西郷どん 第18回「流人 菊池源吾」

奄美大島編…らしい。結構大々的に宣伝してたし、新たなスタート的な気合いを感じた。何よりもロケだと思われる映像の美しいこと美しいこと!二階堂ふみさんの演技は完全に見入ってしまうほどに上手いし、風景はため息つくほどに雄大だし、画面を見ているだけで楽しくて、40分間全く飽きなかった。ただ、気になる点もあった。

まず、吉之助がどうしてここまで荒れているのか、いまいちピンと来ないところ。自分の中では月照さんと死んだはずが自分一人だけ生き残ってしまったことに対する絶望が大きかった…というのが一番しっくりくる理由なのだけど、それにしては吉之助と月照さんの繋がりが全く描かれてこなかったため、ただ単に「自分だけ生き残って申し訳ない」みたいな自責の念でヤケになってるように見えてしまって、鈴木亮平さんの渾身の演技がむしろ大げさで悲劇のヒーローな自分に自己陶酔してるようにすら見えてしまったのがツラかった。あと、どう見ても斉彬の死の方に引きずられているように見えてしまって、月照さんの影があまりないように見えるのも切なかった。

あらかじめあんな風に「お前の夫が来る」って預言されたら、そりゃー気になるよな。こういう設定は厨二っぽくていいかも。ただ、とぅまがなぜ薩摩侍を嫌うのか、というのはもっとアピールしてくれても良かった。嫌いな相手と結婚するという預言にもっと過剰に反応してくれても良かったのに。あと、とぅまにシャーマン的?なパワー?があって、海神様に祈るとそれが実現するみたいな設定、ちゃんと説明されてたっけ?話の流れで多分そうなんだろうとは思ったものの、何か突然海に走り出して「災いを与えてくれ!」って叫ぶという行動はなかなかエキセントリックだよなぁって思った。それに、力があるならばそれを自分の感情的な好き嫌いで振るってしまっていいわけ?という気にも。完全に自分の感情的好き嫌いで相手を呪ってしまうヒロインてどうなんだろう。その上、いざ災いが降りかかると途端に怖じ気づいて必死で助けようとするのも、なんかこう…どうなんだろう。あんまり深く考えない方がいいんだろうなぁ。

西郷どん 第17回「西郷入水」

月照さんとの逃避行なんだけど、やっぱりこの描き方だと完全に月照さんがお荷物モードなんだよねぇ。いや、事実としても確かにそうだったのかもしれないけども、こうやって吉之助側の助けるメリットが(吉之助自身の正義感以外)全く無いように描かれてしまうと、物語上の吉之助(の正当性)のために月照さんを安易に消費してる感がハンパなくて、なんか居たたまれない。月照さんが吉之助にとって(京都で朝廷工作に尽力してくれた以外で)どういう人物だったのかもっと描いて欲しかった。同時に、月照さんがどうしてそこまで吉之助に命を預ける覚悟をしたのかも、納得いく描かれ方がされたら良かったのに…とも思う。

薩摩への逃避行はそりゃー大変だったんだろうけども、追っ手に見つかりそうになる&逃げるというシーンしか無いので、単調になってしまった気もする。かといって他にどういうシーンを入れたらいいのかはわからんが。そして大変そうな割にあっさりと吉之助の実家にたどり着いたように見えてしまい、終わりがあっけなさ過ぎた。

正助が吉之助を生かそうと奔走するのはまぁ、わかる。わかるんだけど、その方法が「月照を斬れば吉之助が許される」だったのは、正助がノーテンキ野郎だということをアピールしたかったからなんだろうか。吉之助が月照を斬るという決断が出来る人物だと思っているとすれば人を見る目がなさ過ぎるし、友人のこと何もわかってないってことじゃん…。吉之助の本質を見抜いた上でこの作戦を立てたのなら、吉之助を騙したり恨まれてでも結果を出すというエピソードにした方が良かったんじゃなかろうか。中途半端にみんないい人にしたせいで、結果として正助は「吉之助がそこまで助けたいと思っていた人をあっさり殺せばいいと言ってしまえる友人気取りの勘違い野郎」に見えてしまって悲しかった。その上吉之助に入水の覚悟を決めさせてしまうという超裏目を引かせる上に、それに気がつかない無能野郎にもなってしまっているんだよね…切ない。

正助から月照を斬る案を聞いた吉之助が、その場で素直に受け入れたフリをして心中を決意するというのも、シーンの展開としては美しいのだけど、これまで見てきた吉之助がそういう決断をする人物か?という素朴な疑問から逃れられない。斉彬が死んで絶望しているが故の決断なのかもしれないし、あるいは吉之助の成長…というか新たな面での覚醒を意図しているのかもしれないけど、やっぱりこの流れで心中決意するのって月照さんに失礼すぎる気がするし、何よりもこれまでの吉之助のキャラと違いすぎる。良くも悪くも素直バカで目の前の人物と一対一で熱くぶつかり合うことしか出来ないのが吉之助ってイメージだったので、ここのシーンに違和感ありまくり。今後の展開のためにムリヤリキャラを動かした感が残るんだよね…いや、そういう風にお話を作ること自体はすごく良くわかるんだけど…。

そして入水。唐突に放り込まれるBL感にあっけに取られる。これまで吉之助と月照さんの関係性を超薄味にぼかして来たのに、最後の最後で抱き合って入水…演出の意図がさっぱりわからない…最後の最後で仕方なく(シーンの美しさに紛れさせて)原作との帳尻合わせてきたとしか思えん。そんな突拍子もないBLはやめて欲しかった…普通に手だけ繋いでドボンしてくれた方がまだ私の好みだった。最後に抱き合わせるなら、もっと前から二人の精神的なBL感を煽って欲しかったなぁ。尾上菊之助の美しさだけを頼りに、時々月照と吉之助が見つめ合ってただけじゃん!そんなのただの記号でしかないじゃん!もっと!心の!繋がりが!見たかったんじゃ!!

いや、そもそも斉彬が死んだときに吉之助に「生きろ」と諭した月照さんが、こんな「(自分は別に死ぬ必要はないけど)お供します」風な言葉に対して「心強いですなぁ」とか言うかね?それだけ絶望してたってこと?せっかくあの気高く美しく麗しい月照さんなのだから、吉之助だけは生かそうとするというような、高潔なエピソードにしても良かったんじゃ?いや、これ先の展開を知らないとか、心中に成功してたとかの結末ならわかるんだけども、見ている方は月照さんだけが死に、吉之助は生き残るという史実を知っているので、登場人物が悲劇に酔ってるような気持ちになってしまい、どうしても素直に感動できない…。

幾島が篤姫の元から去るシーン。篤姫がわざわざ「汚名を被る覚悟を…!?」と言ってくれて「なるほど、そういうパワーバランスなのか」ってわかったけど、願わくばセリフじゃない演技で把握したかったよね。

久光ぼんくら回だったけど、未来に繋がる布石を感じた。今後の覚醒を楽しみに待ちたい。あと、もうこの作劇上仕方ないんだろうけど、斉興一人を悪役にするのやめて欲しかった…。

西郷どん 第16回「斉彬の遺言」

斉彬が死んで腑抜けになるかと思いきや、亡き殿のご意志をくんで変革に邁進する吉之助。その愚直さ、苛烈さは危うさも秘めていて、月照さんは明確に吉之助の「燃え尽きたい」という願望を見抜いている、という関係性は純粋に良かったと思う。願わくば、どうして月照さんは吉之助のそういう心情を察し得たのか?という部分にもっと説得力があれば良かったけども望みすぎか。

個人的には先週の「今後お前は俺になれ」が遺言てことだと思うんだけど、15回のサブタイトルで「殿の死」って使ってしまっていることで、先週のを見ている時からその言葉が遺言であることはわかりきっているので、今回のサブタイでもう一回「斉彬の遺言」って念押しされるとちょっとクドい気がした。わかりやすさ重視なのかもしれないけど、もう少し視聴者を信用してくれてもいいのになって気にもなる。実はそれ以外のサブタイの意味が含まれていたのなら逆にわかりにくい…

月照さんが幕府から狙われている話。史実がそうだったので仕方ないんだけど、正直「月照さん、そんなに目立つ存在だったの!?」と意外に感じてしまったりも。ドラマ内では穏やかで気品のある人にしか見えないので、幕府側の過剰反応という可能性もあるけど、そのあたりの社会的情勢は全く語られないので結局は謎のまま。そして月照さんを薩摩に逃がすという話までトントン拍子で進むのだが、月照さんが既に死を覚悟してるのかはたまた薩摩での再起を狙っているのか、いまいち読み取れなくてわかりにくかった。このドラマ、わかりやすさに定評があるらしいけど、こういうところはめっちゃ不親切だと思う…

佐野史郎さんの井伊直弼!「恐れ入り奉ります」連呼で押し通したっていうのは何かそういう逸話があるんだろうか。面白すぎた。薩摩から見ると井伊直弼は完全に敵役なんだけど、佐野史郎さんの含みのある演技は「敵役なりの信義がある」って感じでとても素晴らしかった。昨年の大河「直虎」からの引き続きの視聴者に対してのアンサーとなる演技だと思う。あの直政の子孫として納得感ありすぎるw

西郷どん 第15回「殿の死」

最後の最後で慶喜の将軍就任がひっくり返されて家茂の就任が決まってしまい、それまでの入れ込みようの反動からかすっかりやる気を失ってしまう斉彬。個人的には慶喜の将軍の資質というのが全然描かれてこなかった(ように見える)&慶喜というと『八重の桜』での頭いいけど小心者で姑息(誉めてる)なイメージが強くてそういう人物に入れ込んでる斉彬が人を見る目が無いように見えるというコンボで、自業自得なのでは…?と思えてしまうのが痛い。英傑のはずだった斉彬がヤバい人にしか見えないので、そういう斉彬に傾倒しすぎているように見える吉之助もやっぱりヤバい。どう見ても視野狭窄に陥っていて、他の意見を受け入れられない頑迷さがヤバさに拍車をかける。

死んだサカナの目の斉彬が立ち直るのが吉之助の言葉から…っていうのはまぁ仕方ないのかなぁ。吉之助がいきなり「兵を率いて上京する」という過激策出してくるのもびっくりしたけど、それにホイホイ乗っちゃう(ように見える)斉彬もどうかと思うんだ。そもそもこれまで吉之助の戦略的な賢さみたいなのが一切描かれなかったので、突然覚醒してもそれが素晴らしい策なのかただの妄言なのか視聴者としていまいち正しい判断が出来ないって言う…。そして生気が一気に復活した斉彬から出た運命の一言が「西郷、おぬしはこれからオレになれ」。意味わかんねぇ!

いや、わかる。今後の吉之助が胸に刻みつけて生きていく言葉であることはわかる。でもそういう計算の上で作られたセリフであるという以上の意味が迫ってこない…そもそも吉之助は斉彬の理念を正しく理解出来ているのかちょっとアヤシいと思う…だってドラマを見ている私自身が斉彬の理念をちっとも理解出来ていないから…。ここ数回、やたら斉彬と吉之助のオーバーラップというか、二人のシンパシーみたいなものを全面にババンと描いてるけど、どうしてそうなったのかやっぱりサッパリわからないので、熱演が空回りに見えてしまう…。ツラい。

そしてラスト数分で斉彬死亡。本当に唐突な死だったらしいから、このぽっかりとした喪失感はすごくリアリティあるなって思った。

西郷どん 第14回「慶喜の本気」

井伊直弼ヘッドハンティングされる吉之助って無理ありすぎじゃない?斉彬の動向を探りたいという井伊側の意向には納得できるけど、その人選に吉之助を選ぶというのが人を見る目がなさ過ぎる…だって斉彬信奉者だよ?もう少し崩せそうな壁から攻めようぜ!?個人的に井伊直弼が全然悪人に見えない(言ってることもやってることも常識の範囲内に見える)ので、その言葉にワナワナと震えて怒る吉之助にどうにも共感しづらい。むしろそこまで斉彬に心酔しちゃってる事実に逆に心配になるって言うか…。井伊は昨年の直虎・直政の直系なので、気持ち的にちょっと井伊贔屓気味になっちゃう&佐野史郎さんの演技が味があって好ましいという面もあり、なーんか吉之助に対して厳しめになっちゃうのはどうしようもなく…。

篤姫パワーで家定が後継者を慶喜とすることを決意。家定と篤姫のやり取りはめっちゃ好感度高くて可愛らしいんだけど、それほど苦労したようにも見えず、家定にお願いしてみたらあっさり決まったように見えてしまったのが残念。多分本当はもっとすったもんだあったんだと思うけど、そのあたりは『篤姫』を見てねってことなんだろう多分。実際、篤姫見たくなるのでこれはこれで成功…なのかな?

しかし外堀は埋まりつつあるのに、肝心のヒー様はやる気なし。これがなー…慶喜がなぜそこまで将軍になりたくないのか、その真意がわからないままなので、担ぎ上げようとする斉彬&吉之助&左内の頑張りが空回りにしか見えない。そもそもどうして斉彬がそこまで慶喜の将軍就任に拘るのか、やっぱりいまいちピンと来ないんだよねぇ。やりたくないと言い張る相手を勝手に担ぎ上げるのって結構当人にとっては迷惑だし、そうじゃ無くて実は内心では慶喜が将軍をやりたい(やらなければならない)と思っているというのなら、もう少しそのあたりの葛藤をきちんと見せて欲しいかなぁ。今の状態だとめんどくさがっているようにしか見えない。

そしてついに慶喜が本気出すわけだけど、そのきっかけもふんわりしてるように見えた。自分が殺されかけたことで「オレがやるしかない」ってなんか良くわからん…

西郷どん 第13回「変わらない友」

地震で嫁入り道具が全てボツになったため、篤姫の輿入れは延期。一年の準備期間はあっという間に過ぎて、一気にお輿入れ。詳細は『篤姫』を見てねってことだろうか。家定と篤姫のやり取り可愛かった。

月照さん初登場。最初に出てくるシーンで既に優雅な所作を印象づけるスローモーション、まばゆいばかりのオーラエフェクト、と演出が振り切れてる。吉之助の心中相手というあまりにも有名な逸話をどう描くのか謎。

久々に薩摩に戻ってきた吉之助に対し、思うところある正助の、凝り固まった笑顔が情けなくも面白い。それにしてもそういう回に申し訳程度に放り込まれた正助の結婚話が浮いていたような…結婚話というかプロポーズ話?取って付けたあのエピソードは何だったんだ…満寿さんのキャラ付けにも別になんの影響もないエピソードだったような。

吉之助と正助のいさかいはもっと拗れるかと思ったらあっさりと解決してしまって肩すかし。正助にとって吉之助に対する嫉妬のようなものは確かにあるだろうし、それとは別に吉之助の人柄を心底好ましいと感じているのも確かだと思う。吉之助はそういう愛されキャラだというのはすごく良くわかるのだけど、一方で正助がどういうキャラかというとこれがいまいち良くわからない。久光に近づいたり、いろいろ考えていそうではあるのだけど、それがどこに向かっているのかわからないので、薄ぼんやりとしたイメージしか残らないのが残念。史実なんだろうし仕方ないんだけど、反発してた吉之助に対して、あっさり博多?長崎?に連れて行ってもらっちゃうあたりで「それでいいのかよ!?」って気になってしまった。

西郷どん 第12回「運の強き姫君」

なるべくリアルタイム視聴したいんだけど、録画勢になりつつある…ペースを戻したい。

将軍の御台所となって天下一の幸せを手に入れるつもりであったのに、肝心の将軍は男として不能で世継ぎも望めず、大奥を支配して一橋公(=慶喜)を次期将軍にするよう働きかけることこそが篤姫の使命…!盛り上がる展開だし、北川景子の演技も見応えあるし、何より南野陽子の幾島がいいなぁって思ったんだけど、正直斉彬の思惑が、当の斉彬の口からベラベラ語られちゃったのが残念というか何というか…素直に謝っちゃう斉彬が見たいわけではなかったんだけどなぁ。やっぱり自分の中で斉彬の人となりが全然理解出来ないままだな。

そもそも篤姫が強運という設定そのものが取って付けた感ありすぎないかなぁ?いや、相撲の時に一回だけチラッと出てきたのは覚えてるけど…こういうのはエピソードで「篤姫=強運」というのを印象づけて欲しかったり。後半、地震で傷一つなかったあたりも強運エピソードなんだろうけど、もっと前から強運をアピールする話をやってくれたらもっと納得できた気がする。ただ、強運で死なないからこそ家定が篤姫との結婚を決めた、というのはすんなり納得できる展開だったし、今後の大奥編に期待が持てた。ピン子さんやっぱり存在感あるな!

地震の時に篤姫が吉之助に「一緒に逃げて欲しい」って言うの、私はいまいちピンと来なかったんだけど、あそこはキュンとするところなんだろうか。それとも篤姫の覚悟にジーンとするところだったんだろうか。女としての幸せすら望めないと知った時、斉彬の前では気丈に振る舞っていたけど、その裏には大きな衝撃が確かに見えていた。そこからの一時的な逃避願望が言わせた言葉だと感じとることはできたし、恋というより信頼が押し出された篤姫と吉之助の演技はさすがだと思ったけど、なんかこう…取って付けた感がなきにしもあらず…なんだろうな。