いだてん 第6回「お江戸日本橋」

サブタイ。お江戸日本橋ってそういう文学作品があるの?って疑問だったんだけど、民謡ってことでいいんだろか。文学作品タイトル縛りじゃないんだなぁ、そう言えば第4回の「小便小僧」も違うか…いや、でもこういう題名の作品、ありそうじゃない?とか混乱するなど。あまり深く考えないことにしよう。

予選会で使った足袋に無邪気にダメ出しした四三を「二度と来るな」って追い返した播摩屋さんなのに、ちゃんと改良版作ってくれてるあたり、かなり職人魂が刺激されてるんだろうなぁってほっこりした。

オリンピックの選手選考。前回「記録なんてどうでもいいから生きて帰れ」って語った永井が四三の世界記録にウキウキが隠せない様子なのかわいい。もちろん永井の信条は「心と体を鍛えるための体育」からブレることはないんだろうけど、それはそれとしてやっぱり記録は嬉しいというのもわかる。こういう相反する感情を持つ部分が人間らしさで、そこをこうやって愛嬌として描くところ、まさしくクドカン脚本て感じ。一貫性のなさとか自己矛盾とかをこうやって軽妙に見せて、その軽妙さまで含めて永井というキャラが練り上がっていくんだよな~。本当に面白い。

お金のない加納先生(の率いる大協)の話。加納のキャラがまだ第6回なのにも関わらず、第1回からどんどん人間的にかなり壊れた面が明らかになっていくのが面白すぎる。第1回とか普通に「偉大なスポーツ振興の祖だけどちょっとお茶目」くらいに見てたけど、その後ちょこちょこと「ん?」て思う部分を小出しにされて、今回のエピソードで「お茶目と言えなくもないけどかなりヤバい人」としてトドメを指された感ある。オリンピックに対する固執のし方とそれを実現するための執念が常軌を逸している。しかもそれなのに印象に残るのは「お茶目」な方なんだよなぁ。

中国からの留学生を日本に留めておくために自腹(?)で滞在費負担してあげたりとか、勢いと情熱だけで言っちゃう部分は絶対部下になりたくない(可児さんの顔芸w)典型なんだけど、その情熱こそが生徒や部下がついてくる要因でもあって、正に長所でもあり短所でもあるってやつなんだろうなぁ。そして多分、何か大きなことをしでかす人っていうのは、こういう長所と短所が飛び抜けていて、それ故に翻弄される人生を歩まざるをえないってことなんだろう。そういう「持っている人」のパワーを感じまくって面白かった。でもやっぱり部下にはなりたくないw

ナレで留学生の滞在費の借金を死ぬまで返せなかったって言ってたけど、それはアレか。数回前に言ってた「返す必要のない借金」てやつで踏み倒したんだろうか。それとも本当にずっと返済し続けたんだろうか。お金の件、勢いで言っちゃった後に可児さんと二人で死んでるの笑っちゃうんだけど、笑っちゃうシーンなのに画面から悲壮感とか加納の覚悟とかも伝わってくるんだよなぁ。四三を言いくるめて自費で行かせることにした後自己嫌悪に陥ってたり、笑いで包みつつじわじわと真綿で首を絞められるような緊張感もあったり。この辺も脚本と演技と演出の絶妙なさじ加減があってこその緊張感だと思う。

オリンピック選手に選ばれて感激するかと思えば、「無理です!行きたくありません!」と上ずった声で絶叫する四三の変わらない地頭の良さに唸る。この声の上ずり具合とかから、四三がいかに加納を崇めているかとかがわかるのに、あの瞬間「オリンピックって何?」と言うくらい無知でありながら「切腹ですか!」と本質を理解出来るのって四三の頭の良さゆえだよな。あと、優勝カップを返しに行った際に優しい言葉と情熱的な誘いにうっかり自腹でストックホルムに行くことになった後に、加納に丸めこまれたと理解しながら(だよな?ナレでメタ的に視聴者に寄り添っただけで、四三はだまされたままって解釈じゃないよな?)変に悲壮感を出さずにむしろスッキリとした顔で練習に励む四三というのがまた、常人離れした天才設定を際立たせてるよなぁとも思った。あと、すごいどうでもいいけど、加納先生に抱きしめられるたびに四三が「はぁっ…」恍惚とした声を漏らすの笑う。

森山未來さんのナレーションがすごく上手くて聴き惚れる。孝蔵っぽさをそこまで押し出さず、でも要所要所で孝蔵だって印象づけてくる語り口がとても上手い。一方でビートたけしを前面に押し出してる「噺」の方はちょっと聞き取りづらいかなぁ。まぁ聞き取りづらさも演出のうちなのかもしれないけど。

森山未來さんの孝蔵がどんどん味が出てきてとてもいい。憧れの落語の師匠に弟子入りして浮き足立ってる感がありつつ、その中で本質を掴みかけてる才能が感じられるのが上手いなって。あとあの勢いで走ってる演技と疾走感のあるナレーションが本当に小気味よくてドラマに勢いを付けてる気がする。すごいな~。

志ん生パートに関しては、去年の鶴瓶師匠の岩倉具視や、清盛での松田聖子と同じ括りとして見ている。ただ、ビートたけしさんがビートたけしさんにしか見えず、志ん生師匠という個性を感じることが出来ないのはちょっと寂しいかなぁ。大河の中にこういう「メタ枠」みたいな役はありだと思うので、これからこの枠がどこに着地するのかは興味深く見守りたい。

久々に昭和パートの田畑登場。最近ネットで騒がれてた喫煙シーン、これのことだったんだろうか?まぁ印象的なシーンではある…でも別に受動喫煙を推奨してると受け取る描写じゃないと思うんだけどなぁ。それにしてもこう見ると昭和時代のタバコの煙、本当にシャレにならなかったよな。今の分煙規制とか本当にありがたいし、ある一面では社会が確実に進んでいるのを実感する。

紀行で日本橋の(高速道路地下化の)再開発計画初めて知ったけど、これ実現するのかなぁ?今の圧迫感ある風景が変わるの、ちょっと楽しみかも。