いだてん 第8回「敵は幾万」

号泣回。何回泣いただろう、3回は確実に泣いた。

実次兄上が相変わらずウザくて暑苦しくて愛おしい~。十里走った先に何が見えるのかわからない、何も見えないかもしれない、でも見る資格を与えてやりたいって親心が本当に頼もしい。結果のためじゃなく、可能性のためにお金を作ってやりたいって心意気に泣く。池部家のお姑さんは「あなたを信じたんじゃない」って言ってたし、実際スヤさんがいなければ貸してもらえなかったんだろうけど、兄上の親心がきちんと伝わったからこそ気持ち良く貸してもらえたという面もあるんだろうな。東京から帰るとき、「勝とうと思うな!」って叫ぶのも良かったなぁ~。本当にただただ力いっぱい頑張って欲しいだけなんだよな。でも一方で勇ましい(内容がほぼ捏造な)新聞記事を読んで嬉しくなっちゃったりもする、その小市民なところもすごく胸に刺さる。ただただ力を尽くせばいい気持ちと、良い成績が残ったらいいなという気持ちは普通に両立するし、どっちかが悪いというものでも無いんだよなぁ。

四三のために後援会から1500円分もの寄付が集まったの、時代もあるだろうけど四三の人柄もあるんだろうな~。あと美川君が「鬼のような兄」について話したのも同情票を集めたかも。まさか美川君、そこまで見越してあの話を…?ってカケラも思わない小市民な美川君が好き。

スヤさんのお嫁入り。美しいスヤさんの花嫁道中の映像に、四三の調子外れな自転車節が被る。映像としてはそれだけなのに、どうしてこんなに泣けるのか。スヤさんの四三への気持ちははっきり「恋」と言いきれるものではなかったように感じたし、朴訥な四三の好ましさと東京という未知の世界への憧れがない交ぜになった感情という面が大きかったんじゃないかと思う。許嫁は穏やかでいい人そうだし、お姑さんも既に信頼を寄せてくれていて、結婚生活はそんなに悪いものでもなさそうに見える。でも、それでもその淡い憧れはそのまま時を重ねれば四三への恋になった可能性もあったし、何よりまだまだ結婚なんて考えたくなかったスヤさんが、未来への憧れをひっそりと胸にしまって嫁がざるを得ないという時代そのもののやるせなさが胸を打つ…のかなぁ。

花嫁道中の映像がライティング含めて神がかって美しかった。周りが笑顔いっぱいでこの上なく喜んでいるのに対して、花嫁は俯きがちでどことなく寂しそうな表情なのも対比的で美しい。そして全てを見通すかのようなお姑さんの表情…!大竹しのぶさんの言葉にしないけどわかっている感がすごい。地主の家に嫁として嫁いでくるとはどういうことか、彼女自身も味わってきた想いがそこにはあるんだろう、ってすんなり思えるこの納得感。結婚式側にはセリフもなく映像だけで、それでもこれだけ胸に迫ってくるドラマが展開するのがすごい。演出ってすごいなぁ。

そして満を持しての三島家劇場。あの最後の和歌子様が抱えられるようにして汽車に走り寄る来るシーン。もう見ながら大号泣。これまでの和歌子様や弥太郎兄のツンシーンの回想がまた小憎らしい程にハマってて。それもこれも全てあのシーンのための積み上げだったんだよなぁって思うと、まんまと踊らされてる感しかない。先週の弥彦が現像した和歌子様がこの上なく優しそうな笑顔だったのも、このシーンへのフックだったのね。和歌子様や弥太郎兄が完全に「たかがかけっこ」を認めた訳ではないのだろうけど、それでも我が子の活躍は何よりも嬉しく誇らしいわけで、それをお互いに認めるきっかけが無いまま来てしまったこの親子にとって、海外遠征くらいの切羽詰まった別れが素直になるためには必要だったのだろうなぁ。そして多分、そのために多大に影響力を発揮したのが
シマちゃんだったのだろうなぁと思わせる積み上げが本当に素晴らしい。シマちゃんが絶対せっついてくれたんだよ。「奥様!お見送りしなくていいんですか!?してあげてください!!」って。想像だけで泣ける。

あと地味に弥太郎兄が一緒に追いかけてきてくれたのも良かった~!その時の言葉が「母上に挨拶しないか!」なのも良かった。母上が弥彦を気にかけていることをわかっていて、だからこそ弥彦から話すまでじっと待ってたんだろうなぁ。こういう表だっては見えない愛情があったからこそ、弥彦はあんなにぼんぼんとして素直に育ったのだろうし、三島家を誇りに思う若者に育ったんだよなぁ~ってしみじみ思う。

母上が渡してくれたのが日の丸の刺繍されたユニフォームっていうのがまた良い。弥彦に見向きもせず(と思わせながら)縫っていたんだなぁって思うと泣くしかない。上手い。小憎らしい程に上手い。ユニフォームと言えば四三のユニフォームは播磨屋さんが持たせてくれてたけど、あそこも良いシーンだった。特に播磨屋の坊主が可愛すぎてひっくり返った。可愛い!

散々三島家劇場で号泣したあとで、実はその隣で嘉納先生の列車乗り遅れ事件が起こっていたという構図には笑うしかなかった。崩れ落ちて電車を見送る和歌子様のすぐ横で羽交い締めにされる嘉納治五郎の図。これぞ宮藤官九郎…感動シーンをそれだけで終わらせない男…!