三が、ついに「マラソン」と出会う。天狗倶楽部のむさ苦しい面々を目をキラッキラさせて見つめる四三が眩しい。北三陸で海女(=夏ばっぱ)に出会ったアキのキラキラした目を思い出す。自分にとっての特別な何かに出会う瞬間、というのが宮藤官九郎さんの究極のエモさなのかな~?と思ったりした。ボーイミーツガールな四三とスヤちゃんよりも、ボーイミーツボーイな四三と天狗倶楽部の方がキラキラとドキドキが伝わってくるの、宮藤官九郎さんらしさだなぁと思ったりも。

ここで一気に第一話に繋がっていく構成だって気付いて上手いなって思った。あの(私にとってはすんなり理解しがたかった)第一話がこうやって後から本編(?)で補完されていくというトリッキーな仕掛けに唸る。でもこういうのはわかりにくさに直結するから、視聴率的にはマイナス要因なんだろうなぁと余計な心配もしてしまう。自分が楽しく見られさえすれば視聴率とかはどうでもいいんだけど、低いとメディアでの叩かれ記事が増えるのが面倒。クリックしないけどタイトルだけは目に入ってくるし…。自分としては読まなければそれほど実害は無いけど、制作陣とかNHKの上層部とかがそういう「世間の評判」を気にして本来の作りたい作品が作れなくなったりしなければいいなぁと心底思う。まぁ、既に脚本は三分の二くらい出来上がっているらしいので、この路線がそのまま続くと信じたい。

そう言えば神木隆之介君は五りんとしてちゃっかり弟子入りしてた。冷水浴びて乾布摩擦してたけど、四三の子孫なんだろうか?あからさまな謎提示なので楽しみに回収を待とう。

いだてん 第2回「坊っちゃん」

あ、あ、すごい面白い!ちゃんと面白さがわかる!!良かった!

そうそう、大河ドラマの第一回てこんな感じ!って印象の第二回だった。どうしてこれを初回にしなかったんだろう。最初にこれを見てたらそこまで不安にならなかったのに。(これ見るまで面白がれるかどうかかなり不安だった)

金栗家の描写、あんなに短い時間でわちゃわちゃと描かれているのに、もう既に必要最低限の情報はしっかりと視聴者にすり込まれてるのすごい。子だくさんで裕福と言えるほどではないけど経済地盤はしっかりしていて安定してそうなこと、長兄は一見厳しく見えるけど家族への愛情深い人であること、四三は口数が少なく気も弱そうだけど意外と頑固な面もありそうなこと。

特に長兄~!中村獅童さんは八重の桜での佐川官兵衛役がすごい印象に残ってて(感動的な酒宴のあとの大遅刻w)粗野に見えるけど実は優しい、みたいな役をやらせると本当に魅力的だよなってしみじみ思う。走って学校に行け、行かないなら学校部屋だ!と頭ごなしに怒鳴ってるのに、その根底に愛情があるってわかるのすごい。四三を内心かなり気にかけていて、死ぬ間際の父親に「進学させたい」と言い出すのとか本当に頼れる長兄そのもの。海軍に行きたいという四三に対して一瞬困惑してたのは何か理由があるんだろうか。思うところがありそうなのに結果的には四三の好きなようにさせてくれるのも見ててほっこりした。

「父が嘘をついた」に笑ってしまった。あんなわかりやすい嘘、家族はみんなすぐに気付いたんだろうなぁ。それでも話を合わせて丸く収めてしまおうとするお婆ちゃんとかあるある過ぎる。とりあえずの家長の精一杯の虚勢を立ててやろうという気遣い、父も家族が誤魔化されてくれてると知っていて、お互いに内心妥協してるあの感じ。昔の大家族の原風景みたいな懐かしさがあった。その中で一人だけ父の嘘にうちひしがれてる四三がかわいそかわいい。

スヤちゃん。提灯持って必死で四三追いかけてすっ転ぶシーン可愛かった~。その後四三におんぶしてずっと「すいません」て言ってるのも可愛かった。ほんのちょっとの子役シーンで猛烈に印象づけてくるのすごい。綾瀬はるかさんに変わってからはなんかもう圧倒される存在感だった。大声で歌う綾瀬はるかさん可愛すぎか。自転車節はこれからもかなり重要アイテムとしてでてくると見た。

そして四三。子役の子が本当に朴訥ないい感じだなぁ思ってたけど、あとからWeb記事等で「あまり演技経験のない子役の素を撮りたくて、台本読ませなかった」みたいな記事を見て納得してしまった。そういう演出もあるのかと驚いた。口数の少なさが印象的だけど無口な性格とかおとなしいとはちょっと違って、頑固でしっかりと考えもあって、でも単に「口に出さない」みたいな微妙なニュアンスの性格が良く表われてたと思う。そして中村勘九郎さんに役者がバトンタッチしたときに「あの男の子が成長した姿だ」ってすんなり納得できるのが本当にすごい。役者さんも演出もめっちゃ力入れてるのがわかる。

奇声を上げながら冷水浴(どう見ても素っ裸w)してる中村勘九郎さんがどう見てもヤバい人で、でもそういう部分が四三らしさでもあるというのがこの回を見るだけですんなり納得できるのもすごかった。本当に宮藤官九郎さんはキャラ立てが上手いよな~。キャラ立てが上手いというより、キャラが立っていることを表現する場面やシーンを作るのが上手い、のかな。今回は本当に演出と脚本と演技がしっくり噛み合ってる回な気がした。さすがあまちゃん組。本当に、どうしてこれが第一回じゃなかったんだろう?そのうちその理由がわかるんだろうか。

俄然一年間楽しみになってきた!既に2週遅れ視聴になってるけど、早いうちにリアルタイムに追いつきたい。

スーパープレミアム 「獄門島」

年始の再放送記念&いずれくるであろう「八つ墓村」に向けて、シリーズ全部感想残しておくためのメモ。見てすぐの感想じゃなくて、もう何度見たかわからないくらい録画リピートした後の感想だから、自分の中のこのドラマの概念みたいな抽象的な文章になってる。

金田一耕助シリーズの映像化って、現代の日本ではほぼ石坂浩二市川崑の映画版の呪縛からは逃れられない宿命なんじゃないかと思っている。あまりにエンタメ度と映像美の完成度が高い作品がごく初期に出てしまったせいで、良くも悪くも見た人の印象がそれで固定されてしまったと言うか。市川崑版の後の金田一作品は、見る側はもちろん作り手側も「市川崑版とどう違いを見せるか」という意識に囚われているような気がしていた。それが悪いわけではもちろんない。

そして当然のようにBプレの「獄門島」もその呪縛からは逃れていないのだけど、私がこの作品を見て衝撃を受けたのは、逃れられないのなら呪縛そのものをむしろ強く意識させ、そこから逃れようと必死になる作り手側の懊悩をそのままロックに仕立てて作品に取り込んでしまった(ように私には見えた)ところだったりする。この潔さ…というかヤケクソ感漂う開き直りの精神が、この作品の突き抜けっぷりをより際立たせてくれていると思う。大好き。

ハセヒロさんの金田一は見る前はもっと優等生っぽくなってしまうのかと思ってたのに、とぼけたいい感じで始まったと思ったら途中から突然死者と脳内会話を始めちゃう不穏さを見せ始め、最終的にはDIO様が憑依したかのようなキレっぷりを披露してくれて、さすがハセヒロ金田一…余人にはできないことをやってのける…そこに痺れ(ryと大いに堪能した。最後の犯人との対峙のシーン、演出が斜め上過ぎて初回見た時軽く引いたからね。キチガイがどうこうってレベルじゃねーぞ。明らかに金田一、和尚に殺意…とまでは行かなくても未必の故意があったとみなされる案件じゃないんか。名探偵が犯人にとどめを刺す(ある意味物理的に)というクレイジー極まりない構成に唸りまくり。そして見れば見るほどこの結末がクセになる。この結末があってこそのリブートシリーズ(っていうの?)だと納得し始める。このあたりでトランス状態に入って完全に信者になる。すごい。この金田一シリーズはすごい。

この金田一、完全に狂気にポイント全振りしてるんだけど、それを「戦争の傷跡」という解釈でねじ伏せたの上手かったな~。了念和尚の「想像も出来ない出来事がある」という言葉に触発された金田一が「暴いてやったぞ!ザマァミロ!」って言うの本当に…本当に…さもバカにしたような「ごくろうさまでした」の言い方本当に…完全にヤバい人なんだけど、そうなったのが戦争ゆえであるというのがごく自然に匂わされていて、でも多分その狂気の中には金田一の本質も含まれていて、安直に「戦争が悪かった」という結論ではなく、金田一という個性が戦争という場を経験したからこそピンポイントでこう発露したという説得力に持っていく手法に脱帽した。

今回新鮮だったのが、金田一が早苗さんにとことん疎ましく思われてたこと。安直にヒロイン役が探偵に頼ったりせず、最初から最後まで胡散臭いし迷惑な相手だと思ってるのがありありと見て取れる演出が印象的だった。金田一も「あなたのせいで自分は真実から遠ざかってた」って詰ったり相当感じ悪かったし、その状態で「一緒に島を出ませんか」ってどの口が言うんだ状態だったから、思いっきり拒否られるのも納得。むしろその選択肢以外無いだろうという気がする。あの(=東京へ誘う)時の金田一、早苗さんを誘っておきながらその真意が同情とか憐憫とかじゃなさそうなのが薄ら寒かった。あえて言うなら虚無を分かち合おうとする、みたいな。いや、ホントどの口が言うんだって思ったもんな…。そういうところも最高だった。

映像はとても映画的だと思った。全編ロケだってどこかの情報で見た気がするけど、美しいけれどどこか陰鬱な色彩の風景とか、本当に全編素晴らしい映像だった。やっぱりロケはいいよねぇ…。所々暗すぎて何が映ってるのか良くわからない部分もあったけど(特に夜のお寺でのシーンが見にくかった)。

俳優さんでは初見当時了択役の岡山天音くんの独特の雰囲気が気になって、その後朝ドラ「ひよっこ」で出てきた時はテンション上がったし、ワンダーウォールの演技もすごくすごく良くて、自分のセンサーの感度に満足するなど。自分の中のイメージ的には窪田正孝枠なので今後大河ドラマとかで存在感をバリバリ放って欲しい。麒麟が来るとかに出ないかなぁ。いだてんでもいいよ!

悪魔が来たりて~の時も思ったけど、出来れば一年に一本くらいのペースでシリーズをなるべく多く映像化して欲しい!年末のフジテレビの犬神家は初心者用ダイジェスト版て感じで物足りなかったので、犬神家も是非Bプレ版でドロッドロでコテッコテの演出で作られるのを期待。何より今は八つ墓村がどんな感じになるのか楽しみすぎる。典子がちゃんとヒロイン枠だといいな~!