西郷どん 第25回「生かされた命」

背景が全くわからないままの生麦事件&薩英戦争。特に薩英戦争に至っては戦闘描写が一切無しという潔さ!別に事細かく説明されたかったわけじゃないけど、イギリスがどうして二日で撤退したのかについて、薩摩とイギリス側のそれぞれの思惑くらいは見せてくれても良かったと思う…。だいたい、それまでずっと「今の日本は諸外国に勝てない」からこそ、幕藩体制からの脱却を模索してる最中って設定なのに、いきなり一蔵が「これまで斉彬の代からずっと準備してたんだし勝てるかも」とかの理屈で開戦を言い出すとか意味わからんわ!開戦論に流れるなら流れるで、そう判断した(せざるを得なかった)過程を書いて欲しかった。歴史の勉強で見てるわけじゃないけど、歴史背景って物語に浸るためにそこそこ重要なファクターだと思うんだよ…。

幕府が賠償金を払ってない風の見せ方が何よりも違和感あった。確か幕府はイギリスに賠償金払ってたはずだよな?多分薩摩と幕府の対立(=久光と慶喜の対立)を際立たせるためだと思うんだけど、慶喜に「賠償金を払う必要はない」って言わせちゃってその後何も作中で補完なしだと、本当に薩摩が無条件でイギリスに勝ったみたいに見えてしまい、イギリスたいしたことねーなって気にならない…?これまで眉間にしわ寄せて「日本が生き残るためには…」ってやってた人たちの憂いを軽んじることにならない…?そういうとこふんわりされるととても困惑する…。

相変わらず一蔵がどういう意図で動いてるかわからないのでモヤモヤする~。意図的に本心を隠してる描写ならもっと楽しめると思うんだけど、今の状態ではただ説明不足としか感じられないんだよなぁ。いずれ袂を分かつという運命が決まっているからこそ、吉之助の理想と一蔵の理想をきちんと対比して描いた方が悲劇性も増して映えると思うんだけども。一蔵が本心でイギリスに勝てると踏んだのか、それこそ幕府側の裏情報掴んでたとか、一か八かのやけっぱち作戦だったとか、そういう決断を描くことでこのドラマでの大久保という人物の本質が視聴者側に理解されると思うのだけど、なんかそのあたりふんわりしてるのでいまいち共感性に乏しい。

で、一蔵描写が足りないなぁと思う中で、メインで描かれているはずの吉之助の今回の見せ場は多分「身分など関係ない、みなで学ぼう」ってところだったと思うんだけど、演出的には感動するシーンだったように思うのだけど、どうにも上っ面というか、とりあえず西郷ageのエピソード入れとけみたいに見えてしまい、むしろドッチラケというか。これがせめてこれ以前に身分差に対する問題提示とかそれに対する苦悩とか葛藤とかあった上でのエピソードなら、まだ吉之助の成長として見られたかもしれないけど、なぜ吉之助が階級制度を越えて学問を教えたいと思うに至ったのかがわからないし、なぜその薄っぺらい言葉だけであの場にいた全員が納得したのかもわからない。あの子供らは吉之助の素晴らしさをたたえるためだけのモブに見えてしまい、生きてないように感じてしまった。

一蔵が説明不足でわかりにくい一方、こんなに尺を取って描かれている吉之助についても、サッパリわからないというのはどうなんだろう。いい人なのはわかる。朴訥で熱く優しく強い人なのはわかる。ただ、わかるのはなんかすごくいい人ってだけで、何をどう考え、どうしたいのかは全然見えないんだよなぁ。斉彬の遺志を継ぎたいというのはわかるが、じゃあ斉彬の遺志(目指すもの)とは?って考えると、やっぱりわからない。いや、開国して外国から知識を取り入れ、日本を強くしようとしてたのはわかるよ?でもそのための具体的な道筋が全然わからない。大言壮語を語るだけの口だけ男に見えてしまうので、その斉彬の劣化コピーである吉之助はさらに中身のない男に見えてしまう…辛い。

そういえばあの海辺の牢屋については、今回「囲いの中に閉じ込めておけ」という命令書だけがあり、その解釈で家の中に囲いを作って対応したというトンチの効いた解決策が提示されて、奉行?に黙認してもらうところまでキッチリ描写されてたけど、それはまぁいいんだけど、そうなるとあの海辺の牢屋というエグい設定は誰の意図で行われていたのかという新たな疑問が…。なんかそのあたり(政治的な駆け引きとか、誰が敵で誰が味方かとか)ふんわ~りしてるので、見ていてとても据わりが悪い。

最終的に吉之助は(多分一蔵の尽力のおかげで)戻ることを許されるんだけど、なぜ許されたのかわからんままなのでモヤモヤする~。久光が西郷を許したとは思えないんだけど、それでも久光が絶対反対したらまず許しは出ないわけで、しぶしぶでも一蔵の希望を受け入れたからこその赦免だったと思うんだけど、そのやり取りや過程が見たかった。

今回一番首を傾げたのが、良くわからん老人がナポレオンについて触れたところ。多分次回からの「革命編」にかこつけて、革命繋がりでフランス革命のナポレオンを持ってきたのかなぁって思ったんだけど、それだけだと安直すぎる気もする。それ以外に、何か深淵なところでナポレオンと吉之助ってシンクロするところあったっけ?個人的な印象だけど、西郷って別に革命家というイメージ無いし、むしろ明治維新に翻弄された昔からの朴訥な士族だと思っていたので、吉之助に「革命」を託されるとあまりに違和感が。その違和感を吹き飛ばしてくれるようなお話にはならないだろうという予感だけは(これまでの半年の流れを見てきて)ヒシヒシと感じるので、結局見栄えがいいから老人に「革命」の旗振らせたんだろうなぁと思ってしまう悲しみ…。それにしてもこの老人、結局誰だったんだ…?