西郷どん 第20回「正助の黒い石」

大久保正助覚醒の回。この回だけ見ると、正助は時期が読めて取り入る相手を見定めることが出来て裏工作も出来て、吉之助に羨望を抱いていて寡黙で真面目な若者に見える。その人物像はすごく魅力的だ思うのだけど、これまで見てきた自分にとっての正助ってもっと明るくて熱血でいざという時にヘタレみたいなイメージだったので、いつの間に人が変わったんだ…と困惑する。そしてその人が変わった理由もタイミングもサッパリわからないので、物語に取り残された気になる。

でもこれ、多分作っている方はあまり気にしてないんじゃないかなぁと思い始めた。今年の大河の制作側にとっては、要はその週の40分間でドラマチックにまとまっていることが大事なのかも。その結果、以前とは微妙にキャラクターの性格が異なる描写が出てくるけど、それは「成長」だったり「二面性」だったりだと勝手に判断して欲しいのかも。私は成長や二面性をキッチリ演出として見たい派だけど、みんながみんなそういうわけでは無いだろうし、役者さんの演技で勝負するドラマだと思えば、これはこれでアリなんだろうなぁ。(何度も自分に言い聞かせる)

久光の碁の相手をして、その才能を見いだされるという設定、これって史実なんだろうか。忖度してわざと負ける家臣ばかりだから、全力でねじ伏せてきた正助に興味を持つというのは一つの納得エピソードではあるんだけど、ドラマを見ている限り、正助の方もそれ(=久光に一目置かれること)を見越して勝負を挑んでる感があって、その手腕が見え透いている上に大した策じゃないあたりが、何というか小者感というか、小賢しい感じになってしまっていて、なんだかなぁって気持ちになったりする。冷徹な参謀を目指しているけど器が足りていない感がすごいので、これが狙ったキャラ設定だとしたら演技的にすごいんだけど、本当にそんな狙いなんだろうか…これまでの積み上げ的に、そんな複雑な人物設定する?というそこはかとない疑いの気持ちが。

あと、正助に「国父様」と言われてすぐその気になっちゃう久光、めっちゃ最高だったな!偉大な兄である斉彬に対する敬愛とコンプレックスがない交ぜになってるあの感じ、とても素晴らしかった。兄と比べるとどうしても見劣りしてしまい、自分でもそれを自覚していて、でも藩主の父としての自負もあり、そこを擽られるのは嬉しい。でもやっぱり兄は純粋に尊敬してる。そういう混じり合った複雑な感情をチャーミングに見せてくれるよなぁってしみじみ思う。青木崇高さん最高!

西郷派(=斉彬派)から久光派に鞍替えしたように見える正助に対して、仲間たちの反発。私自身にあまり覚えようとか調べようとかの意欲が無いのが一番の理由なんだろうけど、あまりに仲間一人一人の印象がなさ過ぎて、誰が誰だかいまだにわからない。北村有起哉とかろうじて堀井新太だけ(見た目で)判断つくものの、同じような顔の人が同じように吠えてるだけという印象。もうちょっとこう、仲間たちの背景を調べたくなるようなキャラ付けをですね…せめてもう少し名前と性格が結びつくような何かをですね…。

桜田門外の変はあっさり気味だった。以前、時代劇の裏話?的な話題で、雪のシーンはリアルなセットを作るのが手間&コストが高いという話を聞いた記憶があって、それ以来雪のシーンを見るたびにそのことを思い出す。今回の桜田門外は「ずいぶんコスト削ってきたなぁ」という印象の強い演出だった。無いよりいいけど!無いよりいいけど!!でも佐野史郎さんの井伊直弼の演技は素晴らしかった。最期まで憎らしいくらい冷静で毅然としていて、目指す方向は違ったけど、井伊直弼もやはり己の正義のために命をかけたんだろうなぁって思えた。