いだてん 第13回「復活」

この連休で必ずリアルタイム放送に追いつくぞ!という固い決意。今回入れて後4話!…結構多いな!?

前の回で「すみません…」と力なく繰り返すだけのどん底の四三のシーンで終わっていたからこそ、今回のサブタイが「復活」なのとてもありがたかった。つらい部分をそんなに長引かせて見ていたくないので、ちゃんと復活してくれるんだと思って精神的ハードルが下がるので。こういうのとても大事。

本庄さん、金栗敗退を伝える時ほんのりうっすら嬉しそうに見えなくもないんだよな~。今後も彼女はこの路線なのか。なにか理由があるのか。彼女の物語が語られる日は来るのか。

四三が試合の翌日にコースをもう一度歩くのを志ん生師匠が「現場検証」って言ってて笑う。酷い。この前日の記憶を辿るパート部分、映像の感じがツインピークス(古い)みたいな印象だったな~。ミステリ風というかサスペンス風というか、先の見えない不安を煽る感じが「The演出の妙」って感じだった。子金栗くんが日の丸からパッと顔を出してOPに突入するとことか、思いっきりサスペンスの手法っぽさあって面白かった。

大使と通訳さんに見つけてもらって、電車で帰る途中に恥ずかしそうに日の丸を隠す姿がさぁ…敗北を「恥ずかしい」と感じるほどの重圧を与えることの罪深さとかさぁ…でも「恥を感じる必要なんてない」と安直に言ってはいけない感じがさぁ…なんかもう壮絶。そしてそれを見事なまでに表現する勘九郎さんの泣きの演技にただただ感服。四三の悔しさを「恥ずかしいと感じる姿」で見せる脚本・演出もすごい。圧倒された。

そして翌日には一応平静を取り戻して早速課題分析始めるんだから、やっぱり四三は強いんだよな。負けを負けとして即座に認められる素直さ故の強さだろうなぁ。こういうところからも四三が感情じゃなくて理性の人で、でもすごく感性豊かでもあると感じられるのがすごい。押し花とか、エピソードの取捨選択が神がかってるのかな。クドカンさんマジパネェ。

嘉納先生と大森監督の会話。気弱な後悔ばかり口にする兵蔵に対して「いい加減にしたまえ!体が悪いんだから心くらいしゃんとしたまえ!残りの人生ずっとウジウジして過ごすのか?側にいるもののことを考えろ!」って言えちゃうのが嘉納治五郎という男。これ、全くの正論なんだけど、嘉納先生以外だったらここまで素直に心に響かないと思う…むしろ正論ばっか言いやがってって思われてもおかしくない。これを素直に受け止めさせるのが嘉納先生の教育者としての資質なんだろうなぁ。本心からそう思ってるって思えるもんな。兵蔵にしか出来なかったことを一つ一つ掲げて認めることで兵蔵の心を救ったのは間違いなく嘉納先生だし、同時に安仁子の心も救ってるんだよな~。教育者の鏡。

スヤさんが旦那さんに四三の手紙を読み聞かせているシーン、良かったな~。相変わらず元気良いスヤさんの笑顔に癒される。天然とも見えるし、あえて負けを意識しないように空元気で笑ってるようにも見える綾瀬はるかさんの演技がとても見事。ここ、スヤさんが四三の結果を知るシーンを入れてないのがありがたいよな。制作側が悲壮感出したければ、前回あれだけ煽った「周囲の期待」に対して、それぞれがガッカリするシーンを入れれば一発なのに、そういうシーンはほぼ無いのがこのドラマへの絶対的信頼感。あと、金栗家に鯛持って応援に行った日より明らかに旦那さん体調悪そうだけど大丈夫なんだろうか。心配。

そして今回の一番の見せ場は孝蔵改め朝太の初舞台だった。清さんの友情にジーンとさせた直後に質屋の暖簾が出てきて笑う。あまりにも早いオチ。そして久々の美川君の相変わらずの胡散臭さにほっこりする。そのままの君でいて欲しい。

ここの森山未來さんの演技凄かったな~。頭が真っ白になって、師匠の「足で覚えるんだ」って言葉に導かれて、その後から何かにとりつかれたように車を引きながら聞いた円喬師匠の噺がスラスラと出てくるまでのあの表情の変化、とにかく凄くて圧倒された。そして朝太を舞台に上げるのを最後まで迷ってるように見えた円喬師匠が、車引きの本能でしゃべってる孝蔵の姿に何かを見出したみたいなのもゾクゾクした~。ちょとと嬉しそうだったよな、師匠。

朝太の落語が上手いわけじゃないのも面白いなって思った。いやもちろん才能は有るんだろうけど、朝太の落語って名人芸とかそういう方向じゃなく、何かこれまでと違う新しい落語っぽい何かが生まれそう、みたいな先の見えない博打っぽさを感じる。松尾スズキさんの演技がものすごく抑えられてるので、円喬師匠って何考えてるのか本当にわからないんだけど、孝蔵の「何か」が出てくるのをずっと待ってるように見えるのが不思議。才能を信じているというより、うっかり変わったものが出てきたらラッキー的な、ダメでもともと的な冷徹さというか。でも円喬師匠に人情がないわけではなく、むしろとても愛情深さも感じる。見れば見るほど松尾スズキさんの円喬と森山未來さんの朝太に引き込まれていく。すごい。

ラザロの死を胸に刻んで四三は前を向く。死は易く、生は難く。あの時電車の中で感じた恥ずかしさを、こうやってすぐに次へのバネに変えられるんだなぁ。多分この言葉って『盲目旅行』に本当に書いてある言葉なんじゃないかと思ってるのだけど(違うのかな)そう考えるとすさまじい精神力だよな…。

閉会式を待たずに帰国を決意したのは、予算の都合か、はたまた負けたからか。両方かもしれない。嘉納先生は理想論を裏表なく無邪気に心から語るくせに、こういうところで現実感覚のある決断をするのが面白い。4年後のオリンピックに「帰ってくる」という嘉納先生。でも私はベルリンオリンピックがどうなったか知っているわけで…ここでも先を知っているからこその余韻がある。上手い。

ストックホルム編素晴らしかった。映像も演技も演出も全てがキレッキレだった。制作陣の圧倒的なパワーを感じた。本当に面白いし本当に素晴らしいのでこれからも同じ熱意で作られた作品を見続けたい。そして早く追いつきたい。あと3話!