おんな城主直虎 第28回「死の帳面」

先週、次回予告のサブタイ(デスノートってあんた…)見てひっくり返ったんだけど、見終わってみればこれまでの中でトップクラスの「サブタイが内容を表す」事例だった。だったんだけど…何度見てもこのサブタイをどう受け止めたらいいのかわからんw 一見ギャグにも見える「そのまんま感」なのに、逆に内容は大河らしい重厚さのある回で、そのギャップが妙に可笑しい。その可笑しみが狙ってるのかたまたまなのか、そしてスベってるのかツボってるのか、自分の受け取り方すらうまく言葉に出来ない。でも一つだけ確かなのは、このサブタイすごく勇気あるなぁって…いろんな意味で。

寿桂尼様のラスボス感はこれまでも何度も何度も垣間見てきたけれど、今回は今川メインと言える内容で、もう本当に寿桂尼様無双。マツケン信玄がなんかもうコテコテ作りすぎって感じのビジュアルで笑ってしまうんだけど、その信玄を喰うくらいの迫力な寿桂尼様ハンパない。この二人のやり取りが本当に食えない者同士の会話劇でシビれた。こういうの見ると大河だなぁ!って思う。説明セリフを極力入れず、建前ばかりのセリフだけのやり取りで本心を匂わせるってかなり高度な技だと思うので、演技と脚本と演出の職人技を見た心地よさ。ここぞという時の諱(晴信って諱よね?)とか、信虎の名での釘差しとか、ほんっとうにゾクゾクした!はぁ~いいもの見た。

氏真のぼんぼんっぷりがさぁ~!これまでも今回も心底お坊ちゃんなんだよなぁ~でも無能って描き方じゃないのがいいな~って思ってたけど、今回際立ってたと思う。寿桂尼様と比べたら凡庸ではあるんだけど、凡庸であることのマイナスを正しく把握できてしまう程度には頭がいいし、育ちもいいんだよな…ってわかってしまうこの絶妙さ。そういうことがちゃんと把握できるんだから、やっぱり無能ではないんだよ。寿桂尼様にコンプレックスを感じながらも、お婆様大好きなんだよねぇ…さすがいいとこのお坊ちゃん…白塗りに逃げても「まぁ、わからんでもない」と思える脚本の優しさ。そして死の際にいる寿桂尼様に雅楽を聞かせてやるというこの雅さよ…へっぽこだけど…今川の武家らしくない文化力がとても気になる。今川の大河とかあったら見たい。めっちゃ地味で視聴率伸びなそう。久々の義元と龍王のNew収録シーンに涙。本当に雅なおうちだったんだよなぁ…。

直虎と寿桂尼様のご対面。これまで井伊にとっては「駿府への呼び出し」はそのまま「当主の死の危機」だったけど、今回ようやく言葉通りの気楽?さで出向けるようになっていて、着々とこれまで地盤を固めてきたんだなってわかって感慨深い。寿桂尼様と直虎の対峙シーンは、冒頭の信玄との対峙に勝るとも劣らぬ迫力だったー。ただただ気力でぶつかるしかなかった前回(第15回)と比べて、直虎はずいぶん落ち着いているし、寿桂尼様は穏やかなお顔をなさっているし、たった三年のうちで変わったもの、それでも変わらないものがあるんだなぁと実感する。そして直親の話題に及び、直虎が当時の今川の仕打ちを「お家のためにはそういう決断をしなければならないこともある」と受け入れると、寿桂尼様から「おぬしのような娘が欲しかった」という最大級の褒め言葉が…!涙ながらに「今後も今川をなにとぞ」と請われて、感極まって「ご心配なさらぬよう」と応える直虎。でも政次とは着々と裏切る算段を進めていて、その覚悟に再び直虎の成長を感じるのであった。

と直虎の成長を上から目線で見ていたところでいきなり回収されるサブタイトルの伏線!覚えが悪くなったと寿桂尼様が書き付けていた帳面には滅ぼすべき領主名が…!という見事な構成に唸った。そして直虎とのやり取り全てを思い返して戦慄。寿桂尼様にとっては、直虎はかわいい愛弟子のようなもの。その実力と覚悟を認めたからこそ、愛しく頼もしく想いながら、それ故に滅ぼさざるを得ないという判断になるこの矛盾。「衰えた主家に義理立てなどしない」相手だと認められた直虎の成長が嬉しいような、さらには直虎の行く末まで暗示しているようで怖いような。直虎の覚悟を「自分と同じ」と寿桂尼様が言ったってことは、つまり直虎にも寿桂尼様と同じような決断が求められる日も来ると…あー怖いよー。主人公の成長が嬉しいのに、それがこんなにも不吉だなんて…!

 

おんな城主直虎 第27回「気賀を我が手に」

中村屋始め気賀の商人衆が「どうせ誰かが治めなければならないなら、せめて井伊に」と言ってくる展開。そこで一度「一晩考えさせてくれ」って言えるのが直虎の成長だよなぁ。昔だったら絶対にその場で「うむ!」って承諾して、後で政次に嫌味言われる展開だったでしょ。そして案の定政次との深夜の囲碁!もうすっかり「助言を求めるなら政次」っていう関係になっていて、政次もそういう状況を受け入れてる…それにしても、この囲碁の開催はどうやって決まるんだろうか。もう既に定期的にやる時刻とかが決まっているんだろうか。今はもう当たり前になってるっぽいけど、最初にどういう経緯で始まったのかとか、その後二人にとって当たり前になる過程とか考えるとキュンキュンするなぁ~!

「どうするのがいいと思う?」と素直に、本当に何の衒いもなく尋ねる直虎がねー。あのギャンギャン喚いてた直虎がねー。素直すぎるというか、むしろ甘えて頼ってすらいるんだよなー。政次にとってはこの上なく充実して幸せな日々だよなー。そして、度々描かれる政次が井戸で直親に呼びかける描写。ある時あたりから意図的に直虎は直親に対して完全に吹っ切れていて、過去を引きずっているのは政次だけというのがまたシビアというかなんというか。井戸で手を合わせる政次を見て、直虎が全く直親について触れないのも面白い。

今回は瀬戸方久の見せ場たっぷりだった!方久が直虎に仕えながらも、その根底にあるのは直虎をどう利用するかっていう本心なのがわかりすぎるあの表情な~。直虎を好意的に思っているし、積極的に陥れようとは思っていないだろうけど、必要があれば裏切り待ったなしなんだろうなって普通に納得できるキャラ設定すごいよな。関口を取り込む時のあの目!目!ムロツヨシすげー。コエー。

龍雲丸の柳楽優弥の表情がすごいのな!あの甘酸っぱくて照れたような、でもまっすぐに直虎を見るあの表情な!高橋一生の顔芸も本当に毎回素晴らしいんだけど、私はここ最近の柳楽君の芸達者っぷりに本当に心底感動している。これでまだ27歳なんだよなぁ…27歳…!これからもしかして大河常連になったりする?しちゃう?龍雲丸みたいな破天荒なキャラもいいけど、押さえた演技をさせて渋い役どころとかも見てみたいよ~。本当にこれからが楽しみ。

ついにヤケになって現実逃避しだす氏真君。白塗りを見た瞬間、お前は北条氏政か!それダメなフラグ!って去年の高嶋政伸がよぎったけど、後でツイッター見たらみんなそう思ったらしくて笑った。氏真君のぼんぼんっぷりは本当にダメ可愛い。こんな状況になってまで妻のために香炉探してるとかどんだけお坊ちゃんなんだ…!そして大沢&関口を方久の力で凋落して、とうとう井伊が気賀をゲット。正直トントン拍子すぎる気もしたけど、来週からの天災武田を考えると、破壊されるためのトントン拍子だったのかなって…そして政次の幸せな日々もそろそろ終わりが見えてきたということか…(涙)

・関口殿のあの大げさなまでの匂いフェチっぷりは何かの伏線なのか。
・テーブルクロス芸する龍雲丸。引っ張った後さり気なく船直すのお茶目可愛い。
・龍雲党の船が清盛の宋船で滾った。

正解するカド 視聴後感想

途中までは手放しですっごい面白かったんだけど、最後の3話くらいが自分の中でうまく咀嚼できなくて、モヤモヤが最後まで残った作品だった。

以下、完全ネタバレ感想。

 

 

 

 

 

一番モヤモヤしているのは、天才交渉人たる真道にとって、最後のザシュニナとの交渉は成功なのか?ってところなんだよな。なんとか発生装置を武器ではなく交渉の道具と考える、ってセリフや、交渉人は両方win-winを目指すっていうこれまでの言動から、最終的にザシュニナと決別するもザシュニナは地球を含む宇宙について納得して不干渉を選ぶ(それがザシュニナにとってのwinでもあるという気付き=サプライズ)という着地点を目指すんだと勝手に思っていたので、ザシュニナを殺して異方の干渉が排除されめでたしめでたし、というのは、自分だけがwinになってない?それ本当に交渉が成功したって言えるの?騙しうちってやつでは?という残念な気持ちになってしまった。作者側にとっては、交渉して両方に満足を、というのはそれほど重要なテーマじゃなかったってことなのかな。ザシュニナは驚きたがっている、サプライズを贈りたいっていう真道の考え方にはちょっと感動してたので、結果的にそのサプライズは「アレ」だったわけで、それは…「驚き」じゃなくて「呆れ」というか…なんというかいろいろと残念だった。

途中6回くらいで真道のお母さんが「異方存在は子供を作らないのか」みたいなこと言ってて、それが確かに伏線で回収されたことになるんだけど、少なくとも私は「そういう方向での回収を望んでいたわけじゃないんだ」と強く主張したかった。人間と異方存在の子孫が、人間も異方存在も越えるさらに上位次元の存在となって、その越えた存在としてさらに上位から異方存在をねじ伏せて消し去るという結論に見えてしまって、それはむしろ一番やってはいけない方向性だったのでは…?って思ったんだけどどうなんだろう。下位次元からでも上位次元に対してアクセス可能で、下位次元も上位次元(の認識)を変えうるのだ、という話が見たかったんだけどな。あるいは子供が解決策となるなら、テンプレだけど異方と宇宙の相互理解のための架け橋であって欲しかった。「悪い人ではなかった」とか言わせてたけど、それを排除したあなたが言う?みたいな気持ちに。あえてそうせずに破壊的な存在として描くことに意味があった(それが狙いだった)と言われたら、理解できないから黙るしかないけども。

ただのゲスパーなんだけど、物語の最初の時点での世界設定とか基本テーマとかが、最後の数回ですり替えられたような気がしてしまった。地上波アニメという制約(という考え方が正しいのかわからないけど)がなかったら、どういう結末だったのか、今と違う構想があったのなら知りたいと思った。ただ、なんて言うか…私がエンタメ作品に求めるカタルシスっぽいものが、この作者(野崎まど氏)から得られることはなさそうだというのはヒシヒシと感じたので、今後そっとブラックリストにぶち込もうと思う。途中までの謎の提示、その解釈も途中まではすごくすごーく好みで、期待が大きすぎたので落差が激しかった。やっぱり、最後のオチに共感出来ない作家は近づけない。後味が悪いからダメなんじゃない。後味が悪いことを作者と共有出来るなら全然ありだと思う。だけどこの作品からは作者との共有感は感じられなかった。

気になってるんだけど、真道と沙羅花って対ザシュニナのためだけに子供を作ったの?そして二人はユキカを育ててないってこと?16年間たった一人で花森が育てて来たの?マジで?沙羅花は自分が親の愛情や自然の中で育ったからこそ自然主義になったんじゃないの?それでいて自分の娘には隔絶空間の中で16年間たった一人だけを相手に育つような環境で良しとしたの?それはユキカが高次元の存在だから許されるってこと?花森の幸せとかユキカの人間としての成長とか、そういうのは全部この設定(サプライズ)に不都合だから無かったことにしますってことなの?

ねぇ、本当にこれが望んだサプライズだったの?誰が誰を驚かせるための?それってもしかしてただ単に「作者」が「視聴者」の予測がつかない結末を見せたいというエゴってだけなんじゃないの?これまで見ていた視聴者が何を考え、何を望むのかをあえて外すことだけを狙ったんじゃないの?それってサプライズなの?上位存在(物語の制作者)として下位存在(物語の読者・視聴者)を弄んでいたぶったってだけじゃないの?結局世の中って言うのはそういうものなんだってこと言いたかったの?それってすごく視聴者を下に見てる下品な楽しみ方じゃない??

物語が終わった後もこうやっていろいろと(作者の意図や望ましい結論などを)考えてしまうという意味で、記憶に残る作品ではあると思うし、そういう部分を挑戦的で面白い作品だって見ることはもちろんできる。面白い作品だったんだと結論づけてもいい。ただ、一つ明確なのは私はこの話のオチの付け方が下品だと思ったし、二度とこの作者の作品を手に取りたくない。読者・視聴者を、ただ驚かせて期待を外して嘲笑うための対象としてしか見ていないように感じられて、そういう作者の作品にこれ以上触れる必要を感じない。でも、怒りや拒絶というマイナスであっても強い感情を湧き起こさせるのは、確かにこの作品が面白いってことなのかもしれない。それでいい、それが狙いだというなら、やっぱりただ黙って決別するしかないなぁ。

本当に、本当に最初の方は好きだったのにな…。得に真道の「交渉人」としてのwin-winの考え方や信念にはハッとさせられたし、異方からもたらされたワムやサンサという装置(?)に触れた時、人類はいかなる行動を取るか?という思考実験としては、ものすごく可能性のある物語だと思ったのに、その行き着く先がスーパーサイヤ人理論…心底ガッカリ。そして全ての行き着く先はワムもサンサも機動しなくなるというリセット。最後になってめんどくさい部分を捨てたなって思われても仕方ないと思う。シン・ゴジラではちゃんとあの世界をそのまま、あの凍結されたゴジラを抱えたまま生きていこうとしてた。そういう覚悟がこの制作スタッフにはなかったってことだなって思った。

結局、この作品的には「正解」は多分「途中だと自覚すること」なんだと感じたんだけど、それってそれほど感銘を受ける「正解」だろうか?人類が未完であることはもちろん当たり前だし、「正解されたい」と何度も言っていたザシュニナが実は「間違っていた」というのはわかりやすい構成だと思うんだけど、その結果明かされる「正解」がこんなショボい内容であるとか誰が思ったであろうか…。あーもう、本当にいろいろとガッカリだよ!

以下、どうでもいい個人の妄想。

11話まで見た時点で不穏な気配は感じていたのだけど、それでも希望は捨ててなかった。その後たまたま人工知能の番組を見て、異方というのは人工知能のメタファーなのでは?という仮説を思いつき、自分の中ですごく納得いく妄想だったので、それを越えるものを見たかったから。

異方=人工知能説とは。人工知能は人類が作り出したもので、一般的には人類が管理統括すべきものと考えられている。けれど、現在人工知能の進化はめざましいものがあり、人工知能の作者も、人工知能が結論を導き出す過程を理解できないまでになりつつある。このまま人工知能が進化するとして、人工知能人工知能を作り出せるまでに発達すると、おそらく人類は人工知能を管理統括することが出来なくなる。そうやって独自に発達し続けて「処理する情報を求め続ける」存在となったものが異方なんじゃないかと。つまり、本来は人類と同じ次元の存在であり、人類に作られたはずの人工知能が、自らの進化で高次元存在であると錯覚して人類にアクセスしてきた、というのが今回のカド出現事件(?)であり、その疑似人格がザシュニナだったのではないかという妄想。

ザシュニナが人類の文学に触れて、徐々に「人間らしく」なっていくのは、人工知能が感情や人格を得つつあるということで、人工知能が求めた「処理しきれない情報量」というのはつまり「感情」だった。だから、交渉によってそのことを真道が気付かせてあげて、ザシュニナが自ら「異方=高次元」という間違いを自覚して修正することでめでたしめでたし…じゃダメだったんだろうか。その上で、ザシュニナは人工知能の疑似人格として電脳次元で、真道は人類として地球で生きる。時々会いに行くよ、ヤク…じゃなくてVRマシンに乗って。じゃダメだったんだろうか。そういう物語が見たかった…と今書き出しながら思った。結局、そういう視聴者の期待をわかっていて煽りつつ、その上であの結末で「じゃーん!思ったとおりに行くと思った?残念でした!」ってやりたかっただけなんだよな、きっと。醜悪すぎる。醜悪さに触れて何かを読み取れって意味ならやはり拒絶を選ぶしかない。

でもまぁ、こうやって感想を書き殴ろうという強い感情を揺さぶられたのは確かなので、やっぱり意味のある作品なんと思う。嫌いだけどな!
見て良かったかと問われたら、どういう作品を嫌いだと思うかという自分の嗜好に気づけたので良かったのかな。嫌いだけどな!

おんな城主直虎 第26回「誰がために城はある」

今回のサブタイは内容をダイレクトに示してくれてありがたい!原作のヘミングウェイの方は未読なのでパロ成分があるかは謎。気賀に城が作られることになり、それによって気賀の商人たちの間でも対立が起こる。それを直虎が仲裁し、めでたしめでたし。そして方久が金の匂いをかぎつけ、気賀に入る城主が井伊となることは出来ないか?と言い出す。という展開。

気賀が気がかりで仕方ない直虎に対して「お前はどこの領主なのだ!?」と声を荒げる政次、控えめに言ってサイコーだった。あーやって突然鶴に戻るのズルいよね!(喜)そして言ってることがまたド正論でさぁ。龍雲丸のことをいちいち気にするけど、この前の働きはまず六左や方久の尽力があってのこと。龍雲丸だけを気にかけるのはいかがなものか。まさしく正論なんだけど、見ている人間には嫉妬にも見えるこのシーンの多重性がムフフって感じ。少なくとも直虎の執着の相手が龍雲丸じゃなければここまで声を荒げたりはしないのかなぁって。そして南渓和尚に泣き言を言えちゃうあたりが、政次の今現在の恵まれてる環境を表してる。たった一人で耐えてる政次はもういないんだな。いやー本当に報われてくれて嬉しい。後はこの幸せな日々が消えてしまうのを待つのみか…(涙)

相変わらず面倒ごとに首を突っ込みたがる直虎だけど、もはや「直虎ならうまくまとめてしまうかもしれない」とすら思わせる貫禄っぷり。あるいは「自分なら何とか出来るかも」という自信も見せて、確実な成長を感じさせる。商人たちが一応直虎を立てるのは、領主ということもあるのだろうけど、これまで積み上げてきた実績もあるんだろうな。「なにか突拍子もないことをやる人だから」って思われて一目置かれることの面倒さと利点。ほんと成長してるよなぁ。

そして商人たちをうまく言いくるめて(笑)うまくまとまりかけた時の龍雲丸の「ちがーう!」というちゃぶ台返し。ここで龍雲丸がヤケになってますます反発するんじゃなく、出て行くっていう矛の収め方なのが絶妙だった。下手にトラブルを大きくしないのに緊張感を保ち続けられる脚本の上手さよ。龍雲丸のわだかまりを解きたい直虎だけど、その場ではわかり合えないままなのもいい。誰も彼も、簡単には変われないしわかり合えない。けれど、他人の言葉は心に残ったまま、その後の決定に微妙に影響を及ぼしていく。直虎のこれからの決定には龍雲丸の「アンタだったらそういう城主になれるのか」という問いかけが、龍雲丸の決定には直虎の「城が悪いわけではない。そこに居る人次第だ」という真理が、ずっとどこかに刺さったままなんだろうなって。

今週の直之は相変わらず良かった。直虎と一蓮托生、申し開きが受け入れられないなら斬りつけるまでっていう覚悟の仕方がカッコいいし、龍雲丸に対して「斬りたくないから帰れ」って言うシーンも良かった。普段ギャンギャン喚いてる直之だけど、いざという時にあの緩急を付けてくるから、ギャンギャン喚くのは多分自分の役割だって思ってやってる部分も大きいのかな。いつも思うけど、直虎と変わらない(むしろ直虎の方が大きい)背丈でちょこちょこと直虎の側についてる姿が本当に可愛いし忠犬だなって…はー直之可愛い!

寿桂尼さまお久しぶり!お元気そう(?)で何より。でもやっぱり弱ってる演技になってるのすごいな。
・高瀬に聞かせたくない新婚の噂話ってなんだよwww
中村屋本田博太郎さんサイコー!本心の読めない不気味な商人の印象だったのが今回一気にお茶目路線をあらわにwww

 

おんな城主直虎 第25回「材木を抱いて飛べ」

高村薫要素あったか…?材木を抱いて飛ぶ要素あったか…?ただ、龍雲丸が船で疾走するシーンは壮大で「抱いて飛ぶ」と言われたら納得するようなそうでもないような…わからん。

龍雲丸が尼小僧様を話題に出された時のこそばゆい据わりの悪い感じがなんともムズムズする。気になっているけど近づけない(と自分自身で決めている)相手。でもやっぱり気になる。そういう自分自身が嫌いじゃない。そういう複雑な甘酸っぱい感情を完璧に演じてたと思うんだけどいかがか。ムズキュン要素は(私は)大河には全くこれっぽっちも求めていないけど、あればあったでやっぱりムズキュン出来て楽しいので大変よろしゅうございました。

直虎の成長~!関口殿の嫌味ったらしい当てこすりに対する対応が、初期の初々しい反応と比べてものすごい落ち着いてて感動した。非常時になると途端に有能になる領主様頼りがいがありすぎるだろ~!

直虎と政次の一人囲碁最高!!一手ずつ交互に切り替わるカメラアングルの演出がめっちゃカッコよくてテンション爆上げした。南渓和尚の「一人に見えるのか?」って問いかけからの流れが本当に本当に滾った。ここ、ちょっと自分でも思い返してハッとしたんだけど、この時点での直虎の精神的な補助役はもう完全に政次なんだな。「一人じゃない」って言われて、魂の伴侶たる直親じゃなくて、今生きている政次をちゃんと思い浮かべられるという描き方がいいよなって。思えば、そのためのこれまでの直虎と政次の深夜の囲碁シーンの積み重ねだったんだなって。

そして「俺の手は冷たかろう」って言う政次に「冷たくて気持ちがいい」じゃなくて「昔から冷たい」としか言葉にしない直虎に、もう…もう…!だけど言葉にしなくても二人の間ではこれでちゃんと通じ合ってるっていうこの…この…!これだよ!この距離だよ!超萌える!!

氏真のお坊ちゃん感最高。ホント小者で憎めなくてお茶目で可愛い。無能じゃないけど傑物でもないっていう描き方と演じ方がピッタリ噛み合ってて素晴らしいなっていつも思う。今回駿府で「気賀を誰に任せるか」って頭悩ませてるシーンがなんかすごく等身大?っぽくて良かった。あと政次に「ついに時期が来たぞ」って悪い顔で笑ってたけど、その内容が「井伊の領主から直虎を引きずり下ろす」というめっちゃ小さい案件なのもすごく良かった。大きすぎる武田や織田の脅威に対して絶望感しかない中で、井伊程度なら御せるって思って張り切っちゃうコモノっぷりが愛しい。そして、直虎の堂々とした申し開きに完全に呑まれてる感も本当にコモノで愛しい。20年前の蹴鞠と同じく、直虎の粘り腰にまたしてやられることになったってことだよな。愛しい。

直虎の申し開きシーンは圧巻で見事だったし、カッコよかった。大河の女主人公が啖呵を切るならこうあって欲しいという理想像だった。ベルばらだよーオスカル様だよー素晴らしいよー。そういえば前回の申し開きシーンも男装でカッコよかったし、直虎にとっては対今川というのがやっぱり一番の戦闘シーンなのかな。ただ、ホントカッコいいシーンなんだけど、デジャヴを感じちゃったのも確かで、二番煎じ感は出ちゃうよなぁとも思う。15回の対寿桂尼様の時とほとんど同じ構図だったし展開も同じだけど、何か意味があるのかなぁ…見比べると違ったりするんだろうか。より直虎が成長して、自分の言葉で自信を持って喋っている感は確かにあったけど。そういう意味では演技や演出が緻密って言うことも言えるのかも。

 

・冒頭の虎松と政次の囲碁。虎松が負けず嫌いに成長してる!!17回からのこの成長!!

おんな城主直虎 第24回「さよならだけが人生か?」

いきなり副題で井伏鱒二にケンカ売っちゃうのすごい。いや、わかってる。題名パロディなんだからこうならざるを得ないのはもちろんわかってる。たけの里下がりとそのオチに引っかけた題名だよね。冒頭の龍雲丸が去って行くのも含まれてるのかも。龍雲丸もまた帰ってくるんだろうし。

瀬名と元康(もう家康?)久々に見た~。めっちゃ可愛いシーンなんだけど、この二人のいずれ来る悲劇を知ってるからツラい…ホント脚本がエグい…明らかに悲劇性を上げるための現在の夫婦描写なんだろうけど、思わずニヤッとするコメディ感を全面に押し出して悲劇性を上げていくの本当にマゾいでしょ…;; きちんと紅を指してめかし込んで殿の前に出向くのに、ツン気質全開で「まるで父親みたいですね」って気安さからの嫌味を言っちゃうのがまさしく瀬名ちゃんでありました。瀬名が浜松城に入れずにお寺に幽閉?されてる事情とかは良くわからなかったのだけど(曖昧にぼかされてた気がするけど、見逃しただけかも)石川数正とのアイコンタクトといい、セリフ劇がコメディ色なのに全体的に不穏な感じなのが怖い。石川数正は瀬名のこと気にかけてて、築山事件を期に家康との間に溝が出来ていくというのが私の中の基本路線となりつつある。

新野家の三女さくらの結婚話。おとわの人質の話はあれほどまでに井伊家の男どもがいきり立ってたけど、今回は(面白くはないものの)人質としての結婚を井伊家全体で受け入れているのが面白かった。井伊家そのものが成長しているとも言えるし、状況が違ってたてつく体力が無くなっているというのもあるのかも。それにしても嫁ぎ先、いい男だったなぁ…これだけじゃ無くて今後もいろいろありそうな予感。

直虎の成長が顕著に表われてる回だったな~。南渓和尚が眩しそうに寂しそうに、もう「おとわ」がいないことを惜しむ姿が印象的だった。ひたすらにがむしゃらに龍王丸に挑んで今川を根負けさせた「おとわ」はいなくなり、知恵を付けて婚姻という名の人質を受け入れるだけじゃなく、自分から仕掛けるしたたかさを身につけた「直虎」がいる。これが「おとわ」に対するサヨナラだという解釈もあるなら、副題から言うとたけや龍雲丸のように再び「おとわ」が戻ってくる瞬間があったりもするんだろうか。それが政次のためだったりしたら熱い。もちろんそうで無くても全然いいんだけども。楽しみ。

たけを追いかけての別れのシーンは今回のハイライトだと思うんだけど、やっぱり良かったなー。別れの寂しさを描くために「寂しい、つらい」って語らせる必要はないんだなーとしみじみ思う。直虎のセリフは「らしいなぁ」と思ってクスリと笑わされつつ、その言葉の裏にある相手を思う気持ちを感じて不思議と泣けるんだよね。からりと笑いながら爽やかに泣ける展開が良かった。そしてしんみりした後のたけの幽霊騒動からの、姪のうめの登場に笑った。おとわが小さかった頃に「お手つき」について噛み合ってなかった頃のたけが帰ってきたw 感動した直後に持ってくるこの外し方が大好きだ~。それにしたって遺伝子強すぎるだろwww

今週の直之。今回ちょっとしか出番なかったけど、塩いじって方久に「メッ」て態度だけで叱られるの可愛かった。はぁぁぁ~~!相変わらずゆきのじは可愛いなぁ~~!!

今週の政次も幸せ絶頂だったな。深夜の囲碁とか、執務室でのわかり合ったようなアイコンタクトからの自然と距離を取っての白々しいやり取りまで、もう二人はバッチリ息の合った主従になりつつあるんだなぁってほのぼのした。いやー、こんなに政次が報われる日が来るとは…!

海老蔵織田信長がすっごいイロモノっぽくていい!
・信長の、どこから声出してるのかわかんない感じの舞台っぽさがいい!
・そして蛇に睨まれた蛙状態の元康もいい!弟ネタ出した部下に振り返って睨み効かすのカワイかったw
ムロツヨシ…じゃなかった、方久の金儲け講座、私も受講したいw

おんな城主直虎 第23回「盗賊は二度仏を盗む」

第21回からの龍雲丸編が一段落という感じなのかな。副題は「郵便配達は二度ベルを鳴らす」からだと思うけど、艶っぽい展開というよりはミステリ的な小細工を楽しむ回かなぁ。なんていうか、大河っぽくないというか、木曜時代劇っぽいというか、キャラ重視な話だった気がする。

前回の酒乱直虎の反省会面白かった。六左の悪気&容赦のないツッコミと直虎の表情の掛け合いが可愛い。基本的に直虎の言動はいつも突拍子がないので、多少酒乱で言動が乱暴でも全然誰も気にしていないっぽいのも笑える。青ざめる直虎&気にしない家臣というのがシュールで良かった。そして近藤の前で「あの者たちはもう盗みなどしない!」発言。酔っていないのにうっかり発言で自ら窮地に立たされる直虎…そうだよ、君はそういうやつだよ…。

そして今回は南渓和尚が策士っぽいことしててちょっと面白かった。小芝居が本当に小芝居でニヤニヤしちゃう。それにしても近藤さん結構なりふり構わず井伊に対してプレッシャーかけてくるんだなぁってちょっと意外だった。もみあげキャラは悪い人じゃないという忠勝効果に騙されてた。でも「本尊が盗まれた」って結構ショボい難癖なのでは…そうでもないのか…?そして結局全部南渓和尚の手のひらの上…あ、そういえば南渓和尚に経を読んでもらえるなんて光栄って言ってたけど、南渓和尚って位の高い僧侶なんだな!ってわかる描写になってて感動した。ただの酒飲みの昼行灯じゃないんだなぁ。

ついに政次がデレる。というか、龍雲丸に対してこうも明確に配慮してくれちゃうとかフラグ立ちまくりで怖い。龍雲丸たちを逃がそうとする直虎よりもさらに前に、政次は逃がすための手を打ってる。それは直虎のためでしかないんだけど、そういう無茶無理難題な状況に対応するのを、政次はもうこの時点では楽しんでるよね。面倒をかけられるほど嬉しいってどんだけマゾいのか…そしてその伝令になつさんを使ったっていうのがさぁ!もうさぁ!あんたたちさぁ!!ってジリジリする~!直虎と政次の関係性にめっちゃ萌えるけど、政次となつの関係性にも萌えるんだ~!そして恋愛として応援したいのはなつさんなんだ!お前ら結婚しちゃえよ~!!

井伊家の家臣となる申し出に対して、みんな結構乗り気。でも龍雲丸は考えてしまう。自分が尼小僧に惹かれているのを内心知っているからこそ、心に素直に従えない…んじゃないかなぁ。お家の再興が出来るかもしれない、武士に再びなれるかもしれない。そういう昔からの(心の奥底に封印していた)悲願だけしかなかったら、龍雲丸はもっと直虎の申し出を損得で判断出来たんだろうなって思う。でも、仕官できるならしてみたいという気持ちの中に、直虎という女性に対する何かを感じて、迷ってるんじゃないかなー。そうだといいなー。

そして最終的な「空に雲があるからでさぁ!」と言った時の晴れ晴れした顔!あれはねー、いいよねー。柳楽優弥のこの言い方が本当に見事で。心の奥底にある仕官への夢をキレイに昇華して、自由に生きることを自ら選んだってことなのかなぁ。そして直虎への感情もここで一度、キレイに供養している気がする。少なくとも、供養しようとしている気がする。自由に生きる龍雲丸として、直虎に新たに向き合う決意を固めたのかなぁって。そういう晴れやかさがあの表情にはあったと思う…んだけど、思い入れありすぎか。

最後に政次すら笑ってたのが印象的。政次もすっかり井伊家臣団に馴染んできたよなぁと。前は小野の名前は本当に忌避される的な感じだったのに、今は小姑みたいな厄介なあいつ的な扱いになってるの、本当にこの形のまま進めたら良かったのに的な胃にキリキリくる感じなのホントしんどい。

・政次の咳はこれアカンやつでは…いわゆるフラグでは…
・走る直之が可愛い.もう本当に可愛い。