いだてん 第22回「ヴィーナスの誕生」

今週の孝蔵。相も変わらず相手の好意をそのまま質屋で金に換えてしまうダメっぷりを遺憾なく発揮中。なんかさぁ…孝蔵はそういうやつだってわかるけど、そこが孝蔵の愛嬌(フラ?)だってわかってはいるけど、それでもやっぱり「ホントこいつクズだな」って思っちゃうのは仕方ないよな。そしてなんと結婚話が舞い込むんだけど、これがまた酷い話であった…。

小梅ちゃんの口調がすっかり女房っぽくなっていてほっこりした。でも孝蔵の結婚相手にあんな育ちの良さそうなお嬢様を連れてきちゃうのはちょっと相手に対して誠実じゃないっていうか…結果的におりんさんが孝蔵に惚れてるっぽいからおさまったけど、親の立場から見たらこの男はなくない??おりんさんの父親も人を見る目がなさ過ぎじゃない!?真面目そうとかどこがだよ!?結婚相手の持参金をそのまま遊郭と賭け事に使っちゃうとか安定のクズっぷりでブレない。孝蔵のダメっぷりは史実もあるんだろうしどうしようもないけど、そこはかとなくこういう破天荒なエピソードが武勇伝ぽく感じられる描写な気がして、なんだかなぁという気持ちになったりもする。昭和パートの描写で「当時を振り返って苦笑してる」おりんさんを見ているからなんとか笑いに出来るけど…。

今週は女子スポーツ事始めという感じだった。人見絹江さん登場。四三よりシマちゃんの方がその将来性をいち早く見抜いているというのが面白かった。このドラマの四三は間違いなく誰でも分け隔てなく熱心に指導してくれるだろうし、その指導には定評があるのかもしれないけど、他人の才能を見抜いて育て上げるみたいなのは向いてないのかもな~。そういう「結果が全て」の指導者じゃないからこそ、竹早の女子生徒たちが慕うのかもしれない。それにしても「パパ」呼びのヤバさはハンパなかった。スヤさんですらドン引きだったからな…。

竹早でスポーツに目覚める女子生徒と、単に行儀作法だけ身につけてお嫁に行って欲しい父親との意識のズレ。そのズレが表面化するきっかけが美川君のアヤしい(どう見てもアヤしい)闇写真販売というのがなんとも美川君らしいというか、美川君の使い方が神がかってるというか。他人の日記や手紙を見るのに葛藤が無いというエピソードといい、こういうダメっぷりで美川君というキャラが積み上がっていくの、本当に上手いなって。いや、それにしたって女子学生の生足の写真売るのは人としてどうなんだろう。

記録のために生足で走っちゃう富江ちゃんのひたむきさは良くわかるし、四三の言ってることはこの上なく正論でごもっともなんだけど、今回の話を見ている限り、悔しいけど保護者達が四三を辞めさせようとする動きも「さもありなん」と納得せざるを得ないというのが正直なところだった。この流れで四三の主張は、正しくても絶対受け入れられないもんだよな、と。それは言い方だったりその時の社会の「常識」だったり力のある者の個人的な意地だったり、本質的な部分と違うところでケチがついてその意見は黙殺されていく。

これは多分意図的な演出だと思うのだけど、女性(に限らずいわゆる弱者)に対する理不尽な社会的抑圧に対して、今回四三のように高らかに正論でNOを突きつける行為は一見爽快に見えるけれど、多分その瞬間は絶対に周囲を納得させることは出来ないという残酷な現実を描き出していたんだと思う。どう見ても四三の言葉は(女性にとっては)正しいのに、絶対にあの場では(男性を主体とした)保護者を納得させることは出来ないよなぁって直感でわかる。もうどうしようもないくらいにわかってしまう。盛り上がり始めたマイノリティの解放運動がどんどん過激化していく図式の再現に見えて、なんかしんどかった。

今回ここで引っかかってしまってずっと感想が書けなかった。ツイッターとかですごい評判良かったし、私も四三の啖呵に一時スッキリはしたけど、それが保護者に通じないという描写が妙にリアルで、そして保護者に通じないことにも納得してしまう自分もいて、それが自分の中の見えない天井のようにも思えたりもして、なんだか自分の感覚が信じられなくなったりもして。何度見ても、このシーンをどう受け止めたらいいのか答えが見えない。

あと、四三が「靴下云々は家でやってくれ」って言うのは思わず笑ってしまった。趣旨は本当にその通りなんだけど、そもそも一番お互いの主張がかみ合っていない問題点から勝手に一抜けしちゃうの、さすがに対話をする気がなさすぎるだろってツッコミしかない。そう考えると、四三の演説に感動しつつも「ん?」て思ってしまうのは、四三にとっては女子スポーツの振興こそが最優先なのだけど、生徒の保護者には彼らにとっての最優先の事項があり、そのすり合わせもしないまま「あなたたちの価値観が間違っている」って言い切ってしまっているからかな。こういう対話の席で演説をしてしまうことの滑稽さがよく出ていたシーンだったとも思う。もちろん、それがダメというのではなく、むしろ四三が「対話による懐柔」みたいなことが全くできない直情型の体当たり人間だということがよくわかって、それはそれでとても良いシーンだったと思う。

全然まとまってないけどとにかく書き終わらないと次の感想にとりかかれないのでもう終わる。こんなところで躓いてしまった~!次は関東大震災らしくて震える…怖い…でも見たい…