西郷どん 第47回「敬天愛人」

思った以上に最後までドンパチしてたな~。そういえば清盛とかも最終回駆け足壇ノ浦だったっけ。最後までだらけずに画面に集中できるので、最終回が巻き展開なのは結構好きかも。真田丸が終盤の盛り上がりが(私の中では)完璧なまでの構成だったので、脳内でラストはあれくらい盛り上がって欲しいと無意識に考えてしまうけど、普通に考えたらあれは三谷さんの大河のために練りに練った構成力があってこそなんだろうし、一年間撮影に追われて走り続けなければいけない制作陣にとって最重要なのは「破綻しないエンディング」で、そういう意味ではとりあえず締めてきた感のある最終回だった。うん、締めようとはしてた。その意欲は充分に伝わった。

最後の最後で政府軍の西郷助命の降伏勧告に対して、半次郎が降伏を勧めてきたのはちょっと意外だった。なんか先週までの勢いだと死なばもろとも精神で担ぎ上げたのかと思ってたので。そしてそこで初めて明かされる西郷の真意!「不満を持つ武士を抱えて死んでいく」ってそのまま全部口にしちゃうのがちょっと残念だった…!この西郷はそういう気持ちだったのか、とここで初めて知る衝撃。もうちょっとこう…匂わせてくれても…いや、第40話でそういう感想書いてるからその時は多分そう思えたんだとは思うけど、ここ数回「ボウズシサツ」で呆然としてた西郷がやたら印象的だったので、てっきり「どういうことだ一蔵どん!」って胸ぐら掴みに行く気満々だったんだと思ってたよ…。

あと、仲間相手にその真意を口にしちゃうのもびっくりした。あれっていわば目の前の仲間に対して「俺たちは時代遅れの種族で滅びた方がいいみたいだから一緒に滅びようぜ!」って宣言に他ならないと思うのだけど、それってあの時点ではみんなで共有出来ていた心境ってことだろうか。最初っからそんな心持ちで蜂起はしないと思うんだけど、「武士の不満をぶつけて新政府を倒すぞ!」から「どうせ負けるけど最後に一泡吹かせてやろうぜ!」に変化した経緯とかタイミングとかがきっちり描かれていたら、もっともっと共感出来たんだろうに…まぁ共感出来すぎると(八重の桜みたいに)見ててツラすぎて多分批判のご意見がたくさん来ちゃうので、マイルドにした結果なのかもしれない。

思えば西郷のこの流れって月照さんと入水するときと流れが一緒だよなぁって思ったりも。あの時も西郷自身は死ぬ必要はなかったけど、月照に付き従う形で一緒に入水しようとしたわけで。今回は形としては自分が先導しているけど、西郷自身は新しい政府のやり方を受け入れていた(と描かれてたよな?)のに、不満を抱える周りの武士たちを放っておけなくて蜂起したように見えたし。そうやって相手に共感して生きるというのは実際に西郷の本質だったのかもな~と思うんだけど、であればそこをもっと魅力的に描いて欲しかったよなぁ~。最後まで主人公に心情的に寄り添えなかったのが残念。

戦闘シーンはショボいなりに(ショボい言うな)頑張ってたと思う。西郷が笑顔さえ見せて戦闘モードになってたのはなかなか興味深かった。鈴木亮平さんは結構クレバーに積み上げてキャラを作る人だと思うので、この時点では西郷達は既に戦をスポーツのような気持ちで楽しんでいたという解釈なのかもしれない。自分たちが死んで行くために政府軍に戦を仕掛けるというのは果たして西郷にとっての敬天愛人だったんだろうか、というのはちょっと考えてしまうけども…。全ての人を自分を愛するように愛する、の行き着く先が西南戦争だったという結論は…このドラマを見てる限りではちょっとすんなり受け入れるのは難しいかなぁ。

西郷の最期。最愛?の斉彬の「刀をぶら下げた武士の世界は終わる」という言葉を、不平武士が滅びることで「これで斉彬様の目指した世界が」って解釈するの斜め上過ぎませんか!?!?斉彬はそういう意味で言ったんじゃないと思う…武士が藩主となって民から年貢を搾取するみたいな封建制度が終わるってことが言いたかっただけであって、別に刀に象徴される武士という存在をこの世から消すことを想定してたわけじゃ無いと思うんだよな…。なんか上手いこと言って全体を締めよう感が漂っていた。これ知ってる…八重の桜の最終回で見たやつだ…。

西郷の自決を描かないってちょっと新鮮。有名エピソードをあえて外してくるのは映像的な理由なのかなぁ。西郷の自決のシーンを描いても描かなくても、この作品の印象って変わらないと思うので、こういう改変は別にいいんじゃないかなぁと思ったり。最期に満足して薩摩の大地に仰向けにごろんとなって死ぬっていうのは、せごどんとしては最高の死に方だったんじゃないかなって。そういう心象風景だと思えば良い終わりだった。

大久保の慟哭シーンは(シーンそのものは)感動できる出来なんだけど、大久保がどういう思惑だったかわかりにくくて…まさか西郷が助命勧告に従うと信じてた?従わないとは思ってもみなかった?そうで無ければあそこまで衝撃を受けることはなかったよなぁ。従わないという可能性を(受け入れられなくて)あえて考えることを拒否していたという解釈もありか。でも大久保ってそういうキャラだったっけ?むしろ常に最悪のシナリオを想定して、そうならないために全力で西郷を新政府から追い落とそうとしてたんじゃなかった?それに西郷が助命勧告に従わないことを考えなかったとすると、ここでも大久保は西郷を全く何も理解していないことになるんだよな…その辺でね。感動する気持ちをね。奪われてしまったんだよね。一心同体の親友同士のはずなのに、一度もわかり合っていないような西郷と大久保…なんだかとても虚しい。

最後に大久保の暗殺を描いていたけど、西郷が抱えていったはずの「武士の不満」は残り、結果的に大久保の死を招いたということになるわけで、そこもとても虚しかった。でも多分この虚しさは作り手の想定内なんだよな?西郷の「自分が死ねば戦はなくなる」は幻想で、むしろ大久保の死の引き金になってるという事実を突きつけてるってことでいいんだよな?最終回でこんな皮肉を突きつけられる西郷…哀れ。

なんだかなぁ…最後までクサしたくはないんだけど、やっぱり見終わって「で、結局西郷本人は最初から最後まで何がしたかったんだろうなぁ」って総括できちゃうのがちょっと切なかった。時代に取り残された者たちを全部引っ抱えて死んで行くというのは、後世から見たら西郷に対しての最大限の「生きた意味」だと思うのでその結論で最後を描くのは納得なんだけど、だからこそ西郷がどこでその考えに至ったか、その意思をどう描くかが大事なわけで、こんな風に最後の最後で自分の口から語られて初めて「そうだったのか」って思うとか無粋な極みだと思うわけで…。つくづく残念。

唐突な慶喜とふき!ふきの言い草が相変わらず「なんでこの人はこんなにわかったような顔で西郷贔屓なことばっかり言ってるんだろ?あなたに西郷の何がわかるの?」感に溢れていて、ブレてないなって。

前回「そんなとこで解き放たれても!?!?」と私の中で非難囂々だったワンコの帰還を描いたところは百点満点を献上したい。そこだけで私の中の中園さんの株が爆上がりした。

一年間見終わって、最後までいろいろずっとクサしてきたけど、でも嫌な気持ちにならずにずっと見続けられたし、感想も全話分ちゃんと残せたので有意義な一年間だったんだと思う。久光様最高。俳優さんたちの演技がとても熱量があって、圧倒されっぱなしだった。制作陣のみなさま一年間おやっとさぁでした!