おんな城主直虎 第41回「この玄関の片隅で」

万千代と万福の名前が自分の中でようやく馴染んできた。

今後の流れが万千代の立身出世物語になるとして、でも物語の主人公は一応直虎なわけで、どうやって物語を作るんだろう?って興味津々だったんだけど、今日の回を見て見事さに唸る。そうくるか…万千代の「大人から見ると若さだけで突っ走ってるひよっこ」な面を全面に押し出した上で、それを時にフォローし時に諫める役割をおとわに持ってくるのか…上手いなぁ。ここの万千代のキャラ立てがまたあざといほどに上手い。若さゆえの無鉄砲さとか小賢しさが、こんなにも愛らしい(でもクソ生意気な)ヒーロー像に落とし込めるんだなぁ。これが主人公だとウンザリしそうなほどアクが強いんだけど、主人公の義理の息子だと思うとなんとも微笑ましく見守る気持ちになるから不思議。無邪気な小賢しさをここまで可愛く演じる菅田将暉君がすごいのかもしれない。

今回本当に柴咲コウさんのおとわの動きが素晴らしかったな~。端々のゆっくりと落ちついた所作が、おとわのこれまでの経験から来る成長を感じさせてくれた。周りを見て小さなことにも心を配り、万千代の都合のいいお願いに対して「どう井伊谷として近藤殿との仲を悪くせずに目的を達成するか」と頭を使う姿が感慨深い。頭から万千代を叱るのではなく、さり気なく家康に繋ぎを付けて「甘やかさないで欲しい」ってお願いするのもいい。以前からは考えられないこのスマートさ!それもこれも、全て政次の死から井伊を諦めるところまでのどん底を経験したからこそなんだよなぁ。

あと初陣に出たい万千代の手紙に苦い顔をして、南渓和尚が「戦に行かせたくないか」と聞いてくると「武士として名をなすのに是非もなし」って答えるのがすごく良かった。そう口では言いながらも内心は戦に行かせたくないと思ってるのがありありとわかる演出も良かった。セリフで「戦はイヤだ」って安直に言わせるよりも、よっぽど戦の本質を憂いているのが伝わってきた。万千代にとっては「自分が」名をなすことが最重要であるのに対して、おとわにとっては「井伊家の人々とそれを支える民百姓が」穏やかで暮らすことが最重要なんだよな。そして素晴らしいと思うのは、おとわはその違いをきちんと認識した上で、万千代の価値観を否定しないこと。心のどこかで「そうやって生きる道もある」ってきちんと納得していること。そういう相反する人間の感情をちゃんと描いているのがいいなぁと思う。

井伊谷劇場。近藤殿が相変わらずいい味出してる。井伊家の面々に対して好印象は持っていないんだけど、信頼はしているっていうこの描写が優しいなぁ。普段かなりウザがってるくせに、家康の材木調達の指示に対して即座におとわに相談する素直さがなんとも可愛い。そして(知らないままとはいえ)自分を殺そうとしていた高瀬に対して信頼ぶっちぎりなのがまた可笑しい。六三の物語がまた良かったな~。まさか材木泥棒から始まったエピソードが「木材の切り出し技術」という形で六三に武功を立てさせるという壮大な伏線の再回収に持ってくるとは…

今週の之の字。おとわと同じく、ずいぶん貫禄のついた直之の描写に萌える~。松平に行く弟に「中野家のことは気にするな」って請け負ったり、近藤殿に六三のいいところ(民に好かれるってアンタ…w)を伝えたり。何より木材調達に張り切る六三を見守る目が頼もしすぎるんだよ~。最後はおとわと二人で鋸引いてたし、理想の主従過ぎてゴロゴロしたい。

今週の万千代万福。悪口を喚き散らす万千代を布団被せて羽交い締めにする万福再びw 万千代が万福に全幅の信頼を置いてる(ことにすら自覚がなさそうな)描写がホント可愛くて好き。万福がいなければ、万千代はあそこまで天真爛漫に育たなかった気がするよなぁ。そして万福が苦労を苦労と思ってなさそうなところも大好き。私、銀英伝のラインハルトとキルヒアイスには全然萌えなかったんだけど、万千代と万福にはごっつ萌える。なんだろうな~不思議。

万千代が自分に都合のいい時だけ「まだ十五才なのに~~~!健気な息子が頑張ってるのに~~~~!ころ~~~~~す!」って吠えるのを見て大笑いする。家康に「もう一五才なので初陣を」って言ったその口で!ほんっと小賢しい子供なんだけど、それがここまで愛らしさになるのが演技と脚本と演出の力だよなぁ。