いだてん 第16回「ベルリンの壁」

不詳わたくし、この瞬間まで「箱根」と「富士」の違いを理解していなかったであります。いや、今でもちゃんとわかってるわけじゃないかもしれないけど、箱根山という山がちゃんとあるって理解した…そしてそれは富士山とは違う山って初めて認識した…箱根って富士山を含むあの地域の名称くらいのイメージで生きてきた…だから最初の箱根と富士のやり取りとか「???」だったもんな。いや~勉強になった。で、結局あのシルエットは富士山てことでいいんだよな??富士山じゃなきゃ見えないよな??

お久しぶりの(人相の変わった)播磨屋さん!ピエール瀧さんに顔や体形は全然似てないのに面影がないわけでもないという、なかなか絶妙なバトンタッチだった気がする。これはつまり、ピエール瀧さんが演じた「播磨屋」という役の解釈を、三宅弘城さんが正しく引き継いだってことなんだろうな~。ピエール瀧さんを引き継ぐんじゃなく、播磨屋さんを引き継ぐと考えると、面影があるのは当然なのかもしれない。う~ん、役者の世界ってすごいな。

今週の朝太。無銭飲食(と言うには豪遊しすぎ)して留置所のお世話に。そこでたまたま同室の牢名主さんが被ってた新聞で知る円喬師匠の死。やっぱりフラグだったか…もう会えない気がしてたんだよな…。どうでもいいけどOPで「牢名主」って役名出てきて笑った。役名かよ。長い話をつかえずに出来てすごい、でも面白くない。だけど朝太の存在そのものが可笑しみがある。つまりそれが「フラがある」ってことなんだってこの瞬間に朝太と視聴者が一緒に「フラ」を理解するというのが小憎らしいほどに粋な仕掛けだよな~。そしてフラを理解した瞬間、つかえを振り払ったように一心不乱に噺に没頭する森山未來さんの演技が鬼気迫って凄かった。演技も凄かったけど、演出も素晴らしかったな~。覚醒した朝太の噺に被る円喬師匠の映像、これまでの思い出の場面、笑顔の師匠、その噺を聞いて心底可笑しそうに笑う朝太(孝蔵)…泣ける~。そしてその直後にやっぱり寝てる牢名主さんを映すこのハズし。わかる…わかるよ…ハズさないと気が済まないんだよね…だからこそ好き。

そして自分で髪を切る朝太。これまでの長髪は孝蔵時代の名残りでもあり、ある意味噺家になる覚悟がつかない「甘え」の象徴でもあったのかなぁ。それを自分でバッサリ切って、自分の目指すものを明確に胸に抱いて、ちぃちゃんに礼を言い、追い出された小円朝師匠のところに文句も言わせずシレッと戻ってくるあたりが非凡な証明。それまで見向きもされなかった地方回りでも、ちゃんと客が笑ってるあたり、一皮も二皮も向けたんだなぁ。いやぁ、今回は朝太の物語も一つの到達点だったのでは。お見事でした。まぁ、この後も一波乱も二波乱もあるんだろうけどさ。

シマちゃん再び!三島家の女中から華麗に転身。女中というと「お金に苦労して実家から売られた」的なイメージあるけど(我ながらどういうイメージだ)自分の夢のために働きながら学校を目指すというからには、シマちゃんの実家はそれなりに裕福(というか娘に自由を選ばせる程度の余裕がある)なのかなぁ。女中時代も三島家の格に対してそこまで畏まってなかったもんな。あとやっぱり女子スポーツ編はシマちゃんがキーパーソンになりそう。こういう群像劇、一歩間違うとただの小話の寄せ集めになりそうなのに、もうここで既にシマちゃんに対してここまで応援する気満々になれるんだから構成が上手いってこういうことだよなぁ。弥彦からの襷がシマちゃんに受け継がれてる演出、感動する。それにしても弥彦ぼっちゃんはこれからも出るよね?別に上半身裸にならなくていいから、時々でいいから出て欲しいな~。

スヤさんが幾江さんに「かわいか息子さんから手紙」って言うのいいなぁ。これだけでスヤさんと幾江さんがどれだけ仲が良いか、幾江さんがどれだけスヤさんに惚れこんでいるかわかるもんな~。四三のことは全然評価してないけど、スヤさんがそこまで好きならば援助を惜しまないという古き良きパトロンの鏡のような幾江さんに対する好意がぶっちぎりで上がっていく。

四三とスヤさんの文通。途中から「スヤさん」が「スヤ」に変わってるの微笑ましい。でも実物を前にしちゃったら「スヤさん、いや、スヤ」って何度も言い直してるの更に微笑ましい。そしてこれまで流されまくっているように見えた四三がきっぱりと「帰って」って言うのにちょっと感動。いや、相変わらず肝心なことは言わずに勘違いさせるようなことばっかり口にするところはダメ夫の典型なんだけど、ベルリンのために今しなければならないことに対するストイックさだけを考えると、ものすごい精神力だよなって脱帽する。野口君がしみじみ言ってたけど「バカだなぁ~」ってホント心底同意。それくらいバカでなければ金メダル取れないってことなのかなぁ。あとかなりどうでもいいけど「スヤスヤ、はっはっ、いや違う」てネタとして微妙すぎるのになぜかツボった。

幾江さんが実次兄に切る啖呵最高すぎる~。「いだてんかじゃこてんか知らんばってん」ウケる。今後も毎回幾江さんが金栗家に「さねつぐぅ~!」て乗り込んでくるのが確定した瞬間。スヤさん大好きな幾江さんホント最高。そして幾江さんの罵倒を全部受け止める実次兄がかわいそかわいい~。

嘉納先生が「スタジアムは聖域だ」って叫ぶシーン。言ってることはヒーロー的理想論で、普通なら熱くなる場面なのに、どこか絵空事で空虚に聞こえるのすごい。政治とスポーツは別物だっていうのがただのタテマエでしかないということをこの上なく残酷に見せつけるためにこういう演出の仕方なのかなぁ。逆説的に突きつけてくるみたいで結構しんどい。

ベルリンオリンピックの中止。四三の絶望っぷりと比べて播磨屋さんが思った以上に明るいそのギャップが、スポーツというもののこの時代の軽さを感じさせる。世間は四三の記録を持て囃すけど、本当の意味で四三の覚悟や使命感を理解しているのは嘉納先生くらいで、その孤独の中でこれまでたった一人で闘ってきた四三の気持ちを思うとやりきれない。ただ、スポーツはやっぱり本質的にそういうもので、他の人にとっては「たかがスポーツ」であることもまた真実で、その埋められない溝が「オリンピック」という舞台があるゆえにより深まっていくんだなぁ…。そういうどうしようもないジレンマをオリンピック直前にこうやって描くかぁ。どこまでも一筋縄でいかない作品…好き。

よし!貯めてた分の感想はこれで終わり。5日の放送分は連休最終日の明日書いたらついにリアルタイムに追いつく!やったぜ。