西郷どん 第19回「愛加那」

絵に描いたような悪代官な平野様@真田丸(今作の代官としての名前は田中某)に砂糖を隠し持っていたという濡れ衣を着せられた佐民たちを、吉之助が熱い演説と怪力で救い出し、その結果とぅまを妻とした回。物語に破綻は無いし、役者の熱演には目を奪われるし、奄美大島美しいし、楽しく見ているのだけど、やっぱり所々引っかかってしまう。

先週「殿は民のために」「私たちは民ではなかった」というやり取りをしたことで、吉之助の中の斉彬像が変わるか!?価値観の変革が来るか!?って思ったけど、今週見る限りでは吉之助の脳内では「斉彬の真の想いを代官クラスが理解していなかった」となっているように見えたので、結局そこかよ!?信者安定だな!?みたいな気持ちに。ガッカリだよ。代官田中のセリフから、薩摩にとっての砂糖の重要性は伝わってくるのだけど、斉彬が過剰な取り立てを是としていたか否か?は結局読み取れないんだよな。「富国強兵」の名の下に湯水のように重税で取り上げた金を使った藩主斉彬、という側面は面白いテーマになると思うのだけど、今のところ物語上の厚みにはなっていない感…今後なるの…?

吉之助の現在の藩内での立場というか扱いが良くわからない。月照の逃亡を助けたことで幕府に目を付けられている?ので行方不明とするために偽名で島送り?というのが、ドラマだけ見てる上での予測なんだけど、島送りしてまで吉之助を守りたいという藩内の空気がさっぱり感じられず(正助だけが必死だったように見えた)、吉之助が薩摩藩内でどういう存在感なのかも不明で、実家はあんなに困窮してるのに米俵が送られて来てたから藩内の偉い人に協力者がいるんだろうとは思うんだけど、それって誰?どういう理由で?何を目的に?ってわからないことだらけで困惑する。そもそも吉之助ってこの段階でそれほどVIP扱いされる立場なの??いや、歴史上はそうだったのかもしれないけど、ドラマ見てる限りは典型的な「斉彬の個人的なお気に入り」にしか見えず、藩内で重要視されてるようには見えないんだが…。正助からの手紙にも「悪目立ちするな」って書かれてたし、一方で田中某@代官は正体を知って顔色変えてたし、どう考えればいいのかわからない。今後見てたらわかるのかもしれないけど、前提知識なんだから最初に説明して欲しい。

とぅまの感情の動きは、二階堂ふみさんの演技の凄さもあってめっちゃ良くわかる。もともと「やまとんちゅ」が嫌いなのに、事前に「お前の夫が来るよ」って言われてたから、最初から気になる存在ではあったんだろう。島の風習を理解しようともしない「おなごが入れ墨など」「こんな飯が食えるか」の言葉に印象最悪からスタートして、それ故に悪代官を恐れずに島の子どもを救おうとした姿に好感度が急上昇ってヤツだよね。吉之助の滲み出る人間的な朴訥さにコロリとやられた人間の一人でもあるんだろう。そういう流れを想定しているというのはわかる。ちゃんと読み取れる。わかってるんだよ。たださぁ…。

やっぱり吉之助が奄美大島と薩摩の関係に何の答えも出していない状況で、あそこまで突然「妻にして欲しい」ってなるのは唐突すぎた感ある。そういう筋書きが決まっていて、そのために強引にエピソードを盛った感が強かった。尺があるからね…仕方ないんだけどね…。見てるときは二階堂ふみさんの演技でねじ伏せられるんだけど、改めて考えると「吉之助にそこまで惚れる要素あるか?」と思っちゃうんだよなぁ。そういう意味では、本当に役者の演技力が素晴らしい作品でもあり、そういうところを楽しむのがいいんだろうなぁ。