いだてん 第4回「小便小僧」

やっと一週遅れの分まで見終わった。今週中に最新話見て追いつきたい。

前回よりもいっそう第一回を補完する話になっていて、ここまで見ないと真の第一回の面白さがわからないという構成は、こういうトリッキーな仕掛けが好きな人には嬉しい要素だと思う一方、わかりにくさで初回で脱落する可能性を考えるとリスキーだなぁとも思う。そういう(マニアックな見方が好きな)視聴者だけを対象とするには、大河ドラマという枠はあまりに間口が広すぎる気もする。枠が大きいからこそ、新しい挑戦に意味があるという考え方ももちろんあるけれども。

竹野内豊とシャーロット・ケイト・フォックスの大森夫妻、この数分の出演でキャラ立ちすぎだろ~!?何で妻の方がいちいち翻訳してるの!?ウケる。こういうごく短い尺で夫婦仲がいたって良いこと、どちらかというと妻の方が主導権握ってそうなこと、でも夫はそんな状態に満足していそうなこと、何よりこれから面白いことが起きそうなワクワク感が全部表現されててスゴい。いやもうホント、すごい。

せっかくマラソン大会で三位という好成績だったのに、田舎の長兄から「勉強だけしてろ」って言われちゃうの、この時代の「スポーツ」に対する認知の低さを表してて面白いな。今でこそスポーツで身を立てることが(もちろん一握りの選ばれた人ではあるけども)出来ることが広く浸透しているけども、そもそも「スポーツ」という言葉が広まっていない世界というのがほんの100年前くらいであるという事実が地味に重い。今でも発展途中であって、常に新しい感覚を取り入れていかなければならない分野なんだなぁって改めて気付いたりした。

四三が取り入れた水抜き脂抜きの練習法。普通に脱水症状で死にそうという感想しかないけど、これも練習法についてはほんの十数年前と今が様変わりしていることからも、当たり前にあり得るんだよなぁ。このエピソードが終始一貫してコミカルな描き方で「この練習法によって四三は自然に従う大事さに目覚めた」って簡単に済まされているの、むしろ怖さが炙り出されてる感あった。無知って怖い。あと結果的に死ななくて良かった、みたいな案件ってそこかしこにあるんだろうし、実際に名もなき犠牲は山ほどあるんだろうなって考えると…ぶるぶる。

第一回から思ってたけど、三島弥彦役の生田斗真さんが本当に見事な造形で毎回眼福。今回、天狗倶楽部の中ではリーダーとしての威厳を見せつけつつ、三島家の中では地味に自分の立場をわきまえて行動してるってことがわかって、なかなかこの人も気苦労のある人生なんだなと妙にしみじみしてしまった。スポーツが金持ちの道楽と周りから思われていることをわかりすぎる程に自覚し、それ故に表と裏を使い分けてどちらに対しても(一定の)誠実な対応をしようとしている、悩める若人に見えた。第一回であんなに威勢良く嘉納治五郎に対して「融資はまかせとけ」って言っておきながら、あの爽やかな笑顔で「ダメでした」で済まそうとする裏には、彼なりの葛藤があるんだろう。兄に対して「スポーツは国力を表す指標になるから投資してみては?」と提案した姿は、精一杯の矜持に見えた。

前髪クネ男…じゃなくて美川君は夏目漱石に傾倒中。(美川君的な)流行の最先端である「坊っちゃん」の有名なフレーズを引用して反抗するも、「坊っちゃん」を誰も読んでいないというオチ…なんだこの壮絶に胸を抉る痛々しさは…その結果「劣等生」の烙印を押される美川君。ということは後で何かドデカい巻き返しがあるのかなぁって期待してる。おそらく視聴者の思いも寄らぬ方向で…クドカン脚本への謎の信頼感。美川君、なんかこう不思議な存在感あるんだよなぁ。四三に対してあからさまな友人顔でもないし、むしろ前回「冒険世界」を押しつけてきたので悪友方向に行くのかと思ってたら、今回永井先生に真っ向から反抗したり、なんだかんだ言いながら四三のマラソンを応援してたり(控えめだけど)、この微妙な距離感がなんか結構気になる。美川君は今後も注目していきたい。