麒麟がくる 第1回「光秀、西へ」

ついに始まった~~!! 今調べてみたら、初報が出たのは2018年4月…だったのかな? 正統派(というんだろうか)大河脚本家であると評判の池端俊策さんがメイン脚本をやるらしいとのと、主演がハセヒロさんという情報を見て「ガチガチにド安定な路線で来たな!?」って思ったのを覚えている。放送直前の年末に主要キャスト交代というアクシデントがあった時も、最終的には上手く仕上げてくれるだろうっていう謎の信頼があった。だから2週間遅れの開始も全然苦にならなかった。絶対面白いだろうと思っていた大河の初回が、想像通りに面白いと思えるのって、なんて幸せなことなんだろう。

大河のために…というか実際にはたまたまだけど、4K環境が整ったので、今年の大河は4Kで視聴。まさか日曜朝から大河が見られるとは…(実際には録画で見てる)。私は映像オタクではないので、正直4Kの映像の良さ(これまでとの違い)はいまいちわからなかったのだけど、印象的なのは映像の色彩が時代劇らしからぬカラフルさだったことと、山や稲穂などの緑が不自然なまでの彩度だったことかな。カラフルな着物はある程度の時代考証してる上でのチャレンジなのかなと思って好意的に見た。実際にその時代にカラフルだったかどうかはどっちでも良く、その時代にその色が出せると検証した上で、そういう華やかな原色の溢れた世界だったかもしれないと想像して創造する挑戦には敬意を表したい。清盛に出てきた真紅の禿の装束とかに夢とロマンを感じる属性なので、同じ路線のロマンを感じた。ただ、背景の稲の緑の彩度が飛んでた(ように見えた)のはちょっと気になった。4Kカメラの問題か、その後の調整の問題か、あるいは実際に見ればあの緑は心地よいのに、カメラを通すと彩度が高すぎると感じてしまうのか…。確か8Kは目で見るそのままの映像を残せるとかなんとか。機材の性能が上がれば上がるほど、これまでの映像に慣れた人間の方が、その映像を正しく受診出来る機能にまだ対応できていないのかもしれない。そのうち見慣れるのかもしれないけど、もうちょっと落ち着いた黄緑にして欲しいかも…目がチカチカする。

久々に子供時代のない、第一話から主演ハセヒロさんの大河。子役時代が無いのは真田丸以来かな? 真田丸の時も一話で「もう絶対一年間面白い!勝ったも同然!」て思ったけど、今回も同様の安心感のある第一話だった。最近すっかりおなじみのドローン撮影を駆使した、広いのどかな田園風景からの、野党との襲撃チャンバラ。印象的なのは敵の頭領の禍々しさ。どことなく鎮西八郎為朝みがあったような(頬マスクしてるだけとも言う)。あと鉄砲を構えても光秀が全く動じなかったのが「光秀が鉄砲の存在を知らなかったから」という演出に気付いた瞬間、ひっくり返って感動した。なるほど…そういう見せ方があるのか…。そして、その後すぐに自分の知らない武器があること、自分の生きている世界が狭いこと、今後どうすればいいか、まで一直線に思考が進む光秀の聡明さまで描くのが上手いよな~。その途中に「黙れ小童!」って言いそうな叔父上とのやり取りが挟まれるのが面白かった。あそこで「うが~!」って奇声あげる光秀は、ちょっとハセヒロ金田一みを感じたり。いや~、オタク心を擽る初回であることよ。

本木雅弘さんの斎藤道三(利政)。これまで道三って私の中で食えないマムシ坊主ってイメージだったのだけど、見目麗しい本木雅弘さんでどうなるかと思ったら、思った以上に食えないマムシっぽさはありつつ、見目麗しい道三だったので拍手喝采した。最初の槍を振り回すシーンで荘厳さと勇猛さ、珊瑚を大玉と小玉に分けさせる細かさ、息子の至らなさを大っぴらに叱るワンマンっぷり、褒美にと投げつけた珊瑚を自分で拾って盆に戻すセコさと同時ににじむ愛嬌、自分で「利益にならないことはしない」と宣言してはばからない自己肯定感、「だから?」の一言で表現されたお茶目さ、などなど、このわずかなシーンでこの作品の道三の魅力が詰め込まれていて、演技と演出と脚本の三位一体感に惚れ惚れする。光秀のことを「なんか長い経典らしきものを2年で覚えた」という秀才逸話で思い出し、でもその時は大して興味なさげだったのに、理屈で珊瑚の数を当てた瞬間に「ほぅ」って感じで見る目が変わるのも面白かった。ただ頭が良いというだけではたいして興味を持たず、その頭の良さが「自分の利益になりそうな人材」であるとわかった瞬間にアンテナに反応するってことだよな。このシーン、本当に濃くて面白かった。

光秀の母上はなんと石川さゆりさん! 普通に演技が上手くてびっくりした。でも良く考えたら舞台で時代劇のお芝居+歌とかのステージとかありそうだし、演歌自体がキャラと心情を作って歌うものって面もあるだろうし、誰かになりきることには慣れているのかも。光秀が旅立ち前に食事をしている側で、立ち膝なのが印象的。江戸時代の女性は正座なイメージだけど、立ち膝の方が臨戦態勢の武家っぽくてカッコいい。今作では明智家は美濃源氏土岐氏の末裔って設定らしく、そういう系図とか氏の流れとかはさっぱり守備範囲外でわからないけど、この辺もそのうち伏線として回収されるのかもしれないので楽しみにしている。

光秀のミッションその1:堺で鉄砲を入手する。堺で印象深かったのは間違いなく松永久秀吉田鋼太郎さん! 私の中では真田丸で出番短かったくせに鮮明な織田信長像が強いんだけど、今回も短い出演時間で強烈すぎる印象を残してくれたな~。武器商人の宗次郎(大塚明夫さん)がまたものすごいインパクトだった。最初宗次郎見た時、吉田鋼太郎さんかと見間違えたんだけど、業界でも似てるって評判だったと後から知って、まんまと美味しいネタだったんだな~。光秀を道三の家臣と知ってあからさまに(道三に)興味津々で近寄ってくる胡散臭さがたまらんし、疑いもせずにまんまと酔い潰されちゃう光秀の初々しさよ。翌朝枕元に鉄砲を一丁残してくれたのでめっちゃ感謝してたけど、どう見てもカモられてるから! 絶対宗次郎には原価スレスレの値段しか渡さずに、がっぽりマージン取ってるんだろうなって確信出来る久秀の食えないオヤジっぷりに目が離せない。この鉄砲大丈夫? 粗悪品とかじゃないよね…?

光秀のミッションその2:京の都で名医を確保する。直前の堺との対比でますますこの時代の京の寂れ具合が際立つ。子供が当たり前のように武器を抱えている絵に地味にショックを受ける。堺正章さんの東庵先生、演技にいちいちタメがあって歌舞伎っぽいというか「演劇」っぽい感じなんだけど、多分これはこういう演出なんだよなぁ。まだちょっと違和感が。駒ちゃんが必死な顔で「先生!本音で話して!お金欲しいんでしょ!?」って言うのが斬新すぎて笑った。そっちかwww

京での火事。火の中に飛び込んで子供を助ける光秀というモチーフは、いずれ比叡山を焼いたり本能寺に火を付けたりすることへの伏線なんだろうか。そして駒ちゃんの言葉を聞いて、光秀が「麒麟は来ない」と(逆説的に)祈るように言う姿は、第一話の構成としてあまりに美しかったなぁ。つまりこの話は光秀が麒麟を探す物語になるわけで。そして、視聴者は光秀が最後に信長を倒して火を放つことを知っているわけで。平和な世を求めて麒麟を探す男が、主君を討つまでを描くってことになるんだよなぁ。どういう経緯で光秀は信長を倒す決意をするんだろう。そこに麒麟はどう絡んでくるんだろう。最終回でまた「麒麟は来ない」って言ったらどうしよう…泣いてしまう…。

そして帰蝶。しばらくは「わざわざ撮りなおしたんだよなぁ…」と思ってしまうだろうけど許されたい。川口春奈さん、気が強そうで芯があってどこか愛らしい女性を精一杯演じている感が可愛らしかった。すごい重圧だろうけど頑張って欲しい。応援したい。既にどこかに嫁いだ身で、父親が戦をするって知って馬で一人戻ってくるってとんでもない姫だけど、この時代はそういうのもありなのか、それとも帰蝶が特別なのか。今回は顔見せ程度だったけど、かなり今後ガッツリ物語に絡むみたいなので楽しみだ~。沢尻エリカさんの帰蝶も見てみたかったけど、これはもう仕方ないからなぁ。光秀とも何か思わせぶりな縁がありそうなのもワクワクする。

・OPのキャストのフォントが過去の角川映画みがあった。具体的には市川崑石坂浩二金田一っぽさというか。
・琵琶湖を渡る船は「清盛の宗船では!?」ってテンション上がった。清盛で船作っておいてよかったねぇ…!
・何度も通行料を取る比叡山、人買い&追いはぎが堂々と日中歩いてる街道、ほんに戦国の世は恐ろしい…
・駒ちゃんを助けた「大きな手の人」はそのうち回収される伏線か。
・おそらく大金をかけたであろう鉄砲を光秀がぞんざいに扱うので、根が貧乏性な私はハラハラしてしまう。