いだてん 第20回「恋の片道切符」

2度目のオリンピック、2度目の敗北をどう描くかって結構難しい問題だと思うのだけど、今回「3か月後の報告会まですっ飛ばす」という荒業で無理やり解決してて笑ってしまった。確かにストックホルム編でオリンピックとしての盛り上がりは堪能したし、あれ以上にドラマとして盛り上げるのは無理…とは言わないけどかなり難易度高いよなぁ。そして見ている側としてもストックホルム後の四三のヤバさを散々見てきているので、もはや金メダルはどうでもよくなりつつあって、スピーディな展開はむしろ望むところだったり。

平和の祭典のはずなのにそこで競って負けて帰ってくると「非国民」て言われる世界…このシーン、ある意味わかりやすくテンプレな「無責任に責任を追及するマスコミ」として描かれていたと思うんだけど、でも全然風刺とか揶揄になっていなくて、まさに今現在進行形で進んでいる社会の中の雰囲気そのものだなぁって感じてしまい、すごく重苦しい気持ちになった。100年後の日本を憂いていたこの時代の先人たちの期待は、スポーツの記録としてはある程度達成されたのかもしれないけど、それを取り巻く社会自体はあまり成長していないのかもしれないなぁ。しんどい。

今回は永井先生も切なかった…「私は古い、淘汰される人間なんでしょう」の重さったらなかったな。何が重いって、多分永井先生の言葉が真実であることが重いんだよな…自分がそれまで信じてきたものを「既に時代遅れである」って認めるのって多分すごく勇気がいることだと思うので、それが自分一人で考えて出来た永井先生は本当に頭のいいひととして描かれていたと思う。そして多分そういうところが憎めなくて好ましく感じてしまうところだったんだとも思う。

二階堂トクヨさんが報告会で断罪するのも、多分それが自分の役割だと思っているという面があるのだろうなぁ。あえて憎まれ役を買って出ているっぽかったもんな。ただまぁ、あえてあの場で言っちゃうのは「いろいろ拗らせてめんどくさい人間」感もすごい出てて苦笑してしまった。そういえば今回のサブタイはトクヨさんのことも含まれていたんだろうな。野口君に対する恋に気付いた瞬間、野口君が結婚していることが(遠い海の上で)判明するという鬼のような展開だったけど…。トクヨさん、寺島しのぶさんの演技がチャーミングなのでかろうじてコメディとして楽しめているけど、コメディとするには危うすぎる綱渡りを見てるようでハラハラする。

そういえば今回普通に日本は「JAPAN」で表記されてたな。8年前はあんなに「ニッポンじゃなきゃ出ない」って言ってたのに、今回はジャパンでいいのか。8年の間に日本の中でジャパンが定着したってことなのかな~。普段細かく伏線回収してくるからこそ、こういうとこ放置なのが気になってしまう。多分気にしすぎ。

最後の嘉納先生と永井先生のシーン、多分この部分がこのドラマの主張なのかなぁ。「100年後の若者がスポーツを楽しんでいて欲しい」というシンプル過ぎる祈り。そういう世界に、なっているかなぁ…。

  • まーちゃん(18)が阿部サダヲさんにしか見えなくてびっくりした。別人!?!?
  • 久々の弥彦。生命力と若々しさに溢れてたストックホルムの時より、ちゃんと落ち着いた青年に見えて感動した。
  • スヤさんの手紙を見ることに躊躇しない美川君。わざわざ自分から言及してて笑った。強引すぎる伏線回収だな~。そしてスヤさんは3回も「美川に言ってもしょうがなかばってん」と言ってたくせに、肝心の美川君を覚えていないというオチ…お見事です。