いだてん 第12回「太陽がいっぱい」

スヤさんが相変わらず我が道を行く性格のままなの、本当に素敵…それを優しそうに見守る旦那さんも本当に本当に素敵…これはこれで幸せな夫婦なんだろうなぁ。こんなに幸せそうなのに旦那さん体弱いんだよなぁ。視聴者としての私はスヤさんがこの後四三の妻になることを知っている。ゆえにこのあとの悲劇が容易に想像できてしまう。その悲劇を内包して、だからこそこの瞬間が美しいと感じさせる演出、大森夫妻のシーンにも通じるし、何ならこの大河の全てのシーンに通じてるような気がする。見ている私は、このレースで四三がどうなるか結論を知っている。それゆえにそこに至るまでのあらゆるシーンに切なさと美しさを感じるんだろうな。

兵蔵に対しての安仁子さんの「行かないで」って言葉と、その直後に四三にカメラを向けるやつれた笑顔がさぁ…涙無くしては見られない。そして兵蔵に父の面影を見て背負う姿がさぁ…もう最初から号泣。ストックホルム編、泣かせに来る圧力がハンパない。

この大河ドラマが始まってからずっと、金栗四三ストックホルムオリンピックでの結果がどうだったかというのはわかっていた訳で、要はこれまでの物語はこの結果をどう感じるかの仕込みという面もあったわけで、ここで「勝たせてあげたかった」とギリギリ思わせない作りだったのが本当に(私にとって)誠実なドラマ作りだなぁと思った。だからこそこのドラマが好きなんだろうなぁ。もちろん勝たせてあげたかったと思わないわけではないけど、じゃあ監督を背負うあの展開がなかったらとか、白夜で眠れないという環境ハンデがなかったらとか、そういうマイナス要素を嘆いてしまうのはあまりに四三(の人生)に失礼な気がして、ただあるがままを受け入れざるを得ないような、受け入れたいような気持ちに自然となってしまう。つらい結果をつらいまま受け止めればいいと思えたので、結果の割につらくなかった。ちょっと自分でも何言ってるかわからない。

みんなが四三を必死に探す姿が泣けた。四三がレースを安易に棄権して行方をくらますわけが無いと信じているからこそ、帰ってこないという状況にみんな最悪の事態を考えちゃったんだろうな~。なんだかんだ言って日の丸が上がらないことにヤキモキしてたのに、そのうち順位やタイムよりも完走が大事だって思いなおして、やがてレースなんかよりも生きていてくれって「最悪の事態」がどんどん悪い方向に転げ落ちていくのが現実味あったなぁ。そう言えば四三が見つかったのは翌日だったって何かで見た気がするんだけど、みんな夜通し探したんだろうか。白夜だから暗くならなかったとかそういうこと?白夜って、起こる理屈は理解できるんだけど、やっぱり夜が明るいというのは全然実感がわかないなぁ。

途中途中で入る実家の様子はコミカルに描かれつつも結構胃がキリキリするシーンの連続だった。スヤさんや家族の期待が大きければ大きいほどその後の落胆が手に取るように想像できてしまって。でもきっと力強く温かく帰国した四三を迎えてくれるんだろうなと確信出来たりもして、しんどすぎないのがありがたい。基本的に登場人物たちの精神が健全に強い人ばかりなので、安心して見ていられるのが良いところだと思う。

今読み返してみて、私はこのドラマの初回から本当にこのシーンを見るのが怖かったんだなって改めて感じて面白かった。私は多分「勝たねばならない」と思っている選手が試合で負ける姿を見るのが本当に苦手なんだろうな。だから「ゴールすらできない」というこのレースの結末が本当に重くて重くて、どう見せてくるのか戦々恐々としていたのだけど、結果的に見て良かったと思えたのが嬉しい。こういう風に見せてくれるからこそ、これからも全て委ねて見ていけるという信頼感がさらに高まった。

あと、ストックホルム編に入ってから、とにかくロケのパワーを叩きつけられている気がする。やっぱりロケはいいよなぁ~!あの解放感!地平の広がり!街並みの存在感!相当お金かけたんだろうなぁ…(下世話)清盛の舟もすごかったし、真田丸は実物作ったらしいし、大河に時折ある贅沢すぎるくらいお金かけてるってわかるシーンは見てて爽快だな~。使う時はぱぁ~っと使うその姿勢、自分には出来ない思い切りなので見ていてとても清々しい。