いだてん 第9話「さらばシベリア鉄道」

3/13、0時まわってすぐツイッターピエール瀧さん逮捕の速報を見かける。瞬間「まだ容疑だし」と考え、「でも麻薬関係はかなり確実じゃないと逮捕までしないよな」って思いなおしたりして混乱した。そして「いだてんどうなっちゃうんだ~!ただでさえ視聴率で不穏な空気なのに、こんな話題で追い打ちかけるのやめてくれよ~!」って頭を抱えてしまった。これからどうなるんだろ…これまでも結構出番あったけど代役で撮りなおすのかなぁ…とか思いながら見た第9話。ちなみに、この回は播磨屋さんの出番なしだった。

これまでただの朴訥な田舎青年としか言いようのない描写だった四三だけど、実に味わい深い複雑な面を持っていることを見せつけてくれた話だった印象。まずはシベリア鉄道の旅の日記の題名がすごい。『盲目旅行』。なかなか記念すべき旅の日記にこういう題名付けなくない?なんていうか、そこはかとない闇を感じるというか…。何もわかっていなかった自分(あるいは日本人?)というのを客観視して付けてるのかなぁ。もちろん後から付けたんだろうとは思うけど、この時の自分がどういう状態だったか思い返して分析してこの題名を付けたのだとしたら、それはそれでむしろ怖いくらいの冷静さを感じるんだが…。「あの」四三が「この」日記を書いたというのが何とも意味深というかなんというか。

日記の内容(日本人は日本人として頑張るしかないとか)もめちゃくちゃ理論の人って感じで、やっぱり四三ってかなり頭のいい人として描かれてるんだなと思った。水抜き油抜き走法の時も実際に自分でやって自分で効果がないと判断出来ていたし、何かに躓いた時に躓いたことをすんなり受け入れた上でその失敗からプラスの思考を導き出せるって純粋に頭が良くないと出来ないよな~。でも言動があの朴訥な感じのままなのですごくアンバランスで、それがまたよくわからない魅力になってると思う。この回を見た後でネットの記事で演出の大根仁さんのインタビュー見たけど、ブラック四三って言ってて、すごいわかる!って嬉しかった。やっぱりそこを意識して作ったんだなぁ。

弥彦に対しては生まれも育ちも違いすぎて遠い存在だったのが、二週間以上一緒の部屋で眠る汽車旅のせいでずいぶん遠慮のない関係になってたの良かったなぁ。女性を追いかけてばかりだとか文句を日記に書いてるあたりで二人の距離が縮まっているのがわかるし(住む世界が違うとか思ってる頃より断然人間として対等な感じする)、最後の方は文句を口に出せるまでになっていて微笑ましかった。それを受け止める度量のある弥彦も良かったな~。やっぱり育ちの良さは人間としての余裕に繋がるんだろうな。あとテング応援歌(金栗バージョン)を目の前で見て、目をキラキラさせて「キャー!」って喜んでる四三がめっちゃ可愛かったw 何か劇的な事件があって分かり合えるようになるのではなくて、なんとなくダラダラと寝食を共にしながら遠慮のない関係になっていった感がとても良かった。

スヤさん。旦那さん胸の病なのか!そして大竹しのぶさんのお姑さんとのやり取りが素晴らしかった。「たらいを持ってるの」「お母さんが?」「あんたがよ!」の間が最高。大竹しのぶさんのセリフ、ちょっと間違うとイヤな姑になりそうなのに、これまでのわずかな登場シーンの積み重ねのおかげで厳格ではあるけど根本的にスヤさんを認めてて味方になってくれる人だという信頼があるので、こういうシーンがむしろ微笑ましく見えるんだよな~。実次兄上が大声で絵ハガキ持ち込んだ時のうっとおしそうな顔とかも、それでも絶対いい人だって信じられる人物造形なの素敵。そういえば、今回スヤさんのシーンへの切り替わりが大森兵蔵の咳から旦那の咳への繋がりになっていて、短い演出の中に情報を詰め込みつつスヤさんの登場を不自然なく説明する理由付けにもなるという、ものすごい技を目にした気分。上手いなぁ…。

大森夫妻のいちゃつきコメディ。相変わらず二人のやり取りはお笑い担当なんだけど、今回は兵蔵氏の病気が明らかになったので笑いの中にも重苦しさがあって、車中の旅の狭苦しい雰囲気を倍増させてた。兵蔵氏のエピソードは多分史実なんだろうけど、この肺病は注意していればうつらないタイプなんだろうか。選手と一緒に(病気を隠して)同行するのは感染のリスク的に大丈夫なんだろうか。とかいろいろ気になってしまった。

ようやくビートたけしさんの志ん生師匠に慣れてきて、この人が四三の物語を語っているという構成をすんなり頭の中で整理できるようになってきた。孝蔵が円喬師匠に名前もらって嬉しさ大爆発のシーン、スローモーションで孝蔵が下町を走り抜ける演出がすごくキラキラしてて美しくて印象的だったなぁ~!森山未來さんの孝蔵、最初は本当に刹那的で享楽的だったのが、円喬師匠との雷に打たれたような出会い以降、ただの車引きとしての描写だけで充実している感じが伝わってくるのが本当に上手い。演技と演出と脚本が本当に噛み合ってて素晴らしいな~。

いよいよオリンピックストックホルム大会。視聴ペース上げてリアルタイムに追いつきたい!