おんな城主直虎 第14回「徳政令のゆくえ」

政令って日本史で習ったけど、歴史っていうより経済学だよね…いまだに徳政令を出すことの具体的なデメリットがよくわからん。昔、徳政令の制度を知ったときに領主権限で借金踏み倒せるなら、踏み倒せばいいじゃんって思ったことを思い出した。徳政令を出すような領主の元では、真っ当な商人は商売をしたがらないから、経済がめちゃくちゃになって結局財政的に立ちゆかなくなるってことかしら。あるいは、徳政令を一度出すと、次から二度とお金を貸してもらえなくなって結局ダメになるってことかなぁ。どっちもか。今川ほどの実力があって、駿府という商業的に中心となる(商人にとってメリットの大きい)都市を抱えている国であれば徳政令って言うのは切り札になり得るけど、井伊のような地方の弱小にとっては次に金を貸してもらえないっていうのはダメージ大きいだろうしなぁ。
 
みたいなことをつらつらと考えながら先週からの流れを見てたんだけど、こういうことを考えさせてくれるのが、こういう歴史ドラマの良さだよなぁと思う。勉強になるドラマってこういうことだよね。ただ、勉強のために大河ドラマを見ましょうっていうのはやっぱり違うと思うんだよな。今、この年になったからこそ面白いんだろうなぁと思うと、作品との出会いのタイミングって難しいなぁとも。いやー、それにしても大河清盛との出会いは私にドラマの見方を教えてくれたよなぁ。いい時にいい作品に出会えて良かった良かった。
 
女性だからという理由で、家臣に領主として認めてもらえない直虎。中野くんに「男女の仲なのでは?」とか揶揄されたりするあたりが超テンプレ。中野くんこのままだとグレてる不良家臣一直線なんだけど、この潔いほどのヤンキーっぷりはいずれ手のひら返しで熱血家臣になるんだろうなぁと思わせてくれて、見ながらニヤニヤしてしまう。今回既に新田くんは直虎親衛隊に鞍替えしたし、中野くんが覚醒するときも近いか。多分来週だろうな~、ニヤニヤw
 
今川から徳政令を出せという命令が来てしまい、それに従わないために「寺に寄進してしまった」という方便で応じるっていうのが面白い。それがさらに今川の仮名目録からの小手先術だっていうのがまた痛快。結局のところただの詭弁なんだけど、こうやって詭弁で時間を稼ごうとするという発想が今までの井伊にはなかったよなぁと。それを初めてするのが、領主として経験の全く無い直虎っていう解釈は上手い。要は初心者だからこそ常識にとらわれずに一手が打てるってことだよね。
 
今回、直虎が方久をまるきり信じているわけじゃなく、金にあざとい部分を信じると言い切ってたのが興味深かった。直虎は多分人を見る目がある人として書かれていると思うんだけど、そんな直虎が政次のことだけは正しく評価出来てないのも面白いなぁ。良く考えると、直虎と政次ってちゃんと本心をさらけ出し合ったことってないんじゃない?直親と政次は、おとわという共通の思い人がいて、お互いにその思いを共有していて、ライバルでもあり同士でもあった。だからこそ嫉妬で反目し合ったりわかり合えない日々が続いたけど、一方でわかり合うことを受け入れれば、唯一無二の主従になれた…はずだった。直虎と直親はむしろ最初から許嫁として未来を共有していた。その未来が叶わないことが決まっても、一度未来を共有したという絆そのものは残った。でも、直虎と政次は直接は何も共有していない。子供の頃仲の良かった三人のうちの二人であるというだけ。そして三人のうちの二人であるからこその勘違いや捻れみたいなものが、実際以上に二人の間の距離を広げている気がするなぁ。
 
しのちゃん。あんなに憎かった政次に後見をさせる方を選ぶという視野狭窄っぷり。まぁねぇ、直虎に対しては最初から「直親の心の伴侶」みたいな嫉妬心があるんだろうから、仕方ないと言えば仕方ない。それでもやっぱり、この頑なさはそのうちデレが来るんでしょ?と思わせるから上手いよなぁ。こういうのって、本当にデレが来たら「ほらぁw」って思えるし、デレが来ない場合もそれはそれで別にどうとも思わない上に、今みたいなツン時にあまりヘイトを貯めずに見ていられるので、テクニックとして上級だよなぁって思う。でもさー、しのちゃんが「私は認めません!」てぷりぷりしてたシーン、しのちゃんが認めなくても誰も何も困らないっていう、無力さをまざまざと見せつけられるシーンでもあって、かなりエグいよねぇ。妹にすら「理屈じゃないから。放っておいておk」って言われるってどんだけ…さすがにちょっと気の毒になる。
 
政次。登場シーンのほぼ全てで鉄仮面を被って憎らしい敵役を演じつつ、最後の最後で「知っておる。昔からな」と一瞬見せるあの泣き笑いのような表情!すげーすげー!「領主は大事なものを盗んでいきました。百姓たちの心です」ってか!そんな直虎(おとわ)だからこそ守りたくて、そんな直虎だからこそ素直に守られてはくれないんだよなぁ。今川からの呼び出しは井伊にとってはイコール天誅であって、直親に続いて直虎すらも抹殺されるかもしれないピンチ。政次はこの事態だけは避けたくて、これまであれこれと直虎のことを妨害してたんだろうに…でも直虎が領民から慕われている姿を見て泣き笑いしちゃうあたりがほんっとマゾいな!
 
直虎。取り立てて賢いという描かれ方じゃない。竜宮小僧として頑張ってた姿を見ていた領民は慕ってくれるけど、それは「あのお姫様がよく頑張ってるよ」っていう慕い方であり、領主として忠誠を誓ってくれてるわけじゃない。直虎自身、我慢強いわけでも、聡明なわけでもない。ただ、ここぞという時に鋭い閃きを見せる。誰に対しても誠実であろうとする。そして、そういう姿勢が領民の心をとらえて、徐々に徐々に味方が増えていく。賞賛したりひれ伏したりするんじゃなく、同じ方向を向いて一緒に進もうとしてくれる仲間が出来る。私は直虎にちっともこれっぽっちも共感しないけど、それでも見ているといつの間にか直虎を応援している。そういう心境にさせる魅力が、直虎には確かにあると思う。
 
その他
・百姓の中によく見た顔をみかけて、誰だっけ…誰だっけ…と脳内データベース検索して「ごちそうさんの室井さんだ!」とスッキリ。室井さん、百姓姿すごい似合うw
傑山さんの筋肉美押しがすごいwww