おんな城主直虎 第47回「決戦は高天神」

ドリカム? 副題の元ネタはドリカムなの!?


信康事件から家康が、そして徳川家が再び立ち上がる回。前回、石川数正が瀬名と一緒に姿を消したということが家康含め家臣に知れ渡ったことで、この後石川数正の立場ってどうなっちゃうわけ?って心配だったんだけど、ちゃんとこうやって帳尻合わせてくれるので、自分の中での森下さんに対する信頼感が(これまでも高かったのに)さらに爆上がり。数正は前回瀬名に「信康様の無事を見届けたら某も」って言ってたし、無事どころか信康がああいう結果になったら後を追う以外ないよね…(でも史実的には…?)ってところからの忠勝のスーパーファインプレイにそう来たか!ってテンションが上がり(忠勝の嬉しそうな表情がまた愛しい)、何より忠次の「共に生き恥を晒してくれ」ってセリフに心を打たれた。瀬名に続き信康まで失ってしまった数正が、今後も徳川に仕えていこうと思うにはそれなりの説得力が必要だと思うのだけど、あの忠次の言葉と表情には心を動かされるものがあった。そして、一度は頑張ってみようと思ったものの、その傷は癒えずに後日の数正の出奔となるんだろうなぁって納得できてしまった。すごいよ~二年越しの納得スゴいよ~!


忠次の描き方がめっちゃいい。近藤殿もそうだったけど、こうやって視聴者にとって不快な結果をもたらす原因となった人物を、不快な部分を誤魔化さずに書きつつも最終的に憎めない人物に落とし込むのが本当に見事。おそらく一度心底憎らしいって思ったからこそ、その反動で感情が揺り戻してるんだろうなという理屈はわかるんだけど、実際にこうやって不自然じゃないように描くのって実はすごく難しいよなぁ。さすが森下さんとしか言いようがない。

 

分裂の危機にあった家康が岡崎の家臣の結束を高める演説。反省の言葉に対して康政が「そこまで言わなくても」って止めるのもこの人らしくてイイヨイイヨって思うし、それを止める万千代の成長の著しさにもイイネイイネって思う。万千代が康政と違う面で家康の信を得ているとわかるのが素晴らしいし、何よりも尊いと思うのは、康政も万千代のそういう(自分には無い)才覚を認めた上で内心嫉妬してるところだよな。内心嫉妬しつつも理性で抑えてる&万千代自身に対して純粋に一目置いてるのが滲み出てるところが最高。そしてそれをこれまた上手く演じてくれるんだよなぁ。

 

副題ではさも大戦だったような印象だけど、ドラマ内では戦シーンすら無かった高天神の戦い。雨の中で苦渋の表情を浮かべて開戦を命じる家康の、織田に対する立場の弱さが印象強い。ただ、織田は確かに憎らしい描かれ方をしているけど、その根底は一貫して「徳川はあまり強くなりすぎてはいけない」という理念に基づいた扱いなのが面白いなって。家康の高天神攻めでの「そのまま武田を囲ってしまえ」という方針はつまり、織田にとっては武田の力の一部が徳川に流れてしまうだけで、織田の利益にはならないってことなんだろうな。とすれば、この策を妨害するのは織田側の戦略として正しいし、家康も多分それがわかるからこそ従うしかなかったんだろう。徳川があからさまに(信康や瀬名の時のような)弱体化させられるという訳じゃないというのも、反発するには弱い題材だというのもあるかもしれない。

 

この作品の信長の言動は非情だけど、家康を憎んで嫌がらせしてるようには見えないのって地味にすごい。それは最終的に家康が望んだ駿河をきちんと仕分けしてきたことからも読み取れる。正しい働きには正しい報酬を。ムチで締め付けた後にはきちんとアメを。絶妙の加減で「それでも織田に逆らうよりは従う方がメリットが大きい」と思わせることに成功してるってことで、信長をそういう面で優れた人として描いているからこそ、こんなにも憎らしい信長を結構好意的に見てしまうのかもしれない。