映画「カメラを止めるな!」ネタバレ感想

話題の映画「カメラを止めるな!」をやっと見ることが出来た。映画館に行くのは1年半ぶり?くらい?この前映画館で見たのは一昨年末に見た「この世界の片隅に」だったかなぁ。ツイッターで話題になってる映画で自分のアンテナにピンとくるものはだいたい面白いという過去の実績があるので、これも多分面白いだろうと思っていたけど、本当に文句なく面白かった!これまでひたすらネタバレ避けて来てよかった!相変わらずいい仕事する私のアンテナ!来週末まで上映してたら(しててくれ…!)もう一回見にいく予定。

ネタバレ厳禁な映画なので、折りたたみ後に感想。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ネタバレ注意。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


再度ネタバレ注意。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


以下、何の配慮もしないネタバレ感想メモ。

自分が持っていた事前情報は「インディーズの映画監督が撮った低予算のゾンビ映画で、なんかいろいろ賞を取って絶賛高評価らしく、ネタバレ厳禁でなるべく情報を持たずに見た方がいい」ということだけ。これだけでも結構情報量多いけど、見終わってみると絶妙な事前情報だったな~と。自分はあまりスプラッタ系は得意じゃない(苦手という程でもない)のだけど、事前にゾンビものだとわかっていたので心の準備が出来たし、自分の中では低予算映画=ブレアウィッチ・プロジェクトという刷り込みがあった(見たことはない)ので、ドキュメント風のゾンビ映画製作系の物語かな?という予想を無意識にしてた。ネタバレ厳禁てくらいだから最後にオチがあるのだろうし、であればなるべく感想も見ずに行った方がいいなと思って、それ以降なるべく感想記事とかは読まないようにしてた。その状態で見たので、事前情報が自分にとって適度な伏線になって、最高に楽しく騙してもらえた!ひゃっほぅ!という感じ。

最初5分くらい見ていると、なんか違和感が続々と出てくる。妙に演技や間が不安定な部分があったり、明らかにスベっているネタがあったり。突然カメラ目線になる役者が出てきた時点で「「ゾンビ映画を撮ろうとしたら実際にゾンビが出てきたパニック映画」を撮っている設定」なのだな、と確信する。ということはこの映画の最後は「はい、カットぉ~!」で終わるんだろうなと予測し、でもそんな単純な仕掛けだけで「ネタバレ厳禁」とあそこまで念押しされないだろうし、さらに大きい仕掛けがあるはず、とワクワクし始める。

違和感は続く。やたらカメラワークがたどたどしい。突然横に倒れたままアングルが動かない時間が結構長かったりする。何か画面に映らないグロいものを見ているヒロインの描写がやたら長い。突然説明口調のセリフが差し挟まれる。ヤケに冗長で、画面外の状況がわからないままの絶叫シーンの謎。冒頭のシーンと被るシチュエーションに持ち込まれていよいよ終盤という時に不自然に何度も何度も繰り返されるカット。

そうしてついにエンディング(?)で明かされるこの短編ゾンビ映画(?)の題名が「One Cut of the Dead」だったところでまず最初の衝撃を受けた。「あぁ!確かに!これまでの全部ワンカットなのか!そうか!確かに!そうか!なるほど!ワンカットだ!!」とこれまでのシーンが走馬燈のように巡り、最初のオチとしてストンと腑に落ちる。もうこれだけでも私の中ではかなり大成功だった。多分、映画好きだったり注意深い人だったら、もっと早くわかるものなのかもしれない。私も違和感はたくさん持ったし、それをいちいち「なぜ?」と考えながら見てたら途中で気付いてあたりまえなのかもしれない。ただ、私は最後に「あぁぁ!そうだったのかぁぁぁ!」と思うのが大好きだし、マジックは上手く騙して欲しいタイプの客なので、最後まで気付かずに本当に良かった。ありがとう鈍感な自分の感性。

そしてやたら短く終わったな?と思うと、その後は時が一ヶ月遡り、話は「One Cut of the Dead」のドキュメンタリー風制作風景に続いていく。この時点で、作中作好きな自分としてはさらにテンションが上がる。さっきの短編ゾンビ映画の監督役の役者が、なぜかホンモノの映画監督として話が進んでいくし、個性的なその妻はさっきまでメイクとして個性的な演技を見せていたその人だし、見覚えのある「ぽん」の護身術を趣味と語ってるし、何やらいわくありげなままドキュメンタリー風の映像が続く。クセの強すぎる俳優を集めて「ワンカット生放送のゾンビ短編ドラマ」の企画の部分で「生放送…!?!?」と企画の無茶振りに驚愕し、数々の違和感が頭を過ぎって「あぁ、生放送ならではのアクシデントかぁ」って膝を打つ。ここで2回目の大きなオチがついて、もう既に脳内でスタンディングオベーション。でも話はまだ続く。

短編ドラマの役の雰囲気からは想像もつかない、各役者のクセの強さ。硬水だとお腹壊しちゃう役者さんがアクシデントで硬水飲んじゃった場面で、「あ!!!あのシーンの意味不明な動きの意味ってこれ!!!」とわかった時の脳汁出る感覚が完全に麻薬。事務所がゲロNGと言い出すヒロインに「ん?さっき被ってなかった?」と違和感を感じて、その後に予定調和なアクシデントで絶妙なゲロ(?)を被る展開に「あぁ!!だからか!!」とわかりやすく回収される伏線の絶妙さ。監督役とメイク役が揃って出られなくなり、ホンモノの映画監督とその妻が代役に。女優だったという妻がなぜ今はその夢を諦めたのか、その理由を見ている客はストーリー内で心から理解して苦笑いする。観客の違和感の全てにキレイにオチをつける脚本の周到さにただただ脱帽する。

横倒しになったまま動かないカメラの謎、恐怖に震えて声を殺すヒロインが見ていたものがまさかのカンペだったとわかった時の会場の笑い声、意味不明なヒロインの絶叫シーンの長取りで裏に起こっていたアクシデント、何度も繰り返されるシーンの理由、全てがシーンで説明される直前に自分の脳内で「あぁ、だからあのシーン!」って小さなヒラメキがあるような感覚があって、それが本当に脳内麻薬になる。

そしてそして。最後に「カットぉ!」の声と二度目のスタッフロールで本当に本当の?メイキング?の映像?が出てきて、でもふと考えるともちろんそれ自体の構図も撮っている誰かがいるわけで、一体どこまでが作中作?入れ子?むしろメビウス?的なこのラストの構成も本当に痺れるほどに好みドストライクだった。

短編映画で感じた「ん?」の部分には全て明確で合理的な理由があり、それをもう一つ外の視点で見せられると途端にコメディになるというこの構成がツボすぎた。ミステリ的な謎解き(というかマジックの種明かし)と、ドキュメンタリーのほの暗いリアルさと、メイキングの裏話的な楽しさと、それを入れ子構造にするという構成の妙が全部合わさって、全部好きな自分にはお祭り騒ぎの楽しさだった。

いや、本当に。なぜこんなに面白かったのかというと、違和感とその解明が本当に自分の感性にピッタリ合っている(と見ている私自身に錯覚させる)ヒラメキの連続だったからだと思う。制作者にとって想定したスタンダードな観客が自分なんじゃないか、と勘違いしてしまうほどのピッタリ感。自分のツボが映画と合いすぎていたということなんだろう。だから映画界全体とかでこの作品の意義とか技術とかを見たら小粒な秀作なのかもしれないけど、私にとってはまさに自分のための最大級に面白いエンタメ作品なのであった。

これは誰かにオススメするための文章じゃなく、あくまで一回目を見てきた自分のためのメモなので、また二回目を見たあとで読み返して、あそこもここもちゃんと書いてない!また書く!ともう一回感想メモを書くまでの下書きのようなもの。まぁ、えてしてそういう文章の方が最初の興奮を残してるかもしれないけども。

映画っていいなぁと思える作品をありがとうございました!