いだてん 第17回「いつも二人で」

先週ラストでオリンピックの中止にうちひしがれる四三を見せておきながら、今回冒頭でもう一度、今度は四三がその事実を告げられるシーンからやり直すの、結構鬼の所業な気がする。政治とスポーツは別物というタテマエをいとも容易く蹂躙していくのが「戦争」であり、その前では個人の夢や希望なんて簡単に奪いとられてしまうのだという事実を、これでもかって見せつけられた感。あとオリンピック委員会もさ、前年までやるやる言っといて、戦争長引いてるから中止ね、ゴメンね、みたいなのどうなのよって気もしないでもない。嘉納先生に対してもさ、これまでさんざん煽っといて「無念!」じゃねーよって。いや、嘉納先生も断腸の思いなのはわかるけども。結局一番下の弱い人間が政治に弄ばれて割を食うんだなって。なんかそんなやさぐれた気持ちになってしまった…。こんなちょっとのシーンなのに、理不尽なやりきれなさに押しつぶされそう。

そして、四三は踏みにじられる平凡な庶民側かと思ったら、その四三に「日本のランナー」の夢を託す清さんのような人々もいるわけで…。なんかここ壮絶だったなぁ~。みんながみんな自分の夢を誰かに託している。そして四三はまさにそういう風に託されている自覚があるからこその辛さもあるわけで…。はぁ~ほんとしんどい。あと清さんの「ばってんて言ってから考えてんじゃねぇよ」ってセリフがなんかもう凄くて。あそこギャグっぽい演出も出来そうなセリフなんだけど、シーン自体は結構緊迫した雰囲気に仕上がってて(落としは最後の「ダレ?」だったと思うし)、不思議な感じだったな~。

失意のどん底の四三を慰めるスヤさん。興味深かったのはスヤさんの応援から「四三の夢は自分の夢」みたいな献身的な重さを感じなかったところ。スヤさんは心から四三を応援してるけど、本人も言ってたように別にどうしても金メダルを取って欲しいわけでもない。スヤさんの希望は「四三が笑顔になること」であって、金メダルはその方法の一つだってちゃんと本能でわかってるんだよな~。そういうスヤさんの頭の良さがめちゃくちゃカッコいいし愛らしいし尊敬するし幾江さんが入れ込むのもこういうとこだろうな~って納得しちゃう。

そしてなんとあの朴念仁の四三がついにスヤさんに自分の気持ちを伝えた!闘わずして金メダルの夢を絶たれるという絶望は四三ほどの朴念仁をも成長させるのか…。あとスヤさんは意外と四三の好意をあたりまえのように信じてるんだなってわかって、ますますスヤさんが最強キャラになっていく。自分たちの家族のことじゃなくていきなり日本のマラソンのその後とかを語り始めた四三に超絶呆れた顔して寝に入ったところも良かった。スヤさんにはスヤさんの幸せな未来像があって、四三の夢と混同していないところ本当に頼もしい。

50人の金栗四三から駅伝を思いつくエピソード。ふと思ったけどこれどこまで史実なんだろう?見てるときは普通に四三が駅伝の考案者なんだ~!って素直に思ってしまったけど、創作なのかなぁ。読売新聞社て名前が直接出てきてびっくりしたけど、社名ならそのまま…だっけ?龍馬伝も三菱って出してたっけか。久々の吉岡天狗にほっこりし、再び自分の(それもまたでっかすぎる)夢を手に入れた嘉納先生にやれやれってなる。それにしても嘉納先生は常にストックホルムスタジアムの写真を持ち歩いているのだろうか。すげーな。

前回、浜松のまーちゃんはもう一人の主人公田畑政治だと判明して、構成凝ってるなぁ~って思ったんだけど、今回の田畑パートへの入り方はどれもこれもトリッキーの極みで凄かった。こういう演出大好きなんだけど、絶対この部分が「わかりにくい」って言われる部分だよな~とも思う。少年まーちゃんを朝太が湖に投げ込んで、それを語ってた志ん生師匠が「すみません」と謝り、田畑パートで「すみませんじゃないよ!」と受けた続きが聖火リレー。リレーはそのまま四三が思いついた駅伝にリンクする、と。こういうドミノ倒しみたいな関連性を物語に盛り込んでいくの、クドカンさんホント好きなんだろうなぁ~。組み立てながらワクワクしてそう。

今回攻めてるな~って思ったのは、あの教育者の鑑みたいに描かれてきた嘉納先生に、あれだけ女子スポーツに対する偏見特盛のセリフを言わせたこと。この時代そういう風潮しかなかったのはもちろんそうなんだろうけど、あえて嘉納先生にこれを言われたことで横っ面張り倒されるような目覚めがあった。これまで日本人の古い価値観の中で「スポーツ」のために必死で闘ってきた嘉納先生が「女子は子供を産むのが大事だからスポーツなんかするな」と当たり前のように言うこの絶望感。だからこそこの先のシマちゃんパートが盛り上がるのだろうけど。頑張れシマちゃん。

そしてこの流れからトクヨさんを一旦女子スポーツの救世主と錯覚させ、直後に肋木で落とすまでの圧倒的クドカン節。上げた直後に落とすこの流れ、さすがにクドカン節としての受け取り方が染みついてきた感ある。トクヨさんの肋木が女子スポーツそのものへの否定じゃなく、純粋にマラソンが嫌いなだけなのもめっちゃ笑った。

四三が走る駅伝最終区間。画面の見せ方もあるのだろうけど、エキストラ大量で気合の入ってるシーンになってたな~。人ごみの中で視線を交わす四三とスヤさん。そういえばスヤさんは四三が本気でマラソン走ってる姿を見るのは初めてなのかな。すごく素敵なシーンだったけど、これまでの上げて落とす演出に慣らされてしまった私には「普通の感動シーン」に見えてしまって、何かオチがあるんじゃないかと構えてた後だったのでちょっと拍子抜けだった。ものすごく見方が偏り始めている自覚はある。

今週の幾江さん。スヤが帰ってこないという幾江さんのグチ。これ金栗家かな? 囲炉裏あるからそんな気がする。もうすっかりスヤさんの怒鳴り込みが日常風景になってるの微笑ましい。あとどうでもいいんだけど金栗家と池部家の位置関係が気になる。近いの? 遠いの??

そしてとうとうスヤさん懐妊。ホントに四三はオリンピックのためにずっとストイックに自分を抑え込んでいたんだなぁと妙なところで感心する。でも確かに先週と比べて今週の四三とスヤさんは夫婦って感じしたもんな。なんというか、脱童貞っぽい感じ? あと幾江さんの怒鳴り込みが初めて嬉しそうだったのめでたいw でも結局怒鳴り込むのは変わらないのね。

次からリアルタイムで見られるの嬉しい。今後はためずに感想を書かなければ。