西郷どん 第37回「江戸無血開城」

台風で一週お休み。

前回、ふきちゃんが「謝ればいいのに」って言ったシーンの感想で、私怨・私闘じゃないのに謝ればいいってどういうこと?みたいな感想書いたけど、なんと!今回!衝撃の!鳥羽伏見は吉之助と慶喜のただの個人的な喧嘩だったという(このドラマ内での)事実が判明して!思わずひっくり返りそうになった。うわ~これまでのはそういう方向性の作劇だったのか!まさかの武力倒幕が個人的な不信感のみで起こされた説!!びっくりした~。ある意味、今年の大河での一番のサプライズだった。そうきたか~。前回までの不可解なシーンのあれこれが頭を過ぎり、それらは制作側にとってはちゃんと一貫した(かどうかはわからないけど)意図で作られた結果だったということがわかったことが今回の一番の収穫だった。

正直、そのアイデア(鳥羽伏見は吉之助と慶喜のただの喧嘩だった説)には全然納得できないし、仮にその部分を受け入れるとしてもまだ話がオカシイ部分もたくさんあるんだけど、これだけ堂々と「これまでは二人がすれ違って喧嘩してただけだった」という予想外の設定を出されると、意外性だけで全てが「まぁ、もうそれでいいか」みたいな気になったのが不思議。もともと私がミステリ好きで「気持ち良く騙してくれればそれだけで良作」と思うタイプなので、驚かされたことで評価が甘く(?)なったのかもしれない。いやだってすれ違いからの喧嘩だよ!?天下の鳥羽伏見がだよ!?政治工作とか薩長と幕府の駆け引きとかそういう要素を一切排除して、個人対個人の単なる思い違いすれ違い故の喧嘩だったとかすごくない!?!?これまでアンチ気味だったけど、なんかもう見ているものや見たいものが全く違う人間が作ったものなんだな~と心から納得して、今後は真の意味で何も期待せずに穏やかな気持ちで見られる気がしてきた。いや~、まさかこういう方向でねじ伏せられちゃうとはな~。マイッタマイッタ。

江戸城での天璋院と吉之助の対面。天璋院からの「慶喜の首で戦を収めてくれぬか」という提案があって、私にはこれが慶喜の了解を取った上の提案に見えなかったんだけど、そんな解釈ってありなんだろうか。これで吉之助が了解してしまった場合、天璋院慶喜と示し合わせての提案ならそれで良し。でも示し合わせていなかった場合、この後慶喜に「江戸のために死んでくれ」って説得するってことだろうか。これまで、そんな大きな決断が出来るほど天璋院に力があるという描写が皆無なので、この提案がひどく危ういものに感じられてしまう。事実、後半吉之助と慶喜が和解(?)した後の天璋院の「慶喜の首を取るのではなかったのか」という言葉は、若干「慶喜の首を取って欲しかった」という願望が含まれていたようにも感じられて、この天璋院は一体何がしたいんだ?と混乱する。わかりやすい大河どころか、それぞれのシーンで誰がどう考えてそういう行動しているのかがわかりにくいので、ついついそういう部分を考えていない脚本なのでは?と思ってしまうんだよな。実際には考えていないわけではなく、私が読み取れていないだけなのかもしれんけど。

安房と吉之助の会談。勝が放った「戦で江戸の無辜の民を苦しめて作る国になんの意味があるんだ」という言葉は、遠藤憲一さんの熱演もあって非常に心を打つんだけど、正直「今この場に至るまでに西郷はその点について一度も考えたことがなかったのだろうか?」というある意味一番今さら考えてはいけない疑問がどうしても浮かんできてしまい、いまいち熱演に浸ることが出来なかった。私は、(そう決意した過程は全くわからないけど)そういう戦のマイナス面については考え抜いた上でダーク西郷になることを決意したんだと思ってたので、この場で一度勝に言われただけであっさり考え直されてしまうと、どれだけ軽い気持ちで倒幕決意したの!?という気持ちになってしまう。せっかくダーク西郷になることにしたのなら、もっとダーク西郷を掘り下げてくれたらよかったのに…。

吉之助とヒー様の会談。いつになく正装っぽい服装のヒー様が「俺の首を取りに来たんだろう」って悲愴な顔で言うのは、事前に天璋院とそういう話になってたという解釈か?と一瞬思ったけど、多分違う…気がする。なぜ多くの家臣を残して逃げたのかと問う西郷に、フランスから日本を守るためだと応えるヒー様。このやり取りで初めて西郷は慶喜が真に日本のことを考えており、売国奴ではなかったことを悟るのだった…って待て待て待て。視聴者にとっては慶喜の真意は日本を守る一心だったというのはもう前回の勝安房のやり取りで知ってるわけで、今回もう一度その話題で今度は吉之助とヒー様の和解をやるのか!なんかこう…こんなにいい場面なのに圧倒的二番煎じ感があってもったいない気が…せっかくの見せ場なのに。

そして何より、吉之助は本当に「慶喜が日本を外国に売ろうとしてる」という疑念だけであれだけ頑迷に武力倒幕を決意してたという設定に驚愕した。そんな、顔合わせて一言二言会話を交わすだけで消滅してしまう疑惑で起こった戦争…悲劇過ぎる。いや、それならそれでもいいのだけど、だったらせめてすれ違いで戦が起こってしまった理不尽さを見せるとか、勘違いだとわかった時に自分たちが引き起こしてしまった事の大きさに打ちのめされたりしたりだな…。なんで二人して「和解できて良かった良かった」みたいな雰囲気になっているんだ…。吉之助の「民のため」って言葉が虚ろに感じられるのはこういう時。

再び江戸城での吉之助と天璋院の対面。徳川が代々蓄積してきた膨大な知識に対して吉之助が歓喜するのはいいのだけど、広げた資料が少なすぎて「えっ?これだけ?」とむしろ思ってしまったので、あのシーンはむしろ書庫のような場所に案内した方が納得しやすかった。まぁ、最後に座敷でまどろむ吉之助の絵で終わりにしたいという要望があって、そこから逆引きして小道具や場所を設定したんだと思うけど、だったらせめて部屋中に積み上げた書物くらいは欲しかった。

そりそろ明治編みたいで、どんな風に話をまとめるのか、最近はそればっかりが楽しみ。初回で糸さぁが「こんなの旦那様じゃない!」って叫んでたその真意、どう描いてくるのかなぁ~。