おんな城主直虎 第42回「長篠に立てる柵」

今回初っ端からず~っと万千代の話がイキイキと語られて、途中でおとわのいる井伊谷に場面移ったら「あ、そういえば主人公は直虎だった」って素で思ってしまうくらい万千代の主人公度数が高すぎて楽しい。もうこのままあと半年くらい延長して井伊直政物語が見たい。万福との二人三脚出世物語が見たい。家康&家臣団とのやり取りが見たい。今回終わったらあと8回とか少なすぎるでしょ~!?!?

家康のキャラの描き方が本当に素晴らしい。今川で人質として過ごしていた少年時代(阿部サダヲの13才演技!)から、気弱なのかしたたかなのかいまいち視聴者にはっきりと見せない複雑な演技で、これぞ阿部サダヲという味わいだったんだけど、今回ついに花開いた感じだなぁ。最近、おとわと腹を割って話した時にも片鱗が見えていたけど、人を見る目が優れてるってことなんだろうなぁ。じっと息を潜めて目立たぬように力を蓄え、まわりの人物をじっと観察して、そこからいろんなことを学んできたってことだよなぁ。それは家康自身の気質もあるだろうし、環境からそうならざるを得なかったという事情もあったのかもしれない。複雑な家康というキャラを、阿部サダヲがなんともチャーミングに演じることよ!

信長と信康の義親子関係がめっちゃ不穏。前にチラッと出てきた時も思ったけど、海老蔵氏の今回の信長って超越してる感を全面に押し出してきてる感あって、心底何を考えているのかわからない。去年の吉田鋼太郎さんの信長もセリフがないのにあそこまで存在感出しててすごいって思ったけど、それでも真田丸の信長は武将って感じがした。なんていうか、人としてのカリスマが溢れてた気がする。でも今年の信長ってゲームのラスボス感をそのままリアル実在にした感じというか…あえて言うならウェスカー@バイオ的な人外感というか…不気味さが違うベクトルに振り切れてる感じ。信康に茶碗を下賜するのを断られた時のあの表情とかも、全然感情が読み取れない…。この時点で既に信康は信長の不興を買ったと見るべきなのか、この時はまだ義息として取り立ててやるつもりなのか、読めない。そこが面白い。

信康と家康の関係は良好なんだなぁ~これまでそこそこぼやかされてたけど、こうやって改めて親子がきちんと理解し合ってるのを見せられて、いよいよ悲劇の幕が開けたことを察知する視聴者。政次のあの回の次週に龍雲党のあれを持ってきた森下脚本だから、覚悟を決めて心穏やかにその日を待ちたい。うっうっ…;;

今回岡崎城で大久保が織田の作戦に噛みつくシーン。イヤミったらしく「岡崎の者が織田をつけあがらせているのでは?」的なこと言ってたし、家康家臣が岡崎と浜松で派閥が出来てしまったという説をじんわり表現してて、これだから大きくなる組織ってヤツは…感がすごかった。そしてその中でも家康と信康がちゃんと親子としてわかり合ってるのが…(>_<) この先の悲劇がわかってるだけにツラい。これまでずっと一人で碁を打ってた家康が初めて(だったと思うけど)碁盤を挟む相手が信康かぁ~~~~~~~!!(涙)

一方、留守居を任された万千代に自分がやりたくない武具の手入れを押しつける酒井小五郎(酒井忠次の嫡男?)まじ小者っぽくていい!この時代の小姓の若髪っていうの?あれ妙に可笑しみがあって可愛くて好き。それに対抗して万千代が力いっぱい武具の手入れをするのも若造っぽくていい。明らかに小手先の小細工とかするくせに、万千代の性根はまっすぐなのがいいよな~。しのの教育のたまものだし、松平源次郎という父親のおおらかさもあるんだろうなぁ。小太郎に武具の手入れの功績を取り上げられて悔しがる姿も良かった。頭に血が上って本多正信を殴ってしまい、その後素直に謝るところまでがキャラ付けとして完璧。アツくなりやすいけど、ちゃんと自分のことを客観的に見られる賢さが備わってるんだよな。

そして今回の目玉、色小姓万千代誕生の巻。榊原康政に「殿の寝所に」って言われて「え?そういうこと?」って自分の肩を抱きながら万福に表情で問いかける姿が可笑し過ぎた。その後「新しい褌を持て~!」ってところまでひたすら笑った。面白かった! でも冷静にこの場面を読み解くと、実家(この場合松平ではなく取りつぶされた井伊家)の後ろ盾がない万千代にとっては上にのし上がるために使えるものと言ったら己の才覚とその身だけというのも確かであり、それを所望された時の心許なさってどれほどだろう。そう考えると重いよなぁ。実際にはゲラゲラ笑いつつ、その裏にあるものをちゃんと描いてるってことだよな。

実際には家康の呼びつけは夜伽ではなく武具の手入れの功績の確認だったわけだけど、この家康の人を見る目の描き方絶妙だよなぁ。いつもと手入れの行き届きが違うから別の者がやったと気付いて、おそらく万千代だろうと見当を付けて実際に確認して誉めてやる、このデキる上司の見本みたいな家康像に感動した。そして家康の上司テク(?)にコロリとやられちゃう万千代がまた可愛い~~! そりゃあ、あれだけ後ろ盾のない心細さを味わった後で、誰も気付いてくれないと思っていた自分の一生懸命さを、ちゃんとわかってるよって言って貰えたら、この人のために粉骨砕身頑張ろうって思うようになるってもんよ。それまで万千代にとって家康は「井伊家再興のための権力」だったのだろうけど、これを機に「万千代自身が仕えるべき相手」になっていくのかもしれないなぁ。

それにしてもこの時の家康の表情の変化も見事だったと思う。全くそういうつもりの無かった家康が、感極まった万千代を見てふと「それもいいか」と思うまでの気持ちの変化が手に取るようにわかって、見てるこっちが恥ずかしかった! 碁盤と碁石をずずいと脇によけて迫るあの家康の仕草にキタワァ~!って思ったもんな。でもわかる~あの万千代の表情は本当に愛らしかった~。菅田将暉くんすごいよ…ごちの時からいい役者さんだなぁと思ってて、最近歌とか出してて「大丈夫?」ってちょっと思ってたけど、ここぞという役でこれだけ見事な演技を見せてくれるなら何やっても何の心配もいらないわ…いつか大河で主役張るんだろうなぁ。楽しみ。

オマケの信長の茶碗話。まさかの長篠での六左の材木調達による恩賞というウルトラCでの龍潭寺所蔵の茶碗の話に繋げてきた。再びここで六左の技術を持ってくるなんて思ってなかったからビックリした…近藤殿だけではなくて、天下の信長にまで認めて貰い、恩賞まで貰っちゃうのすごい。そしてそれを「自分は家康の部下だから」って理由で龍潭寺に寄進する近藤殿の実直さもいいなぁ。場と立場をわきまえた者って感じがして、すごく好感度が上がる。やっぱり上手いんだよなぁ。


南渓和尚が思いっきり自分が拗ねてる口調で「万千代は拗ねておるぞ」って言ってるの可愛かった。
・直虎が長篠まで読経に行く時にちゃんとついてきてくれる傑山さん萌え。
・長篠の戦場のシーン、死体らしき鎧姿の武者がそのままうち捨てられているのが壮絶だった。