西郷どん 第36回「慶喜の首」

うう~~~~ん…今回も微妙だった。

なんか不満点ばかり上げてるとアンチっぽくてイヤだなと自分でも思うのだけど、アンチかアンチじゃないかと問われたら確かにアンチだよなぁ。ただクサすために見ているというよりは、自分がどこに不満を見いだしているのかをちゃんと言語化しておいて、あとで読み返すと結構(エンタメとして)面白いというのが経験論としてあって、そのために見ているので別にクサすことを目的としているわけじゃない。と自分では思っている。あとやっぱり大河という贅沢な制作体制で作られたドラマは、内容に関わらず見ていて(それなりに)面白いので、枠としての視聴層は当然制作側も認識しているはずで、イヤなら見るなというのは通用しないんじゃないかと個人的には思う。

毎週毎週、主演の鈴木亮平さんを始め、役者の方々の演技は本当に素晴らしいなって思ってる。あとは…衣装とか大道具とか、やっぱり大河スタッフは優秀だし豪華だなって思う。あとは…うーん…やっぱりキャストは神。今回の藤本隆宏さんの山岡鉄舟とか最高じゃない?って思った。だからこそ願わくばもう少し西郷という人物の生き様にもう少し興味を持っている人に脚本書いてもらえたらもっと面白かったのに…とか。いかんいかん、ついついグチが入ってしまう。

やっぱりぶつ切りのシーン繋いだだけに見えるのがなぁ。信吾がケガしたのは史実(?)なのかもしれないけど、その直前に西郷の強攻策に対して異を唱えていたという事実が全く何もその後の西郷に影響していない(ように見える)のがちょっと意味不明。ただの頑迷な戦の鬼になってしまった(=人が変わってしまった、あるいは自ら無理をして人を変えている)西郷を表しているのなら、イギリス人医師を無理矢理呼んだエピソード要らなくない?あそこでケガした身内のために医師を京に入れたというエピソードによって印象づけられるのは、西郷がただ自分が戦の鬼パフォーマンスをしていることで弟に辛い仕打ちをしている罪悪感を薄めてるだけって感じなんだよな。西郷のそういう狡さを見せたいシーンならまだわかるんだけど、なんとなく演出とか見てるとそうじゃないっぽい。見方がアンチ気味なのは確かだけど、どうもこの制作陣と感性が真逆なのか、彼らがアピールしたい主張は、私には逆張りにしか見えない。しんどい。

慶喜の大阪からの夜逃げは、どの作品で見ても慶喜のカスっぷりが味わえるいいシーンだなぁ(慶喜好き)。八重の桜でも(容保に共感して)「慶喜お前…!」ってワナワナしたもんな。でも八重の小泉慶喜は本当に大好きなキャラで、慶喜自身も全然悪印象ないのが不思議。松田翔太さんの慶喜も全然イヤな感じに見えない。というか、イヤな感じに見えるほど慶喜の内面がこれまで描かれてないし…。常に西郷の邪魔をするものとして場当たり的に巨大な敵にさせられてる感あるし。

しかし船でふきちゃんに「船が沈むのは罰が当たった」とか言われてたのは普通に素で笑えた。罰っていうのは大阪に部下を残して逃げ帰ってきたことに対してだと思ったんだけど、一緒に逃げてきたヤツに言われたくないわな。そして江戸に戻ってきてからは「西郷に素直に謝ればいい」って説教してきて目が点になった。謝るもなにも、ドラマの作劇上も西郷が過剰な挑発&戦意で戦を仕掛けてきたことで始まった鳥羽伏見なのに、一体何をどう西郷に謝れば何がどう解決するという理論なのか意味不明。そもそもこの二人の私怨・私闘ってわけじゃないのに、謝ればいいってどういう理屈なんだろう。ただ、私は別にふきという人物に対して嫌悪感を抱いているわけではなく、ふきにこういうセリフを言わせることで何を表現したいのか?という作劇部分に猛烈に不信と不満を抱いている。お手軽に「慶喜が悪い」感を出したいだけなんじゃないか疑惑。だとしたら裏目ってるよ…。

勝と慶喜。今回冒頭の大阪からの逃亡で勝が慶喜を見限って、その後あれよあれよという間に慶喜の真意(?)とやらで和解してたので、これなんて茶番?って。いやー、尺の関係で仕方ないのかもしれないけど、さすがに数十分で和解されると最初の見限ったシーンの意味がなさ過ぎたような。そしてここでようやく慶喜の真意(=外国に日本を売るわけにはいかない)とやらが公に表明されてなんかめでたしめでたしモードなんだけど、何を今さらと言いたい。慶喜が徳川家第一を信念としつつも朝敵にならないために行動してたのなんて、最初から一貫してそうだったじゃん?大政奉還も全部そのための策だったじゃん?大阪から逃げ帰ってきたのも朝敵にならないためじゃん?なんでこの時になっていきなり勝が「それなら俺が何とかしてやる!」みたいな態度に変わるの?わからない…このドラマの中の人物は私の理解の範疇外で生きてる…。

ここ、正直これまで慶喜を巨大な敵っぽく(でもハリボテっぽさが見え見えだったけど)描いてきて、さすがに慶喜を悪く描いたままには出来なくて入れてきたシーンぽく見えてシラけた。そしてここで慶喜が悪ではないってことを明示すると、これまで「慶喜は敵国に日本を売る」を倒幕の理由に掲げてきた西郷はつまり勘違いで戦を始めたってことになるんだけど、それはいいのか?濡れ衣で始まった内戦とかそれでいいのか?わからない…わからないんだ…。

山岡鉄舟。私、この人のウィキペディアの記述が好きなんだよな。会談の条件として慶喜の身柄を要求する西郷に対して、同じ条件を相手に示されてあなたは条件を飲むのですか?と尋ね返して西郷の譲歩を引き出すというエピソード。それがなんともお粗末な精神論?みたくなってて悲しかった。逸話にある最初の西郷の条件提示は、西郷が山岡鉄舟を見極めるためのブラフだったんじゃ無いかと思うんだけど(そしてその方が西郷をより興味深い人物に描けると思う)このドラマでは西郷が頑なに「慶喜を殺さないと日本が危ない!」って信じてるように描かれてた。それならそれで突き進むのかと思ったら、目の前で腹切るって言われた途端「ちょっと話を聞いてみようかな」って日和ってて、お前は一体何をしたいんだ!?と悲しくなった。

江戸に入ってきて幾島と出会って江戸城に忍び込む西郷。このあたりは主人公補正での創作エピソードで全然ありだと思うし、久々の篤姫天璋院)がお美しくてテンション上がる。来週の会話が楽しみ。あと江戸城無血開城メインなら勝安房との対談もあるんだろうし、そっちも楽しみ。ストーリーはもう正直何も期待していないけど、場面場面の役者さんの演技はやっぱり眼福なので。

番宣PVみたいなやつで、鈴木亮平さんの西郷ビジュアルが本当に西郷っぽくてビビった。この人こういう、見た目から完全になりきって視聴者をねじ伏せる役者さんだよね…ホントすごい。ただ「この明治編をやるためにこれまでの一年間があった」とか言ってて、まぁリップサービスというか宣伝文句でもあるのだろうし、あまりツッコんじゃいけないのかもだけど、これまでの一年弱で西郷と大久保に何かが積み上がっているとは到底思えないのだが、明治編大丈夫か…?という違和感しかない。不安すらない。期待がない。ただ、どれだけ駆け足で明治を駆け抜けるのかはちょっと興味ある。下世話な野次馬根性が視聴意欲となりつつある。なんだかな~とは思うけど、でもやっぱり楽しみにはしているのだ!