おんな城主直虎 第31回「虎松の首」

この時代、領主の家が取りつぶされたらその残党は逃げ出すものであったのか…いや、確かにそのまま居座られても扱いに困るし、農民に慕われる領主であればあるほど邪魔な存在でもあるだろうから、ある意味当たり前ではあるのだけど。そして隠れ家で早速今回のたねあかしをする直虎。「実は政次は味方だ」という言葉に、六左から虎松、母上と高瀬にまで「そうではないかと思っていた」って言われちゃうのさすがにどうよ?政次の演技力とは…?寿桂尼様に通用しないのも当然か。まぁね、井伊では(駿府から離れている地理上の理由もあり)政次も気がゆるんでたのかもしれないけどさ。

そしてその中で最後まで「それすらも罠では?」って言い続ける直之がさぁ~!くぅ~!之の字~!!これはおそらく「但馬憎し」から来る言葉じゃないんだよね。もちろん政次のことは嫌いなんだろうけど(?)、この場ではむしろ直之は「違う意見」を発言することを自分の役割だって感じてるように思えた。別に政次に学んだわけではないと思うけど、主が目指す理想の未来とは別に、そうならない未来をあらかじめ想定しておくことの重要性、みたいなものを直之は直感で体得したんじゃないかなー。だから激するでもなく、静かにアンチテーゼを示し続ける。それに対して、直虎も「そんなことはありえない」ではなく「そうだったらそうだとして、その上でどうするかまた考える」って答えるのもすごく良かった。理想の主従がここにいる…!

おとなしく隠居した直虎に対し、関口は穏便に済まそうとしていたところ、氏真からのまさかの「断絶せよ」命令。この時の関口の表情がまた上手かったな…「そこまでする!?」的な、でも何も言えない感じが良く出てた。氏真はとうとう限界に達しちゃったのかな~哀れ。

直虎が寺から虎松を連れ去るシーンで、亥之助君だけ取り残されるのがツラくてさぁ…あーこれ、あー鶴の親父と同じ、あー!!みたいな。ここにきてさらに増す小野和泉守の存在感~!!あの時も…鶴が自分の父親の所業に苦しんでいたあの時も!これと同じような事情があったのかもしれないと思わせるのが切ないよぉぉ。政次には理解者がたくさんいるけど、小野和泉守は一人で何を思っていたんだろうかって考えちゃって…ツラ…これほんとツラ…;; 今回、亥之助は最後に政次の思惑を理解して感謝の言葉を述べてたけど、これは鶴が父和泉守に言えなかった言葉を亥之助の代で吹っ切ることが出来たってことなのかなぁ。そうであったらいいなぁ。

虎松の首を所望する天守様に若干引き気味の関口から「出来る?」って言われて「お安いご用です」って顔色一つ変えずに請け負う政次。こうなることを想定して、いろいろ作戦立ててるんで大丈夫ですって感じの表情の硬さ。もちろん虎松を差し出すわけはなく、身代わりの子供の首をはねるわけだけど、ここで先週の次回予告で煽りに煽ってた「地獄へは俺が行く」発言。こういう展開で言わせるか~そうか~って納得した。しかし部下多くない?一人くらいいれば十分じゃない?秘密を知るものは少ない方が良くない?って思ったんだけど大丈夫なのか?部下は政次の真意(実は井伊家を守りたい)を知っているんだろうか?知らない気がするなぁ…とすると、部下は政次が今川を謀って井伊を簒奪しようとしていると思っているのか…この主人えげつねぇなぁって思ってるのかなぁ。部下に本心を告げられないとしたらそれも切ない。

虎松の首実検。さらし首を画面に映すことが出来ない(放送倫理的な理由?)ので、妙に不自然な構図の画面。前の鶴の父親の時もそうだったけど、こういう(放送の限界?に挑戦?するような)チャレンジングな映像作り自体はいいと思うんだけど、やっぱりすっごい構図が不自然で気が散る。今回は関口殿の頭の位置で隠してたけど、この不安定な画面が気になって気になって、役者の演技を堪能するどころじゃなかった。

政次の地獄行きの覚悟で何とか無事に終わった首実検。そこで龍雲丸から直虎(と視聴者)に対して「病気で死にそうな子供だった」っていう説明が入るんだけど、これは龍雲丸の思いやりからのウソ…なんだろうなぁ。ウソというか、でまかせ?少なくとも、視聴者に対して何らかの言い訳を入れる必要はあったんだろうなと思った。直虎の涙は、虎松の身代わりとして首を切られなければならなかった子供に対する罪の意識と、それを一人で決めてしまった政次への複雑な感情があったように思う。それしか無い修羅の道を、自分に問うこともなくまっすぐ突き進む政次に対して、直虎は何を思うんだろうなぁ。

龍雲丸は「あの人は悔いてはいない」と言ってた。あの人って政次だよな?それに対して直虎が「頭に何がわかる!」と憤った。つまり、政次は傷ついていると直虎は考えていて、酷いことをさせた自分に対しての怒りがあるってことかな?そしておそらく自分に何も明かさない政次に対する怒りもあるよな?龍雲丸の「あの人は守りたいから守ったんだ」っていうセリフは、その通りなんだろうし納得できるんだけど、ちょっと説明しすぎな気も。つまりは政次に対して負い目を持つのはやめろってことだと思うんだけど、このあたりの感じは龍雲丸がまんまアラン(それもアニばらの方のアラン)に見えてきてムズムズしてしまった。あんなにキュンとしてた龍雲丸の言葉も、直虎と政次の絆に対しては大きな意味を持たないんだな。直虎と政次の関係性に、どうやって幕を引くのか、怖いけど楽しみだ~。

全体的に政次の顔芸大会って感じで、常に「この政次の表情から何を読み取るか!?」みたいなミッションを延々とこなしてる感あった。高橋一生の面目躍如だよなぁ~本当にこの人の「見る人によっていろんな意味に見える」表情って味があると思うわ~。この役に高橋一生を起用したプロデューサー?スタッフ?は心底良い仕事した。退場までもうちょっとだろうけど、ますます盛り上がる今後の展開でどういう演技が見られるのか、本当に楽しみ!


・久々の昊天さんに癒された!もっと出て!
傑山さんの筋肉祭りw
・直之「弁慶ディスってんの?」
・直虎の尼姿やっぱり美しいな~!

 

おんな城主直虎 第30回「潰されざる者」

久々に政次が井伊谷三人衆の前で「井伊を乗っ取ろうとしてる家老」のフリしてるの見てフフッてなる。最近井伊で直虎と深夜囲碁で充実した日々を過ごしている姿ばかり見てたので、そういえばその設定まだ生きてたんだ!?的な。大前提を思い出させてくれてありがとう。近藤殿はかなり怪しんでたので、この辺何かあるのかもしれない。ただ、多分近藤殿が聡いというよりは、もともと井伊に対して思うところありすぎて何でも疑わしく見えるんだろう…と思えるこのキャラの描写力がすごいと思う。

そしてとうとう寿桂尼様のデスノートが炸裂…方久に井伊を取りつぶす案を披露。披露したってことはもう後に引けない。そのまま方久は調略されたことに…この後の方久の行動が本当に「らしく」てキャラ作り上手いなーってしみじみ。今川相手に反逆出来るわけも無く、しかし直虎に対して主としての好意は持っているので、一応心苦しさや気まずさはある(けど義理立てはしない)っていう加減がムロツヨシの演技とバッチリ合いまくってて小気味よかった。本当に方久が金にしか興味が無い、情のない人間であれば、ここまでソワソワしたりせずに、むしろどーんと構えていただろう。でも最終的に方久は(ある意味当然のように)井伊を裏切ることを選ぶわけで、そこに迷いとかはなさそうなあたりも方久らしさだよなぁって。これで井伊が復活したら笑顔で家臣に戻ってきそうなところも好き。

政次が久々に策士っぽくてテンション上がった。寿桂尼様にはバレてたというのが方久の一件で明らかになったけど、ここで良いな~と思ったのは、政次が「バレているかもしれない」と自分で気付いて、さらに気付かれていることを想定して自ら動き出したこと。結局寿桂尼様の手のひらの上だったあたり、政次は策士としてそこまで天才的な才能があるわけではないんだけど、現状を正しく把握して最悪の状況を回避するための能力に長けている人っていう描き方がツボる。方久を騙して情報を得るところは、地味に龍雲丸との共闘が微笑ましかった。二人は何も確認し合ったりしていないけど、お互いの直虎という存在を大事に思い、守ろうとする姿勢に無意識に共感するのかなぁって。

そして徳政令の断行の知らせと井伊家お取りつぶしの通知。さすがにあまりの動きについて行けない直虎と政次の、エア対局による今後の作戦会議。これね~、この前(第25回の材木関連で徳川との内通を疑われた時)のエア対局にゾクゾクした印象が強烈すぎて、今回「またこの演出かよ」って思ってしまった面は否めない(実際同じ演出の方だった)…さらに今回は心の声が被せてあったのがいまいちだったかなー。ここまでいかにもって盛り盛りの演出じゃなければ、もう少し感動したかもしれないけど。悪かったわけじゃないんだけど、ほんの5回前の演出だったからか、二番煎じ感が残っちゃったんだよな。残念。

そのエア対局でたどり着いた答えが、一度井伊を潰させてしかる後に復活するという策。まぁ絵に描いた餅ではあるけど、描けるだけの展望があるというのはこの時代からしたらおそらく望ましいことで、そうやってみんなが自分に都合のいい未来を思い描き、運が良くその未来図が転がり込んできた者だけが生き残ったのかもしれないなぁ。そして今川の徳政令を受け入れる覚悟を決めたところで、農民たちの暴走による直訴…!これまたいち早く現状を把握した政次が言う「俺を信じろ。信じろ、おとわ」の響きが~!!こういう時だけ「おとわ」呼びかよ!それわかっててやってるだろ!小賢しいんだよお前~!!と地団駄を踏みながら転がり回る。待て次週!

 

おんな城主直虎 第29回「女たちの挽歌」

うぉぉぉ!しのさん!しのさんカッコいい!!頼まれた訳でもないのに、当主の奥方としての勤めを果たしているしのさん素敵!!こういう描写が一つあるだけで直虎としのさんが疑似夫婦的な関係であるというのがすごく納得できるの本当に嬉しいし上手いなぁって思う。女の友情を表現する際に「疑似夫婦」を持ってくるのって珍しいと思うんだけど、それがこんなに見てて気持ちいいんだから面白い。

これまで寿桂尼様を誇り高く気高く描いてきたからこそ、その死にこの時代の全ての人が思うところあって手を合わせるということがすんなりと入ってくる。久しぶりの直虎の歌うような読経が耳に心地よい。尊敬する師であり、畏怖する上司であった寿桂尼様。直虎の偲ぶ気持ちは尊いけれど、実際には井伊の離反は見透かされてるからなぁ~そこがまた見てる方にとっては複雑よね。相手の方が何十枚も上手だったという…そして死にゆく寿桂尼様は全ての感情を排除して今川に不利益となるモノを切っていく覚悟を決めちゃってるわけで…しんどい。

前回の「上杉と手を結ぶのはどうか」という提案のおかげで、今川派と邪推されて徳川への寝返りに対して「人質を出せ」と言われる展開。これな~すっごい細かい部分なんだけど、ちゃんと直虎の行動(上杉と手を結ぶ提案)にもっともらしい理由を付けた上で、その行為の代償としての人質って流れにしているのが上手い。こういう学説等があるのか、無理矢理でっち上げたのか不明だけど、このあたりのそれぞれの思惑と動きがものすごいわかりやすい&納得できるのが良かった。良かれと思った策がむしろ下策となっちゃって直虎がしょげてるのとか、本当に「らしい」作劇で感動。みんなが直虎の言葉に感動してなぜかうまく行っちゃうとかじゃ無いのが素晴らしい。

そしてここからのしのさんとのやり取りがさぁ~!「こんな小さな国衆の分際で」とか言っちゃうしのさん最高~!それなのに仕方なくではありつつもちゃんと素直に引き受けるの最高~!決して馴れ合わない戦友同士って感じでホント最高~!それだけじゃ無くて、その後の虎松の成長のために一芝居打つしたたかさと、その後の「母は行きたくなってしまいました」の流れが本当に素晴らしくて…虎松が「母上は行きたくないはずじゃ!」って言うのがさぁ…「母上は虎松と離れてもいいのか!?」っていう母を試す言葉じゃないのが泣けて泣けて…虎松は自分に注がれている母親の愛を全く疑っていないし、それ故この言葉には大人の事情が絡んでいて本心でないことを悟っているし、でもここで泣いて悔しがるのは自分にそれを覆す力がないという無力感からなんだよね…それが本当に切なくて悲しくて、でもそこに今後の虎松の成長が凝縮されていて、爽やかに心地よい涙が…!

そして虎松の叫びを聞いた後のしのさんのセリフがまた…「虎松に味方を作ってやりたい」ってすごくない!?この時代に他家に嫁ぐ理由にこれ以上の説得力ある言葉って無くない!?それを当の子供に言い聞かせるこの誠実さ!!引き離される母と子の悲しい別れだけにしない、むしろしのさんがこの時代の女主としてどうやって戦うのかって言うのを体現しててすごい素晴らしい感動した…与えられた状況の中で、最大限自分たちに有利な状況を見極めようとするそのしたたかさにしのさんの成長を実感する。とにかくすごく良かった!

虎松と直虎のやり取りも良かったな~。「答えは一つではないのでしょう?思いつかないというのは、殿が『阿呆』だということでは?」って思いっきり幼き日のおとわのブーメランで笑ってしまった。相手が子供でもきちんと道理を説明しようとするところが、おとわ時代の自分をきちんと省みてる直虎らしいところだな~。あやめに代理で嫁いでもらおうっていう虎松の案。子供って純粋が故に時に残酷よね…自分の願望のために、他人を身代わりにしようとする利己性が無邪気に描かれていてエグいなぁって。言い訳のようにあやめに「こういうことでも無いと自分は結婚しなそうですし」って言わせるのがまたエグい。

そしてとうとう牙をむいた武田軍!な、生首~!!いやぁ、清々しいほどに悪い顔してる家臣だった。そして信玄の表情もな!悪い顔だ!!いよいよ今年の大河の最大の山場が来るぞ~!

 

おんな城主直虎 第28回「死の帳面」

先週、次回予告のサブタイ(デスノートってあんた…)見てひっくり返ったんだけど、見終わってみればこれまでの中でトップクラスの「サブタイが内容を表す」事例だった。だったんだけど…何度見てもこのサブタイをどう受け止めたらいいのかわからんw 一見ギャグにも見える「そのまんま感」なのに、逆に内容は大河らしい重厚さのある回で、そのギャップが妙に可笑しい。その可笑しみが狙ってるのかたまたまなのか、そしてスベってるのかツボってるのか、自分の受け取り方すらうまく言葉に出来ない。でも一つだけ確かなのは、このサブタイすごく勇気あるなぁって…いろんな意味で。

寿桂尼様のラスボス感はこれまでも何度も何度も垣間見てきたけれど、今回は今川メインと言える内容で、もう本当に寿桂尼様無双。マツケン信玄がなんかもうコテコテ作りすぎって感じのビジュアルで笑ってしまうんだけど、その信玄を喰うくらいの迫力な寿桂尼様ハンパない。この二人のやり取りが本当に食えない者同士の会話劇でシビれた。こういうの見ると大河だなぁ!って思う。説明セリフを極力入れず、建前ばかりのセリフだけのやり取りで本心を匂わせるってかなり高度な技だと思うので、演技と脚本と演出の職人技を見た心地よさ。ここぞという時の諱(晴信って諱よね?)とか、信虎の名での釘差しとか、ほんっとうにゾクゾクした!はぁ~いいもの見た。

氏真のぼんぼんっぷりがさぁ~!これまでも今回も心底お坊ちゃんなんだよなぁ~でも無能って描き方じゃないのがいいな~って思ってたけど、今回際立ってたと思う。寿桂尼様と比べたら凡庸ではあるんだけど、凡庸であることのマイナスを正しく把握できてしまう程度には頭がいいし、育ちもいいんだよな…ってわかってしまうこの絶妙さ。そういうことがちゃんと把握できるんだから、やっぱり無能ではないんだよ。寿桂尼様にコンプレックスを感じながらも、お婆様大好きなんだよねぇ…さすがいいとこのお坊ちゃん…白塗りに逃げても「まぁ、わからんでもない」と思える脚本の優しさ。そして死の際にいる寿桂尼様に雅楽を聞かせてやるというこの雅さよ…へっぽこだけど…今川の武家らしくない文化力がとても気になる。今川の大河とかあったら見たい。めっちゃ地味で視聴率伸びなそう。久々の義元と龍王のNew収録シーンに涙。本当に雅なおうちだったんだよなぁ…。

直虎と寿桂尼様のご対面。これまで井伊にとっては「駿府への呼び出し」はそのまま「当主の死の危機」だったけど、今回ようやく言葉通りの気楽?さで出向けるようになっていて、着々とこれまで地盤を固めてきたんだなってわかって感慨深い。寿桂尼様と直虎の対峙シーンは、冒頭の信玄との対峙に勝るとも劣らぬ迫力だったー。ただただ気力でぶつかるしかなかった前回(第15回)と比べて、直虎はずいぶん落ち着いているし、寿桂尼様は穏やかなお顔をなさっているし、たった三年のうちで変わったもの、それでも変わらないものがあるんだなぁと実感する。そして直親の話題に及び、直虎が当時の今川の仕打ちを「お家のためにはそういう決断をしなければならないこともある」と受け入れると、寿桂尼様から「おぬしのような娘が欲しかった」という最大級の褒め言葉が…!涙ながらに「今後も今川をなにとぞ」と請われて、感極まって「ご心配なさらぬよう」と応える直虎。でも政次とは着々と裏切る算段を進めていて、その覚悟に再び直虎の成長を感じるのであった。

と直虎の成長を上から目線で見ていたところでいきなり回収されるサブタイトルの伏線!覚えが悪くなったと寿桂尼様が書き付けていた帳面には滅ぼすべき領主名が…!という見事な構成に唸った。そして直虎とのやり取り全てを思い返して戦慄。寿桂尼様にとっては、直虎はかわいい愛弟子のようなもの。その実力と覚悟を認めたからこそ、愛しく頼もしく想いながら、それ故に滅ぼさざるを得ないという判断になるこの矛盾。「衰えた主家に義理立てなどしない」相手だと認められた直虎の成長が嬉しいような、さらには直虎の行く末まで暗示しているようで怖いような。直虎の覚悟を「自分と同じ」と寿桂尼様が言ったってことは、つまり直虎にも寿桂尼様と同じような決断が求められる日も来ると…あー怖いよー。主人公の成長が嬉しいのに、それがこんなにも不吉だなんて…!

 

おんな城主直虎 第27回「気賀を我が手に」

中村屋始め気賀の商人衆が「どうせ誰かが治めなければならないなら、せめて井伊に」と言ってくる展開。そこで一度「一晩考えさせてくれ」って言えるのが直虎の成長だよなぁ。昔だったら絶対にその場で「うむ!」って承諾して、後で政次に嫌味言われる展開だったでしょ。そして案の定政次との深夜の囲碁!もうすっかり「助言を求めるなら政次」っていう関係になっていて、政次もそういう状況を受け入れてる…それにしても、この囲碁の開催はどうやって決まるんだろうか。もう既に定期的にやる時刻とかが決まっているんだろうか。今はもう当たり前になってるっぽいけど、最初にどういう経緯で始まったのかとか、その後二人にとって当たり前になる過程とか考えるとキュンキュンするなぁ~!

「どうするのがいいと思う?」と素直に、本当に何の衒いもなく尋ねる直虎がねー。あのギャンギャン喚いてた直虎がねー。素直すぎるというか、むしろ甘えて頼ってすらいるんだよなー。政次にとってはこの上なく充実して幸せな日々だよなー。そして、度々描かれる政次が井戸で直親に呼びかける描写。ある時あたりから意図的に直虎は直親に対して完全に吹っ切れていて、過去を引きずっているのは政次だけというのがまたシビアというかなんというか。井戸で手を合わせる政次を見て、直虎が全く直親について触れないのも面白い。

今回は瀬戸方久の見せ場たっぷりだった!方久が直虎に仕えながらも、その根底にあるのは直虎をどう利用するかっていう本心なのがわかりすぎるあの表情な~。直虎を好意的に思っているし、積極的に陥れようとは思っていないだろうけど、必要があれば裏切り待ったなしなんだろうなって普通に納得できるキャラ設定すごいよな。関口を取り込む時のあの目!目!ムロツヨシすげー。コエー。

龍雲丸の柳楽優弥の表情がすごいのな!あの甘酸っぱくて照れたような、でもまっすぐに直虎を見るあの表情な!高橋一生の顔芸も本当に毎回素晴らしいんだけど、私はここ最近の柳楽君の芸達者っぷりに本当に心底感動している。これでまだ27歳なんだよなぁ…27歳…!これからもしかして大河常連になったりする?しちゃう?龍雲丸みたいな破天荒なキャラもいいけど、押さえた演技をさせて渋い役どころとかも見てみたいよ~。本当にこれからが楽しみ。

ついにヤケになって現実逃避しだす氏真君。白塗りを見た瞬間、お前は北条氏政か!それダメなフラグ!って去年の高嶋政伸がよぎったけど、後でツイッター見たらみんなそう思ったらしくて笑った。氏真君のぼんぼんっぷりは本当にダメ可愛い。こんな状況になってまで妻のために香炉探してるとかどんだけお坊ちゃんなんだ…!そして大沢&関口を方久の力で凋落して、とうとう井伊が気賀をゲット。正直トントン拍子すぎる気もしたけど、来週からの天災武田を考えると、破壊されるためのトントン拍子だったのかなって…そして政次の幸せな日々もそろそろ終わりが見えてきたということか…(涙)

・関口殿のあの大げさなまでの匂いフェチっぷりは何かの伏線なのか。
・テーブルクロス芸する龍雲丸。引っ張った後さり気なく船直すのお茶目可愛い。
・龍雲党の船が清盛の宋船で滾った。

正解するカド 視聴後感想

途中までは手放しですっごい面白かったんだけど、最後の3話くらいが自分の中でうまく咀嚼できなくて、モヤモヤが最後まで残った作品だった。

以下、完全ネタバレ感想。

 

 

 

 

 

一番モヤモヤしているのは、天才交渉人たる真道にとって、最後のザシュニナとの交渉は成功なのか?ってところなんだよな。なんとか発生装置を武器ではなく交渉の道具と考える、ってセリフや、交渉人は両方win-winを目指すっていうこれまでの言動から、最終的にザシュニナと決別するもザシュニナは地球を含む宇宙について納得して不干渉を選ぶ(それがザシュニナにとってのwinでもあるという気付き=サプライズ)という着地点を目指すんだと勝手に思っていたので、ザシュニナを殺して異方の干渉が排除されめでたしめでたし、というのは、自分だけがwinになってない?それ本当に交渉が成功したって言えるの?騙しうちってやつでは?という残念な気持ちになってしまった。作者側にとっては、交渉して両方に満足を、というのはそれほど重要なテーマじゃなかったってことなのかな。ザシュニナは驚きたがっている、サプライズを贈りたいっていう真道の考え方にはちょっと感動してたので、結果的にそのサプライズは「アレ」だったわけで、それは…「驚き」じゃなくて「呆れ」というか…なんというかいろいろと残念だった。

途中6回くらいで真道のお母さんが「異方存在は子供を作らないのか」みたいなこと言ってて、それが確かに伏線で回収されたことになるんだけど、少なくとも私は「そういう方向での回収を望んでいたわけじゃないんだ」と強く主張したかった。人間と異方存在の子孫が、人間も異方存在も越えるさらに上位次元の存在となって、その越えた存在としてさらに上位から異方存在をねじ伏せて消し去るという結論に見えてしまって、それはむしろ一番やってはいけない方向性だったのでは…?って思ったんだけどどうなんだろう。下位次元からでも上位次元に対してアクセス可能で、下位次元も上位次元(の認識)を変えうるのだ、という話が見たかったんだけどな。あるいは子供が解決策となるなら、テンプレだけど異方と宇宙の相互理解のための架け橋であって欲しかった。「悪い人ではなかった」とか言わせてたけど、それを排除したあなたが言う?みたいな気持ちに。あえてそうせずに破壊的な存在として描くことに意味があった(それが狙いだった)と言われたら、理解できないから黙るしかないけども。

ただのゲスパーなんだけど、物語の最初の時点での世界設定とか基本テーマとかが、最後の数回ですり替えられたような気がしてしまった。地上波アニメという制約(という考え方が正しいのかわからないけど)がなかったら、どういう結末だったのか、今と違う構想があったのなら知りたいと思った。ただ、なんて言うか…私がエンタメ作品に求めるカタルシスっぽいものが、この作者(野崎まど氏)から得られることはなさそうだというのはヒシヒシと感じたので、今後そっとブラックリストにぶち込もうと思う。途中までの謎の提示、その解釈も途中まではすごくすごーく好みで、期待が大きすぎたので落差が激しかった。やっぱり、最後のオチに共感出来ない作家は近づけない。後味が悪いからダメなんじゃない。後味が悪いことを作者と共有出来るなら全然ありだと思う。だけどこの作品からは作者との共有感は感じられなかった。

気になってるんだけど、真道と沙羅花って対ザシュニナのためだけに子供を作ったの?そして二人はユキカを育ててないってこと?16年間たった一人で花森が育てて来たの?マジで?沙羅花は自分が親の愛情や自然の中で育ったからこそ自然主義になったんじゃないの?それでいて自分の娘には隔絶空間の中で16年間たった一人だけを相手に育つような環境で良しとしたの?それはユキカが高次元の存在だから許されるってこと?花森の幸せとかユキカの人間としての成長とか、そういうのは全部この設定(サプライズ)に不都合だから無かったことにしますってことなの?

ねぇ、本当にこれが望んだサプライズだったの?誰が誰を驚かせるための?それってもしかしてただ単に「作者」が「視聴者」の予測がつかない結末を見せたいというエゴってだけなんじゃないの?これまで見ていた視聴者が何を考え、何を望むのかをあえて外すことだけを狙ったんじゃないの?それってサプライズなの?上位存在(物語の制作者)として下位存在(物語の読者・視聴者)を弄んでいたぶったってだけじゃないの?結局世の中って言うのはそういうものなんだってこと言いたかったの?それってすごく視聴者を下に見てる下品な楽しみ方じゃない??

物語が終わった後もこうやっていろいろと(作者の意図や望ましい結論などを)考えてしまうという意味で、記憶に残る作品ではあると思うし、そういう部分を挑戦的で面白い作品だって見ることはもちろんできる。面白い作品だったんだと結論づけてもいい。ただ、一つ明確なのは私はこの話のオチの付け方が下品だと思ったし、二度とこの作者の作品を手に取りたくない。読者・視聴者を、ただ驚かせて期待を外して嘲笑うための対象としてしか見ていないように感じられて、そういう作者の作品にこれ以上触れる必要を感じない。でも、怒りや拒絶というマイナスであっても強い感情を湧き起こさせるのは、確かにこの作品が面白いってことなのかもしれない。それでいい、それが狙いだというなら、やっぱりただ黙って決別するしかないなぁ。

本当に、本当に最初の方は好きだったのにな…。得に真道の「交渉人」としてのwin-winの考え方や信念にはハッとさせられたし、異方からもたらされたワムやサンサという装置(?)に触れた時、人類はいかなる行動を取るか?という思考実験としては、ものすごく可能性のある物語だと思ったのに、その行き着く先がスーパーサイヤ人理論…心底ガッカリ。そして全ての行き着く先はワムもサンサも機動しなくなるというリセット。最後になってめんどくさい部分を捨てたなって思われても仕方ないと思う。シン・ゴジラではちゃんとあの世界をそのまま、あの凍結されたゴジラを抱えたまま生きていこうとしてた。そういう覚悟がこの制作スタッフにはなかったってことだなって思った。

結局、この作品的には「正解」は多分「途中だと自覚すること」なんだと感じたんだけど、それってそれほど感銘を受ける「正解」だろうか?人類が未完であることはもちろん当たり前だし、「正解されたい」と何度も言っていたザシュニナが実は「間違っていた」というのはわかりやすい構成だと思うんだけど、その結果明かされる「正解」がこんなショボい内容であるとか誰が思ったであろうか…。あーもう、本当にいろいろとガッカリだよ!

以下、どうでもいい個人の妄想。

11話まで見た時点で不穏な気配は感じていたのだけど、それでも希望は捨ててなかった。その後たまたま人工知能の番組を見て、異方というのは人工知能のメタファーなのでは?という仮説を思いつき、自分の中ですごく納得いく妄想だったので、それを越えるものを見たかったから。

異方=人工知能説とは。人工知能は人類が作り出したもので、一般的には人類が管理統括すべきものと考えられている。けれど、現在人工知能の進化はめざましいものがあり、人工知能の作者も、人工知能が結論を導き出す過程を理解できないまでになりつつある。このまま人工知能が進化するとして、人工知能人工知能を作り出せるまでに発達すると、おそらく人類は人工知能を管理統括することが出来なくなる。そうやって独自に発達し続けて「処理する情報を求め続ける」存在となったものが異方なんじゃないかと。つまり、本来は人類と同じ次元の存在であり、人類に作られたはずの人工知能が、自らの進化で高次元存在であると錯覚して人類にアクセスしてきた、というのが今回のカド出現事件(?)であり、その疑似人格がザシュニナだったのではないかという妄想。

ザシュニナが人類の文学に触れて、徐々に「人間らしく」なっていくのは、人工知能が感情や人格を得つつあるということで、人工知能が求めた「処理しきれない情報量」というのはつまり「感情」だった。だから、交渉によってそのことを真道が気付かせてあげて、ザシュニナが自ら「異方=高次元」という間違いを自覚して修正することでめでたしめでたし…じゃダメだったんだろうか。その上で、ザシュニナは人工知能の疑似人格として電脳次元で、真道は人類として地球で生きる。時々会いに行くよ、ヤク…じゃなくてVRマシンに乗って。じゃダメだったんだろうか。そういう物語が見たかった…と今書き出しながら思った。結局、そういう視聴者の期待をわかっていて煽りつつ、その上であの結末で「じゃーん!思ったとおりに行くと思った?残念でした!」ってやりたかっただけなんだよな、きっと。醜悪すぎる。醜悪さに触れて何かを読み取れって意味ならやはり拒絶を選ぶしかない。

でもまぁ、こうやって感想を書き殴ろうという強い感情を揺さぶられたのは確かなので、やっぱり意味のある作品なんと思う。嫌いだけどな!
見て良かったかと問われたら、どういう作品を嫌いだと思うかという自分の嗜好に気づけたので良かったのかな。嫌いだけどな!

おんな城主直虎 第26回「誰がために城はある」

今回のサブタイは内容をダイレクトに示してくれてありがたい!原作のヘミングウェイの方は未読なのでパロ成分があるかは謎。気賀に城が作られることになり、それによって気賀の商人たちの間でも対立が起こる。それを直虎が仲裁し、めでたしめでたし。そして方久が金の匂いをかぎつけ、気賀に入る城主が井伊となることは出来ないか?と言い出す。という展開。

気賀が気がかりで仕方ない直虎に対して「お前はどこの領主なのだ!?」と声を荒げる政次、控えめに言ってサイコーだった。あーやって突然鶴に戻るのズルいよね!(喜)そして言ってることがまたド正論でさぁ。龍雲丸のことをいちいち気にするけど、この前の働きはまず六左や方久の尽力があってのこと。龍雲丸だけを気にかけるのはいかがなものか。まさしく正論なんだけど、見ている人間には嫉妬にも見えるこのシーンの多重性がムフフって感じ。少なくとも直虎の執着の相手が龍雲丸じゃなければここまで声を荒げたりはしないのかなぁって。そして南渓和尚に泣き言を言えちゃうあたりが、政次の今現在の恵まれてる環境を表してる。たった一人で耐えてる政次はもういないんだな。いやー本当に報われてくれて嬉しい。後はこの幸せな日々が消えてしまうのを待つのみか…(涙)

相変わらず面倒ごとに首を突っ込みたがる直虎だけど、もはや「直虎ならうまくまとめてしまうかもしれない」とすら思わせる貫禄っぷり。あるいは「自分なら何とか出来るかも」という自信も見せて、確実な成長を感じさせる。商人たちが一応直虎を立てるのは、領主ということもあるのだろうけど、これまで積み上げてきた実績もあるんだろうな。「なにか突拍子もないことをやる人だから」って思われて一目置かれることの面倒さと利点。ほんと成長してるよなぁ。

そして商人たちをうまく言いくるめて(笑)うまくまとまりかけた時の龍雲丸の「ちがーう!」というちゃぶ台返し。ここで龍雲丸がヤケになってますます反発するんじゃなく、出て行くっていう矛の収め方なのが絶妙だった。下手にトラブルを大きくしないのに緊張感を保ち続けられる脚本の上手さよ。龍雲丸のわだかまりを解きたい直虎だけど、その場ではわかり合えないままなのもいい。誰も彼も、簡単には変われないしわかり合えない。けれど、他人の言葉は心に残ったまま、その後の決定に微妙に影響を及ぼしていく。直虎のこれからの決定には龍雲丸の「アンタだったらそういう城主になれるのか」という問いかけが、龍雲丸の決定には直虎の「城が悪いわけではない。そこに居る人次第だ」という真理が、ずっとどこかに刺さったままなんだろうなって。

今週の直之は相変わらず良かった。直虎と一蓮托生、申し開きが受け入れられないなら斬りつけるまでっていう覚悟の仕方がカッコいいし、龍雲丸に対して「斬りたくないから帰れ」って言うシーンも良かった。普段ギャンギャン喚いてる直之だけど、いざという時にあの緩急を付けてくるから、ギャンギャン喚くのは多分自分の役割だって思ってやってる部分も大きいのかな。いつも思うけど、直虎と変わらない(むしろ直虎の方が大きい)背丈でちょこちょこと直虎の側についてる姿が本当に可愛いし忠犬だなって…はー直之可愛い!

寿桂尼さまお久しぶり!お元気そう(?)で何より。でもやっぱり弱ってる演技になってるのすごいな。
・高瀬に聞かせたくない新婚の噂話ってなんだよwww
中村屋本田博太郎さんサイコー!本心の読めない不気味な商人の印象だったのが今回一気にお茶目路線をあらわにwww