いだてん 第5回「雨ニモマケズ」

追いつくどころかさらなる周回遅れ。でもまぁ自分のペースで見ればいいか…。

初回で嘉納治五郎の物語に見えたオリンピック予選会が、完全に四三側の(というか選手側の)物語として再構築される第5回。やっぱりこのドラマ構成凝ってるよな~。オタク心がくすぐられまくり。こうやってコアファンだけが純粋培養されていくのかもしれない。こういう構成を喜ぶオタクがいる一方、こういうのが楽しくない人にとってはつまらない大河って思われてるのかも。自分自身去年の大河をどっぷり楽しめなかったという経験もあって、とある表現方法を面白くないと感じる人がいることにもヤケにリアリティがあったりする。だからこそ、必要以上の叩き記事とか見たくないし、自分も面白くなかったものを必要以上に貶す感想は書かないようにしたい…と改めて自戒。

一話通してまるっと予選会レースという、結構チャレンジャーな回だった気がする。一話の裏話として、あの時のアレは実はこういう背景で…というのが判明する展開、もうこれだけで好きな設定過ぎてテンション上がりまくり。車に立ちションしてたのが四三というのは予想はついてたけど、こうやって答え合わせされるとやっぱり嬉しい。その上、一話を見ているからこその追加の面白さを足してくるこの感じ、まさにトリッキーな構成好きを狙い撃ってる感ある。好き。

三島家劇場。弥彦の優勝連発をあからさまに無視する兄・弥太郎と母・和歌子に対してプリプリ怒ってみせるシマちゃんがかわいい。弥彦に対して淡い恋心とか感じさせず、完全に女中としてお坊ちゃんに対する態度なのがモロ私好みの設定だった。これがいずれ淡い恋心に変わってもオイシイし、このままお坊ちゃんへの保護欲のままでもオイシイ。「女性のスポーツ」という言葉に目がキラーンしてたので、そっちで活躍する展開があるのかも?三島家、本当にいろいろと今後が楽しみすぎる。

それにしても弥彦のキャラが本当にいいなぁ。スポーツでいくら好成績を出しても、兄も母も見向きもしないどころか不名誉とすら思っていると自覚しつつ、それでもグレるでもヤケになるでもなく「三島家ではそれが当たり前」と(半ば諦めつつ)納得している。でもスポーツに力を入れることはやめないし、むしろ自室には自分の裸の特大ポートレート(…)を飾っちゃう。この抜群の自己肯定感の高さを感じるエピソード、本当に好き。そしてその弥彦が生田斗真さんのあの外見と本当にマッチしてるんだよなぁ。好き。

美川君~~~!!前回もめっちゃ気になる存在だった美川君が今回晴れて私の中の堂々殿堂入りするツボキャラっぷりを見せてくれて大歓喜。やたらデカい猫(あのデカさは何!?)を抱っこしてる美川君かわいかったし、ひっそりと中庭で一人で小さく拍手する姿もいじらしかった。薩摩の田舎蓮根仲間だと思っていた(というか明らかに自分の方がシティボーイ適正があると思っていた)四三が思いもかけない分野で一躍時の寵児となり、劣等感や嫉妬や羨望を感じつつ、友情や同郷のよしみで誇らしく嬉しい気持ちも間違いなくある、そういう複雑すぎる心境をあの表情とセリフと演技で表現してみせるの、本当に素晴らしかった。あと疲労で眠れない四三が兄の幻影を見た時に「なに!?怖い!!」って言ってたのめっちゃかわいかった。これからも美川君をイチオシしていきたい。私の中で明らかに前髪クネ男からの脱却が行われた感。

これまで全然四三に対して触れずに来たけど、なんて言うか勘九郎さんの四三は圧倒的な安定感のある演技で文句の付けようがない。この飄々としてて地に足がついていない感のある、でも実はしっかり現実を見つめている底力のありそうなキャラ造形って多分宮藤官九郎さん独特の味なんだろうなって思うんだけど、それを勘九郎さんが演じることで浮き世離れした感が逆に馴染むというか、絶妙な味わい深さになっている気がする。とにかく四三に対しては圧倒的主人公感が好ましい。そして今回ちょっとだけ出てきたスヤさんとの結婚までのエピソードが待ち遠しい。お見合い話が進んでいる(ように見える)スヤさんが、今後どうやって四三の妻となるのか興味がありすぎる。

裏主人公?の孝蔵(志ん生師匠の若い頃)の話もジワジワ進んでいるのが小憎らしい程に上手い。五りんがどういう身の上なのか、それはいつどこで四三の話と交差するのか、あらかじめタネを堂々と見せられているのに、それをどう使うかわからないまま気持ちが翻弄されるのが本当にもどかしい。でもこういうもったいぶった演出も好きなんだよなぁ。後で上手く料理してくれるという信頼感があるからこそだよなぁ。

私はそれほど本気のクドカン脚本作品と相性がいいわけじゃないと思うけど、あまちゃんのような「クドカンさんがNHK向けにチューニングしたテンションの作品」とはバッチリ合う気がするので今後も楽しみ。