麒麟がくる 第4回「尾張潜入指令」

先週は見事ひょうたん打ち抜いてたけど、今週は10回連続で的外してるらしい。光秀が「おっかしいなぁ?」みたいに首傾げてるの可愛い。伝吾が笑うのに「いーっ」て顔してるのも可愛い。ハセヒロさん可愛い。伝吾は徳重聡さんで、私の中では八重の桜のやたら声に色気のある大久保利通の印象が強い。今年は最初から最後まで光秀に付き従うんだろうか? 第一回から槍?の立ち回りカッコよかったので楽しみ。

東庵VS道三。腹の探り合い、狸と狐の化かし合い。東庵の頭ぺしっ!道三の肩ぺしっ!わっはっは~!が怖かったw 東庵が「医者は守秘義務あるから患者のこと喋らないよ」って言った時、一旦(形だけでも)道三は「そこを曲げて頼みたい」って頭下げるんだよな。こういうとこが道三が成り上がれた理由なのかなぁと思うなど。先週の頼芸に対する態度もそうだけど、頭を下げてみせること自体は全然気にしてない感じ。まぁ、頭下げるのはタダだからな…。

道三が「首を跳ねよ!」って激昂してみせるのも、東庵が渋々「引き受けましょう」と受諾するのも、形式美的というか、道三と東庵は脚本なき小芝居を即興でやってるだけって感じなのが面白かった。相手がどこまで譲歩するか、どこから本気で危ういか、探り合い&化かし合いを楽しんでやってる感がある。東庵が引き受ける条件として借金の肩代わりを要望した時、道三の口がピクピクって動くんだけど、それが怒りじゃなくて面白がってるってわかって感動してしまった。損得勘定で情報を売ろうとする東庵に対して、この時道三なりの信頼が芽生えたのかも。一話で道三が光秀に価値を見出したように、道三の人を見る目は独特のタイミングで発揮されるっぽい。ただ、せっかく芽生えた信頼を相手に上手く伝えて相互理解が出来れば、もっといい主君になるんだろうけどなぁ。

道三は光秀に交渉させる時も「従わなくば娘を殺すと言え」ってアドバイスしてて、殺せとは言ってない。もちろん実際に裏切ったら許す気はないかもしれないけど、人質は殺したら価値がなくなってしまうことはわかっているし、実際に情報だけもたらしたら東庵も駒も光秀に「好きにしていい」と言っているし、ちゃんと理にかなった扱いをしているのが見ていて気持ち良い。

鉄砲について気にしている道三。先週高政が「興味が無いから自分と光秀に任せた」と言っていたけど、道三の口調はめっちゃ期待をかけているっぽい感じ。これはもしかしなくても、道三は高政のことも内心ちゃんと認めているのでは…? 言葉が足りない、態度がわかりにくいがために親子がすれ違っているヤツでは…? そうだとしたらエグい描き方するな…とこの先に思いを馳せる。

東庵VS信秀。道三が信秀の体調を探っていることをすぐに明かして堂々と情報収集するあたりが、東庵が百戦錬磨で世慣れてると感じるところ。隠れてコソコソ秘密を探ってるんじゃなくて、堂々と情報収集に来てるんですよって建前を全面に押し出して無理矢理押し通るスタイルはおそらくこの時代最強。まぁ相手次第ではあるけど、東庵にとっては道三も信秀もその建前に乗ってくる人物だと判断したってことだろう。やり過ぎるとすぐ命の危険に直結しそうな綱渡りだけど、そこはそれ、東庵先生は生粋のギャンブラーだからね…。

信秀は傍目には元気に見えるけど、東庵の見立てでは矢の傷が元でかなり末期的な状況らしい。蹴鞠のあとにやたら汗をかいていた描写がそれだと思うのだけど、この時点で東庵の見立てが合っていると確信出来る描写はなかったように思うので、どう受け止めるべきなのか迷った。メモ書きの単語と縁側でのわずかな会話であれだけの内容を正しく読み解く光秀の才覚も表現している…のかな。

光秀、絶体絶命のピンチからの脱出。織田の者に捕らえられそうになった時に助けてくれた農民(では明らかになかった。忍びの者?)は何者なんだろう。タイミング的に菊丸の仲間としか思えなかったけど、今のところ曖昧にごまかしてたしなぁ。菊丸と再び合流して逃げる時、さり気なく菊丸のカゴを押してあげる光秀の仕草にキュンとした。そしてあれだけ全力で刃向かったら、織田家にいる東庵先生は大丈夫なんだろうか。「えぇっ!? あの薬草売り、怪しいヤツだったの!? 全然気づかなかった!」ってあのウソっぽい大げさな演技ですっとぼける東庵先生がめちゃめちゃリアルに思い浮かぶ。

チビ竹千代! か~わいい~! 「ちちうえはきらいじゃ!」とかか~わ~い~い~! 「噛まずに口に含んでいると気が紛れますよ」って言われてるのに、速攻でお口モグモグしちゃうのもかわいい。口に入ってるとセリフ言いにくいもんね。和んだ。あとハセヒロさんの光秀が薬草売りに見えなすぎて笑う。「物売りのフリをしている(でも隠せてない)演技」ってかなり難易度高そうなので、やっぱり役者さんはスゴい。

そしてまさかこんなところで光秀と家康が出会ってる設定入れてくるとは。太平の世に麒麟がくるとすれば、麒麟を連れてくるのは徳川幕府を開くこの家康なわけで、でも光秀が信長を本能寺で討った後に死ぬとしたら、当然徳川の世を見てはいないわけで、そうなると光秀は麒麟がくるのを見ることは出来なかったという結果になるわけで。そういう無常観で終わらせるのは(美しいと思う一方で)虚しくもあって、少しでもハッピーに終わらせるために光秀=天海説来る?来ちゃう!?と第一回を見た時にうっすら思ったことを思い出した。あまりにロマンチシズムの極みなのでまずないだろうと思ってたけど、これはワンチャン…いや、やっぱないだろうなぁ。でも、最後まで視聴者がその可能性を考えずにいられない展開にしてくるのかも。ラストが今から楽しみだ~。

駒ちゃんと光秀のシーン。京に帰してあげられるのが嬉しい(というより安堵した)光秀と、京に返されると感じて寂しい駒ちゃん。ここもなぁ。駒ちゃんが「わかります? そういうの」とぷりぷり怒ってたけど(可愛かった)、駒ちゃん自身が「そういうの」が何なのかをわかっているのかという疑問が。恋…というか憧れ成分が強いのかなぁと思うんだけど、駒ちゃん自身自分の気持ちにあまり自覚的でないように見えるからこのセリフの意味も曖昧だし、この恋心?がストーリーにどう作用するのかが想像つかなすぎて落ち着かない。うーん、わからん!

そして唐突に放り込まれたパワーワード「本能寺」。この時代、本能寺で鉄砲の製造が行われていたっていうのは最新の研究成果を踏まえたエピソードなんだろうか。そう言えば直虎でも井伊谷で鉄砲作るとかなんとか言ってたっけ。こうやって僧侶がわざわざ道三に情報を売りに来るのを見ていると、この時代の医者や僧侶はそういう「情報をまわす」ことが役割の一つなんだろうなぁって思う。

光秀の「鉄砲を誰が作っているのか」という疑問に対し、思うところのありそうな道三の表情。まだ理想だけが高くてどうにもやることが地に着いていない感じのする青臭い光秀が、世の中の事象について「誰のせいで」「何の思惑で」そうなっているのかを考え始めたという描写でもあり、それを興味深く見定めている道三という描写でもあるのかな。光秀の成長とも見えて、なんとも面白い~。

麒麟がくる 第3回「美濃の国」

全体的に小粒で隙間回だった印象。その中でも斎藤道三インパクトの強さは健在。しばらくは道三が物語を引っ張る感じなのかもな~。

先週ラストで「面白や~」と歌を歌いながら娘婿に毒を盛るという鬼畜外道な行為をしてのけた道三は、今週毒殺した娘婿の実家に挨拶に行って「お前が殺したんだって?」と聞かれた時明らかにすっとぼけた顔で「わたくしが?」と聞き返すという、外道としてパーフェクトな対応をしていた。この場合の「外道」はこの時代の褒め言葉だと思って使っている。外道でなければ商人から守護代まで上り詰めるなんて無理だろうし。頼芸がまた気楽に鷹の絵とか描いてるように見せかけて、その実道三に対して腹にすえかねる想いがあるということを表現する演出が素晴らしかった。尾美としのりさんの演技がすっごい絶妙なんだよな。鷹の絵の話を導入に、土岐家が守護として実権をほぼ持っていない現状を諦めて受け入れている雰囲気をやんわりと見せつつ、何気なく口にする「殺したな?」って言葉が持つ凄みとか、めちゃめちゃゾクゾクした。鷹の絵というのは多分守護という身分そのものの隠喩かな。こういう、読み取れる情報や推測出来る設定が多々ある、でもなんとなくふんわりと雰囲気だけ見ていても良いシーンというのは、本当に大河の面白さの一つだと思う。

頼芸に対して態度は一貫して家臣の立場を崩さないのに、目力と口調でゴリゴリと自分の優位性を示してくる道三がさすが。ある意味家臣としての態度そのものが煽り芸にすら見えてくるからすごい。そうでなければ成り上がることは難しいのだろうし、一方でそういう父親の態度を受け入れがたい息子の高政との対比も興味深かった。道三の態度にドン引きしている高政、ホント素直なお坊ちゃんだよな~。

高政はこれまでもわずかな描写の中で、父親に対する屈折した想いがあるという描かれ方をしてたけど、一人息子の跡継ぎなのに妾の子であるから自分を認めていないのだという思いが昔からあったんだろう。これまでは頼りない息子っぽい描かれ方だった気がするけど、今回は光秀に対して父親の守護代として至らぬ点についてかなり冷静に指摘してて、「おっ!やるやん!」と今後が楽しみになった。ただ、頼芸の「息子と思うて頼りにしている」の言葉にまんまと乗せられているあたり、基本が真面目で人が良く理想主義なんだろうなとも思ったし、深芳野と道三の息子にしては素直過ぎる育ち方をしたなぁという気も。いや、道三じゃなくて頼芸の息子なの…か? 今の時点では(頼芸の息子であると思わせる演出になってたと思うけど)どちらとも解釈できるし、多分今後の道三と高政の対立への伏線にもなってるんだろうな。それにしても道三はどう見ても母子の(父親が誰かという)会話を聞いていて、ちょっと面白がっているようにしか見えない。こういう、相手の困惑に気付いていながらそれを一人で面白がって、相互理解の努力を全くしないところが今後に響いてきそう。

帰蝶。出てくるたびに「撮り直したんだよな…」と思ってしまうのをやめたい。あと川口春奈さんすごい演技が固くて緊張してるように見えるんだけど、帰蝶の今の(話の中の)状況と上手く重なって、演技の緊張がキャラとしての張り詰めた心境に見えて、すごくいい感じに働いている気がする。直前の代役、めちゃめちゃプレッシャー大きいと思うんだけど頑張って欲しい。応援してる。

今回帰蝶が子供の頃一年ほど明智荘で過ごしたことが判明。その間に光秀は51回双六勝負して全敗したエピソード。運が悪いことの伏線? このうっすらと帰蝶が光秀を気にしているっぽい描写は何か今後に活かされるのか。帰蝶も光秀も今後の伴侶が既に判明しているので、こういう描写がなぜ挟まれるのかということを考えてしまう。ぶっちゃけ、造形がハセヒロさんてだけでぽーっとなる気持ちはわからんでもない。ただ、ここまで描かれた限りでは光秀というキャラが帰蝶にとってそこまで魅力的に映るか?と考えると、ちょっと弱いかなぁという気もする。

今回、駒ちゃんからも光秀に対して憧れ的な視線が描写されていたので、この(ほのかとはいえ)ハーレム的要素って必要だから描かれてるのか、脚本家の嗜好なのか、ちょっとまだわからないので様子見。そう言えば、菊丸が光秀の歩み去る姿を見て「歩き方もいいですねぇ」って言ってて、あまりにおおざっぱな持ち上げ方で思わず笑ってしまった。歩き方ってどんだけ雑な褒め方なんだwww 駒ちゃんを助けた「大きな手のお侍さん」は光秀の父親とかそういうフラグなのかなぁ。これもどこに収束していくのか、今後の行く末を見守りたい。

尾張の話。前回の大敗からはみんなすっかり立ち直っている様子。平手政秀が遠目に西村まさ彦さんに見えて、ここにも叔父上似の武将が!?すわ伏線回収!?!?と思ったらただの目の錯覚だった。だからぁ~前回の謎演出のせいで変な先入観持っちゃったじゃないか~。ここの織田信秀と平手政秀の会話で、織田家が守護でも守護代でもないこと、そして織田家はどちらも恐れぬ実力があることが説明されてて上手いなぁって思った。あと織田家が根っからの戦国武将で戦好きなのもわかって面白い。

最後の最後で顔見せだけだったけど、今川義元片岡愛之助。なんつーか、真田丸の印象が強すぎて大谷刑部!!と思ってしまう不具合ありつつ、今年の今川義元桶狭間で勝つかも…?と思わせるオーラがすごい。今後の出番が純粋に楽しみ。

全然どうでもいい話だけど、自分の家では4K環境で録画して見てるんだけど、紀行の入りの部分、ナレーションの音が切れてるような気がするのが気になる。BSとか総合の放送では切れていないので、4Kだけ調整が間に合ってない?設定がおかしい?みたいでちょっと気になっている…。

麒麟がくる 第2回「道三の罠」

The・道三劇場、あるいは道三無双。最初から最後まで、道三の魅力たっぷりな第二回だった。

視聴者としては、道三に本木雅弘さんが配役されている時点でキーパーソンだよなっていうのはもちろんわかるんだけど、道三がどういう人物として描かれるのかは一話の時点では良くわからない部分も多かった。定説通り「食えない蝮」っぽい片鱗は見えるんだけど、珊瑚を自分で拾って戻したりちょっとお茶目な面もあって…と判断が難しいと思っていたところに、最初から最後まで道三の見所たっぷりな第2回。序盤は道三推しで行くんだな~というのが明らかになってスッキリした。

ちょっと意外だったのは、思った以上に人望が無さそうなところ。叔父上は長いものに巻かれ強い者に従う根性で仕えてそうだし、稲葉氏とかは不満を隠そうともしてない。息子ともうまく行ってなさそうな描写も多いし、実際に対面で接すると真意がわからなくて不気味な印象が強い人なのかもしれない。視聴者としてみているとめちゃめちゃお茶目なんだけどな。でも不満のある家臣を抑えつけられるだけの力があるのも確かっぽい。織田信秀に対する戦術といい、人の心を読むのが上手そう。そして読めはするけどそれに対して適切な対応ができている訳ではない(力で押さえつけることが出来ればそれで良いと思っている)という見方も出来て、そういう道三をお茶目な面も合わせて描くというのが面白い。光秀も、おそらく道三の底知れぬ実力については薄々感じているのだろうけど、人間的な部分で「やり方が好きじゃない」って言っちゃうし、態度にも出ちゃうのが青臭くて良い。今後成長していくにつれ、この関係性がどういう風に変わるのか楽しみ。

今回面白かったのが道三が光秀に「旅費として渡した金を半分返せ」って言い出すところ。交換条件として「侍大将の首二つで帳消し」というものも提示してきて、光秀が血眼で侍大将を討ち取ろうと奮戦することになるんだけど、その描き方がコミカルでめちゃめちゃ笑える一方で、借金の形に敵の首を取ろうとすること、その相手が自分の身内に似ていて躊躇することなどを盛り込んで、この時代の人の命の(今の時代と比べての相対的な)軽さと、その軽さに対する(人間の本質的な部分での)忌避感みたいなのがない交ぜになる感じが面白かった。こういう上手く言語化出来ない無常観みたいなの、時代劇の醍醐味だと思う。

その一方で、身内(叔父上)に似た武将を討ち取るというのを、西村まさ彦さん演じる敵将でやった演出は、ちょっとわかりにくかったかなぁ。一瞬「叔父上裏切ってたの!?」って思ったし(額に傷があったから違う人だというのは後から考えたらわかるんだけど、最初見た時はちょっと混乱した)、NHKの役者探索能力を駆使したら西村まさ彦さんに雰囲気が似ている役者なんてすぐに探してこれそうなのにあえて同じ役者を使うことの意味を考えてしまって、肝心の「身内に似ている人を討つことによって、戦の不毛さを感じ、侍の本懐に疑問を持つ」という大事なところが印象に残りにくかったような。ハセヒロさんのせっかくの演技の間中、アレは似ているって演出だったのか~そうか~だったらその意味は~とか頭の片隅で考え続けてしまって、演技に集中できなかったのがちょっと残念だった。

織田信秀という人物を(信長の父親という以外)何の情報もないまま見ているんだけど、うっかり道三の罠に引っかかって総攻めを許しちゃうあたりとか、落ち延びた後の「家に帰って、寝るかぁ」の言い方とか、好感度爆上げ方向の人物に振ってきたので、今後の活躍がめちゃめちゃ楽しみ。信長とどう絡んでくるのかも期待しかない。高橋克典さんはこれは初大河と聞いてびっくり。意外と出てそうなイメージあったのに。なんか時代劇が似合うなぁと思ってたんだけど、経歴見る限りそれほど時代劇やってないのな…今後はNHKの時代劇常連になりそうな気も。それにしても弓矢が一斉に空から落ちてくるシーン、何度見ても怖いな。私がこの戦法の映像を見たのは、確か「平清盛」で源義朝と清盛の一騎打ち(なぜ一騎討ちだったのかいまだに謎)シーンだったような気がするけど、あんな風に矢がすごい勢いで降ってくるの恐怖しかない。そして信秀の弟めっちゃ転がって行ったけど戦士したんだな…立ちション中(ではないか)に矢に射られて転がり落ちて戦死…無念。

今回は織田の黄色の幟が印象的な使われ方だった。勢いのある時は画面中に黄色の旗がはためいて、敗色が濃くなった時は地面にうち捨てられ、踏みつけにされ、汚れて川に流される。川底から空を見上げる(とうち捨てられた黄色い旗が流れて死んだ武将が沈んでいく)構図が印象的だった。カメラワークが(別に独創的とかではなく、普通にある演出の一つなんだとは思うが)印象的で面白かった。

道三VS土岐頼純。土岐家が美濃の守護であり、齋藤家は守護代として成り上がったという背景が(私の中で)ここで明瞭になった。帰蝶は政略結婚で頼純に嫁いでおり、世継ぎを産んで道三の意のままになる守護を立てることが目的だったんだろうなぁ。今回思い切りよく毒殺という手段に訴えてきたのは頼純側が道三の排除を企てたからであり、道三自身は(自分の邪魔をしない限りは)積極的に守護としての土岐家を取りつぶそうとはしていないように見えた。まぁ、頼純にはそうは思えなかったんだろうけど…。席を立とうとする頼純に「頼純! …さま(めっちゃ形式的に)」って恫喝したのがハイライトだったな~。二人の力関係があのわずかなセリフで表現され尽くしてしまうというのがお見事。道三は一貫して冷静沈着で態度を変えないのがまた怖かった。

毒入り茶については、もうどう見ても毒入ってんだろっていう状況で、以外と躊躇なく頼純が飲んでるので笑ってしまった。まさかこんなわかりやすく毒殺とかしないだろうって楽観的に考えてしまったのか、道三という男をどこまでも軽んじてしまう程度のコモノだったという描写でもあるのか。いや、ちょっとは疑わない? 疑ったとしても飲まずに済ます道があったとは思えないけど、ある程度覚悟を決めて飲むのと、うっかり飲んだら毒入りだったのでは、その後の名誉とかにも影響するのでは…? あと謀反の手紙をそのまま証拠として押さえられるとか危機管理能力が低すぎるでしょ。押さえられてもしらばっくれてごまかす程度の気概を見せて欲しい。まぁそういう所が出来なかったのが頼純が毒殺された理由なんだろうけども。

帰蝶が頼純の行動を把握してたっぽいのが切ないなぁ。別に夫婦の愛情があったわけでもなさそうだけど、自分の結婚がなんの実も結ばずにこんな結果で終わるのは虚しかろう。それでなくても帰蝶は利発で聡明で、自分の使命に誇りを持っていそうだしな。あと、帰蝶は今回初めて光秀と顔合わせだったけど、なんか思わせぶりな表情なのが気になる。幼なじみで初恋設定のテンプレートなのか?

戦の様子が映像で描写されるのが興味深かった。アバンで町人が着々と戦支度する図とか、堀とか柵とかを急ごしらえで作ったのを上空からドローン撮影した図とか、面白い映像が盛りだくさんだった。弓矢で一斉射撃とか、その時板状の盾を上に構えるのとか、撤退の時の光秀たちの動きとか、投石とか火俵を梯からゴロゴロ転がすのとか、とにかくこの時代の戦を最新研究結果を踏まえて映像にするんだ感に溢れていて、なんだかほっこりする。火俵から兵士に火が燃え移ってたのは、ちょっと火のまわりが早すぎる気はしたけども! あとあんなにコントみたいに落とし穴に落ちるのか謎…面白かったけど…。

以上、道三の魅力たっぷりな第2回だった。あ~一年間めちゃめちゃ楽しみ。

麒麟がくる 第1回「光秀、西へ」

ついに始まった~~!! 今調べてみたら、初報が出たのは2018年4月…だったのかな? 正統派(というんだろうか)大河脚本家であると評判の池端俊策さんがメイン脚本をやるらしいとのと、主演がハセヒロさんという情報を見て「ガチガチにド安定な路線で来たな!?」って思ったのを覚えている。放送直前の年末に主要キャスト交代というアクシデントがあった時も、最終的には上手く仕上げてくれるだろうっていう謎の信頼があった。だから2週間遅れの開始も全然苦にならなかった。絶対面白いだろうと思っていた大河の初回が、想像通りに面白いと思えるのって、なんて幸せなことなんだろう。

大河のために…というか実際にはたまたまだけど、4K環境が整ったので、今年の大河は4Kで視聴。まさか日曜朝から大河が見られるとは…(実際には録画で見てる)。私は映像オタクではないので、正直4Kの映像の良さ(これまでとの違い)はいまいちわからなかったのだけど、印象的なのは映像の色彩が時代劇らしからぬカラフルさだったことと、山や稲穂などの緑が不自然なまでの彩度だったことかな。カラフルな着物はある程度の時代考証してる上でのチャレンジなのかなと思って好意的に見た。実際にその時代にカラフルだったかどうかはどっちでも良く、その時代にその色が出せると検証した上で、そういう華やかな原色の溢れた世界だったかもしれないと想像して創造する挑戦には敬意を表したい。清盛に出てきた真紅の禿の装束とかに夢とロマンを感じる属性なので、同じ路線のロマンを感じた。ただ、背景の稲の緑の彩度が飛んでた(ように見えた)のはちょっと気になった。4Kカメラの問題か、その後の調整の問題か、あるいは実際に見ればあの緑は心地よいのに、カメラを通すと彩度が高すぎると感じてしまうのか…。確か8Kは目で見るそのままの映像を残せるとかなんとか。機材の性能が上がれば上がるほど、これまでの映像に慣れた人間の方が、その映像を正しく受診出来る機能にまだ対応できていないのかもしれない。そのうち見慣れるのかもしれないけど、もうちょっと落ち着いた黄緑にして欲しいかも…目がチカチカする。

久々に子供時代のない、第一話から主演ハセヒロさんの大河。子役時代が無いのは真田丸以来かな? 真田丸の時も一話で「もう絶対一年間面白い!勝ったも同然!」て思ったけど、今回も同様の安心感のある第一話だった。最近すっかりおなじみのドローン撮影を駆使した、広いのどかな田園風景からの、野党との襲撃チャンバラ。印象的なのは敵の頭領の禍々しさ。どことなく鎮西八郎為朝みがあったような(頬マスクしてるだけとも言う)。あと鉄砲を構えても光秀が全く動じなかったのが「光秀が鉄砲の存在を知らなかったから」という演出に気付いた瞬間、ひっくり返って感動した。なるほど…そういう見せ方があるのか…。そして、その後すぐに自分の知らない武器があること、自分の生きている世界が狭いこと、今後どうすればいいか、まで一直線に思考が進む光秀の聡明さまで描くのが上手いよな~。その途中に「黙れ小童!」って言いそうな叔父上とのやり取りが挟まれるのが面白かった。あそこで「うが~!」って奇声あげる光秀は、ちょっとハセヒロ金田一みを感じたり。いや~、オタク心を擽る初回であることよ。

本木雅弘さんの斎藤道三(利政)。これまで道三って私の中で食えないマムシ坊主ってイメージだったのだけど、見目麗しい本木雅弘さんでどうなるかと思ったら、思った以上に食えないマムシっぽさはありつつ、見目麗しい道三だったので拍手喝采した。最初の槍を振り回すシーンで荘厳さと勇猛さ、珊瑚を大玉と小玉に分けさせる細かさ、息子の至らなさを大っぴらに叱るワンマンっぷり、褒美にと投げつけた珊瑚を自分で拾って盆に戻すセコさと同時ににじむ愛嬌、自分で「利益にならないことはしない」と宣言してはばからない自己肯定感、「だから?」の一言で表現されたお茶目さ、などなど、このわずかなシーンでこの作品の道三の魅力が詰め込まれていて、演技と演出と脚本の三位一体感に惚れ惚れする。光秀のことを「なんか長い経典らしきものを2年で覚えた」という秀才逸話で思い出し、でもその時は大して興味なさげだったのに、理屈で珊瑚の数を当てた瞬間に「ほぅ」って感じで見る目が変わるのも面白かった。ただ頭が良いというだけではたいして興味を持たず、その頭の良さが「自分の利益になりそうな人材」であるとわかった瞬間にアンテナに反応するってことだよな。このシーン、本当に濃くて面白かった。

光秀の母上はなんと石川さゆりさん! 普通に演技が上手くてびっくりした。でも良く考えたら舞台で時代劇のお芝居+歌とかのステージとかありそうだし、演歌自体がキャラと心情を作って歌うものって面もあるだろうし、誰かになりきることには慣れているのかも。光秀が旅立ち前に食事をしている側で、立ち膝なのが印象的。江戸時代の女性は正座なイメージだけど、立ち膝の方が臨戦態勢の武家っぽくてカッコいい。今作では明智家は美濃源氏土岐氏の末裔って設定らしく、そういう系図とか氏の流れとかはさっぱり守備範囲外でわからないけど、この辺もそのうち伏線として回収されるのかもしれないので楽しみにしている。

光秀のミッションその1:堺で鉄砲を入手する。堺で印象深かったのは間違いなく松永久秀吉田鋼太郎さん! 私の中では真田丸で出番短かったくせに鮮明な織田信長像が強いんだけど、今回も短い出演時間で強烈すぎる印象を残してくれたな~。武器商人の宗次郎(大塚明夫さん)がまたものすごいインパクトだった。最初宗次郎見た時、吉田鋼太郎さんかと見間違えたんだけど、業界でも似てるって評判だったと後から知って、まんまと美味しいネタだったんだな~。光秀を道三の家臣と知ってあからさまに(道三に)興味津々で近寄ってくる胡散臭さがたまらんし、疑いもせずにまんまと酔い潰されちゃう光秀の初々しさよ。翌朝枕元に鉄砲を一丁残してくれたのでめっちゃ感謝してたけど、どう見てもカモられてるから! 絶対宗次郎には原価スレスレの値段しか渡さずに、がっぽりマージン取ってるんだろうなって確信出来る久秀の食えないオヤジっぷりに目が離せない。この鉄砲大丈夫? 粗悪品とかじゃないよね…?

光秀のミッションその2:京の都で名医を確保する。直前の堺との対比でますますこの時代の京の寂れ具合が際立つ。子供が当たり前のように武器を抱えている絵に地味にショックを受ける。堺正章さんの東庵先生、演技にいちいちタメがあって歌舞伎っぽいというか「演劇」っぽい感じなんだけど、多分これはこういう演出なんだよなぁ。まだちょっと違和感が。駒ちゃんが必死な顔で「先生!本音で話して!お金欲しいんでしょ!?」って言うのが斬新すぎて笑った。そっちかwww

京での火事。火の中に飛び込んで子供を助ける光秀というモチーフは、いずれ比叡山を焼いたり本能寺に火を付けたりすることへの伏線なんだろうか。そして駒ちゃんの言葉を聞いて、光秀が「麒麟は来ない」と(逆説的に)祈るように言う姿は、第一話の構成としてあまりに美しかったなぁ。つまりこの話は光秀が麒麟を探す物語になるわけで。そして、視聴者は光秀が最後に信長を倒して火を放つことを知っているわけで。平和な世を求めて麒麟を探す男が、主君を討つまでを描くってことになるんだよなぁ。どういう経緯で光秀は信長を倒す決意をするんだろう。そこに麒麟はどう絡んでくるんだろう。最終回でまた「麒麟は来ない」って言ったらどうしよう…泣いてしまう…。

そして帰蝶。しばらくは「わざわざ撮りなおしたんだよなぁ…」と思ってしまうだろうけど許されたい。川口春奈さん、気が強そうで芯があってどこか愛らしい女性を精一杯演じている感が可愛らしかった。すごい重圧だろうけど頑張って欲しい。応援したい。既にどこかに嫁いだ身で、父親が戦をするって知って馬で一人戻ってくるってとんでもない姫だけど、この時代はそういうのもありなのか、それとも帰蝶が特別なのか。今回は顔見せ程度だったけど、かなり今後ガッツリ物語に絡むみたいなので楽しみだ~。沢尻エリカさんの帰蝶も見てみたかったけど、これはもう仕方ないからなぁ。光秀とも何か思わせぶりな縁がありそうなのもワクワクする。

・OPのキャストのフォントが過去の角川映画みがあった。具体的には市川崑石坂浩二金田一っぽさというか。
・琵琶湖を渡る船は「清盛の宗船では!?」ってテンション上がった。清盛で船作っておいてよかったねぇ…!
・何度も通行料を取る比叡山、人買い&追いはぎが堂々と日中歩いてる街道、ほんに戦国の世は恐ろしい…
・駒ちゃんを助けた「大きな手の人」はそのうち回収される伏線か。
・おそらく大金をかけたであろう鉄砲を光秀がぞんざいに扱うので、根が貧乏性な私はハラハラしてしまう。

いだてん 第30回「黄金狂時代」

副題はチャップリンの映画だっけ? そういえばヒトラーの話ちょっと出てたな。

ロサンゼルスオリンピック編。こうやってドラマを見ているだけでストックホルム(日本初参加)→ベルリン(中止)→アントワープ第一次世界大戦後)→パリ(四三引退)→アムステルダム人見絹枝物語)→ロサンゼルス(水泳大国日本)と大まかなオリンピック史がちゃんと脳内で定着するからすごいな~。

水泳日本現地組の腹痛ドタバタ劇は安定のクドカン節という感じで怒濤の勢いで全てをなぎ倒していく感じに心地良く飲み込まれた。人情派だったはずの鶴さんがまーちゃんもびっくりのメダルの鬼に変貌してるのとか、一見コメディなんだけど、まーちゃんに影響されて&現地の雰囲気に飲まれて&なまじちょっと実現可能性を見てしまった結果、必要以上に結果を求めて突き進んじゃうみたいなの、戦争に突き進む非日常に飲み込まれていく一般市民の縮図みたいで笑えない部分も。

実感放送の話。バカバカしすぎるけど実話なんだろうな~。こんなとこで創作入れる必要無いもんな。陸上短距離で実際には10秒程度の競技が実感放送だと一分以上になるとか、めちゃくちゃありそうなエピソードで笑ってしまう。おそらく水桶でバシャバシャ効果音出したりするのも実話だよな。こういう本人たちが大真面目であるがゆえに面白いエピソードはいいなぁ…心穏やかに楽しめる。

オリンピックの日本招致の話。社交辞令?の「応援するよ!」って言葉にホイホイ乗せられて、いざ誘致合戦の場に乗り込んでいったら周回遅れ感たっぷりというシーン、すごい「日本っぽい」エピソード過ぎて笑えない。なんかこう、微妙にいろいろズレてる感じとか場の空気を読む能力が高いくせに最終的に読めない方向に突き進む感じとか、重いものを飲み込まされたようなゲンナリ感。これを来年オリンピックを開くというタイミングで見せてくるの、かなり(制作側が)強メンタルというかなんというか。オリンピックに向けたプロパガンダ大河かと思った時期もありました(いや、クドカン脚本という時点でプロパガンダは無いなとは思ったけどさ)…。

この時点ではローマが最有力候補であること、ヒトラーがオリンピック嫌いなのでベルリンが流れそうなこと、その結果ローマが繰り上がったら1940大会の日本開催も夢ではないこと、が嘉納先生のほんのちょっとの会話で説明される部分、すごい上手かった。こんなに近代世界史に疎い私でもすんなり事情が理解出来るというのがすごい。どれだけセリフが洗練されてるかってことだよな~。

オリンピックで勝ちまくった結果「一種目も失うな」が呪いのように選手にのしかかるの、なんて言うか人間の自己肯定感に対する麻薬のような依存心をまざまざと感じるようでかなりしんどい。今回のサブタイはこの状況を示しているという面もあるのか。勝つことが嬉しいことではなく義務になっていくの、冷静に考えたらかなりバカバカしいんだけど、そういう思考から逃れられないという状況はあるあるなんだよなぁ。あと、参加することに意義のあったはずのオリンピックが「勝つこと」にシフトしていく理由が「国民感情を上向かせること」であるのが心底恐ろしい。怖いよ~なんか全然過去の話に感じられなくて怖いよ~;;

今週の孝蔵。質屋で流れないように毎月お金を払ってくれている万朝さんに涙。そしてその万朝さんの噺を聞きに行って、楽しそうな妻の姿に奮起する孝蔵…だけど私は知ってるんだ。これは長続きしないヤツ。でもそういう生き方もいいのかもしれない。別に「心を入れ替えて努力家になりましためでたしめでたし」じゃない物語が当然のようにあり得ることを、孝蔵の生き方は私に教えてくれる。

嘉納先生の「柔道」に対する見解。「これまで誰も聞いてこなかったから話さなかった」という嘉納先生の言葉はまぁ間違いなく言い訳だと思うけど、まーちゃんがそういう「本音」を明かしやすい人間だというのはあるんだろうなと思う。まーちゃんが良くも悪くもあけっぴろげで正直かつ他人に対してたいした興味がない(ように見える)というのは秘密を明かす相手が多い理由の一つなのかもしれない。まーちゃんが面白いのは、まーちゃんがスクープを期待して下心丸出しでバー「ローズ」に入り浸ったりするとことか超俗人なのに、妙に肝心なところで功名心が引っ込む(からこそ偉い人に可愛がられる)ところだよな。これも多分フラだね、フラ。

いだてん 第29回「夢のカリフォルニア」

重ッ! 政治とスポーツどうすんのかなぁ~とか思った翌週の内容がコレって激重ッ!!! そして重さがさすがのクドカンとでも言おうか、もうどうしようもないやりきれない重さMAXで震える…これだから…これだから軽い気持ちで見られないんだよ…。

今回、前半は徹底的にまーちゃんの共感されにくさ(有り体に言えばウザさ)を煽るようなエピソードがてんこ盛りで、視聴者的なヘイトがたまりにたまったところで鶴さん(松澤一鶴)に対して「日本を明るくしたい」という目的をこっそりひっそりちょっと恥ずかしそうに語るという構成が上手いしズルい。でもズルいなぁ~って思わせつつも、このエピソードでまーちゃんを見直したりしないし、ウザさが全然解消されないところがさらに上手ズルい。完全に脚本に手玉に取られてるよなと思うのはこんな時。そして私が良質だなぁって思う脚本ってこの「手玉に取られてる感あるのに面白くてたまらない」というヤツなので、やっぱりクドカンさんは天才だと思う。私にとっての、という意味だけど。

勝っちゃん(高石勝男)のノンプレイングキャプテン案件。タイムが伸びない選手を「有終の美」的な意味合いで選手に選ぶのはなんか違うと思う派なので、まーちゃんの「タイムこそ全て」な方針は間違っていないと感じるし、多分みんなそれはわかっているのだろうけど、要は「まーちゃんの言い方やり方が納得行かない」ってことなんだろうな。思いっきり感情論であり、肝心のまーちゃんがそこをみんなに説明する気がさらさら無いので、このすれ違いは解消するのが難しいだろうな~。

若手選手が「高石さんを選手に」って鶴さんにお願いするシーン。純粋に勝っちゃんを思いやっているように見えて実は優越感が垣間見えるお願いになってしまっているという事実を突きつけてくる演出が痛い。この時、宮崎君たちには本当に悪気が無いんだよな。心から高石選手を尊敬していて、だからこそ何とか有終の美を飾って欲しくて「自分たちには次があるから」と言ってしまう、その残酷さが結構メンタルを抉ってくる。明らかに自分より実力がある(伸び盛りの)後輩に同情されて配慮されるということのしんどさを、彼らはまだ想像すら出来ないのだよな。それが「まだ子供」という言葉に集約される。同時にそれは鶴田選手や勝っちゃんらベテラン勢の「そこに居るだけで戦力」の意味をまざまざと実感させてくれる。上手い。

プールの守衛さんが日本人に対して融通のきかない対応で嫌がらせ(というほどでもない)をしていたのに、真夜中に泳ぐ勝っちゃんに気付いていながら何も言わず、むしろ選考会で応援してる姿に涙する。アメリカ人として日本選手に対する差別感情はあれど、有色人種として共感する部分もあるという複雑さ。アメリカという国の一面がさり気なく描き出されていて、スッキリと割り切れない人間の感情というものを見せつけられる。

選手選考会。勝っちゃんにレース前に思わず声をかけてしまう宮崎君は、おそらく本当に良い子なんだよなぁ。誰もが高石選手のこれまでの貢献度を熟知しており、どれだけ今回の選考会が不本意かを理解しており、だからこそ心から応援してしまう。奇跡的に良いタイムを出して代表選手になって欲しいと願ってしまう。「宮崎も応援しろ」と最初こそ怒鳴っていたまーちゃんですら最終的には戦友である勝っちゃんに無心で声援を送ってしまう。けれど奇跡は起きず、タイムは伸びない。タイム順に選手が選ばれ、自分の名前の無いまま「以上」と言われた瞬間に拍手する勝っちゃんの姿に寂しさと清々しさの両方が垣間見えて切なく胸を打つ。

ベテランスポーツ選手の葛藤という意味でもとても素晴らしい完成度の高いシーンてんこ盛りだったのだけど、その中にまーちゃんの欠点、至らなさ、危うさみたいなのがキッチリ浮き彫りになっていたのもスゴかった。今回鶴さんに話す時にたまたま勝っちゃんにも聞こえていたから納得されたけど、表から見えるまーちゃんの態度は反発を招いて選手のメンタルをダメにする可能性が高いし、選手全体の士気にも影響しかねなかったし。まーちゃん自身が他人の理解を得たい欲求が低い(ように見える)せいで、他人からの共感を得にくくて、集団の和(特に日本人はこれを重視しがち)を乱す要因になりかねないというのは、結構明確な弱点だよな。今後この強引さが不協和音を増していくシーンもあったりするのだろうか。

面白いのは、まーちゃん自身は自分が共感されることには無頓着だけど、共感の大事さはこの上なく理解してるっぽいところなんだよな。現在の日本が社会的に暗い雰囲気に包まれているからこそ、スポーツで明るい話題を提供したいというのは、日本人の共感性を無意識に察知しているからだと思うのだけど、その発露の方向性が完全にナショナリズム一直線なのがまた危ういというか悩ましいというか…。明るい話題の内容が「アメリカ恐るるに足らず」であることの恐ろしさよ。スポーツ振興のために政治を利用する方便として「スポーツを政治に利用したらいい」と言い出したはずなのに、結果的にまさしくスポーツが政治に利用され過ぎる土壌が着々と出来つつあって、これが人間の業なのか…と暗澹たる気持ちになる。まーちゃんほどの頭の良さでも、この現状の歪さを認識出来ないというのも怖いよな。

まーちゃんの無神経さと不遜な態度は(史実という面も大きいのだろうけど)脚本上の必要悪として描かれているのかなぁ。まぁそうなんだろうなぁ。日系二世の女の子に「おい女給」と呼びつけながらも、日本人が受けているであろう迫害についておそらくちゃんと把握しているんだろうなというのは「君は二世かね?」と呼びかける(まーちゃんにしては)穏やかな声色からもなんとなく察せられる。でもその気遣い(?)の方向性が「勝つことで日本人としての自己肯定感を高めよう」なの、どう考えてもヤバさしか感じなくて、なんかこう胸がザワザワする。まーちゃんの合理的な考え方に共感してしまう自分と、極端過ぎて絶対肯定したくない自分との間で揺れる。こういう主人公に対する共感を思いっきり拒絶してる作りが、なんとも据わりが悪いんだよな。どこまでも落ちついて見せてはくれないドラマだなぁ。

女子選手が親善大使としてロビー活動要員扱いな件。オリンピックの日本誘致という壮大な(…)目的の戦略としては間違っていないと思う一方で、それでいいのか…という思いも拭えない。正しいとか間違っているとかではなく、もうどうしようもなくそういう側面が出てきてしまうという事実がなんともやりきれない。嘉納先生が「ただ参加することに意義がある」と言っていたオリンピックは、得体の知れない何かを取り込みながらどんどん大きくなっていってるのだなぁ…怖い。

今週の孝蔵。なめくじ!!

いだてん 第28回「走れ大地を」

スポーツと政治編の序章…かなぁ。時代が動いている!!(それもあまり良くない方向に!)というのはわかるんだけど、まーちゃんがあのキャラで異次元方向に突き抜けているので、あまり時代のきな臭さや切実さを感じないというか、感じてもまーちゃんの勢いに押し流されてあまり印象に残らなかった気がする。ちょっと注意散漫で見てたからかもしれないけど…いつもいつも万難を排してテレビにかじりついて見られる日ばかりじゃないから…(言い訳)

政治部の記者なのに政治にほとんど興味が無く、頭の中は水泳でいっぱいで、なのになぜか高橋是清からスクープをもらったりするまーちゃん。むしろまーちゃんが水泳にしか興味が無いからこそ高橋是清は面白がってネタをくれたりしてそう。動物園で珍獣にエサをあげたくなる心理みたいなものだろうか。そしてせっかく掴んだネタを「こんな記事つまらない」と書かないまーちゃん。なかなか興味深いキャラだとは思うものの、正直いまだにまーちゃんがどういう人物なのか掴みかねている。とてつもなく頭がいいということはわかるんだけど、それを水泳競技の発展という方向に使っているせいで、頭の良さがわかりやすい方向に発露されないというか…いや、これは私自身が水泳とかオリンピックとかスポーツ振興とかに興味がないせいで、発露されていても気付かないだけかも?

まーちゃんは四三のように自分で競技をして勝とうとするわけではない。どちらかというと「日本の水泳を勝たせようとする人」だ。スポーツ振興を推進し続ける嘉納治五郎が理想論で「勝っても負けても」というのとも違う。まーちゃんははっきりと「勝たなきゃ意味が無い」と言う。でもまーちゃんの「勝たなきゃ意味がない」が本心なのか詭弁なのかはわからない。とにかく胸の内を読みにくい人物描写なので、何を考えているかさっぱりわからず、ただひたすらに受け身で情報を受け取るしかない状況なので、見ていてちょっと疲れる。まだ脳がまーちゃんに慣れてないんだろうな。いずれはオリンピック招致という目的に帰結していくのだとは思うけど、今のまーちゃんの目指すところがいまいちピンとこないのは、第二部を見ていて「めっちゃ面白いけどちょっとわかりにくい」と感じる原因の一つかなぁと思う。エピソードとか演技とか一つ一つの要素はめちゃめちゃ面白いんだけど、それ全体でどこを目指しているのかがわかりにくいというか…。

日本人女性初の金メダリストの前畑秀子さん。人見絹枝さんが初登場時からどことなく悲劇的で悲壮感のある描写だったのに対し、前畑さんのシーンは(上白石萌歌さんの演技も後押しして)どこもほんわかとしているのが印象的。もちろん前畑さんにも今後いろいろなプレッシャーが押し寄せるのだろうけど、いろいろな切り口でオリンピックの光と影を描くためには、その当事者たちのバリエーションも多様性がないと描き切れないということなのかなぁ。松澤監督に指導されている間中、監督がピンボケで鶴田さんにフォーカスが合ってた演出、めっちゃ笑った。これからの前畑さんのエピソードに期待。

第29代内閣総理大臣犬養毅五・一五事件で暗殺という歴史的事実は散々暗記したので覚えているけれど、五・一五事件というのが何だったのかは全く理解できていない人間にとってはちょっと背景がわかりにくかったかなぁ。政治色を極力排除して描いているように見えたけど、これがそういう脚本なのか、演出の過程でそうなったのか、ちょっと読めない。海軍の青年将校が何を目的に総理大臣襲撃などという暴挙に出たのか。それがこれまでの政治と今後の政治をどう変えたのか。いだてんはオリンピック史大河だから政治史には踏み込まないという方針はなんとなく感じていたけれど、やっぱりもう少し政治的な背景に触れて欲しかったという気持ちはどうしてもある。

犬養毅が「話せばわかる」という対話路線だったことはわかったし、海軍将校がそれに不満を持っていたのだろうという想像はつくけど、具体的に暗殺されなければならない理由などはドラマを見ている限りではわからないままなんだよなぁ。ドラマ全体でも「だんだん軍部が力を付けて来て、それに睨まれると新聞も危うい」という雰囲気しか描かれておらず、この時代誰がどんな未来を見ていたのかは全然わからない。ただまぁ、そういう込み入った話を描くにはそれ専門でドラマを作れって話になって、結局なんとなくの雰囲気政治的ドラマでお茶を濁すしかないのかなぁ。ちょっと残念だった。

まーちゃんが犬養毅暗殺に大きなショックを受けているのはわかったけど、どういう風にショックなのかはちょっとはっきりとは確信できない。これが意図的にぼかされているのか(いずれ明確になるのか)あるいは政治色をあまり入れないようにするためなのかがわからなくてちょっとモヤモヤする。高橋是清の話を「つまんないよね」って記事にしないあたり、政治に興味無いとも見えるんだけど、政治に興味ない人がスポーツを政治に利用しろって言うかなぁ?という疑問も。今後に注目したい。