おんな城主直虎 第22回「虎と龍」
この副題は何から来てるんだろうなぁ…良くありがちなやつなので、コレといった元ネタというよりは、このタイプという感じのざっくりした感じなのかもしれん。
今回は乙女ゲー回に見せかけて、結構内容が社会派だった。いや、いつもそうか。これまでのムラ社会に突如入り込んできた異物としての元盗賊団。案の定ムラとの軋轢が生じて、異物は所詮異物と排除する流れはどんどん加速して、一見政次の意見は正しく見えるし実際にそうやってやって来たのが日本という国のシステムなんだけど、それに対して「異物に見えるのは距離があるからで、きちんと近くで向き合えば相互理解できるよ」っていう当たり前だけど難しい真理を提示された…気がする。直虎の掲げる理想は清々しいけど、眩しすぎて直視するのがちょっと辛い。そして現実はそうはならないという絶望感が大きくなるんだよな。現実がままならないからこそ、こうやってせめて虚構の物語の中では理想を追い求める姿勢を大事にしたいなーとは思う。ホント、スイーツの皮被って重いものを突きつけてくるドラマだよ…。
正直、リスクとか面倒とか考え始めると、政次路線を一直線に進むしか道がないんだよね。一旦受け入れてしまったからには最低限礼を尽くしてその間に必要な技術を自分側に取り込んで放り出すのが一番得策だし、それは相手もある程度わかっているわけで、それを「これからも協力し合う関係でいたい」という直虎の言葉は(本人の無意識な下心wもあって)空回りしているようにしか見えない。政次の「そう願っているのは殿だけなのでは?」という言葉は本当にその通り…と思いつつ、でもそうやって理屈で淡々とこなしていても先細りしかない世界を知っている自分が、直虎のパッションだけの理想論とムチャ振りに憎々しさと憧れという相反する感情を持ってしまうのもまた真実…これって絶対政次とシンクロしてるんだろうな。
そして、社会派の重いテーマを臭わせつつも、ものすごい乙女ゲー回だったのも確かなわけで。いやー、全力で作る乙女ゲー大河、思った通りめっちゃ面白いな!?乙女ゲー大河っていうより、乙女ゲーを楽しむ女性層に向けた乙女ゲーパロ大河?そのまま乙女ゲーやられたら「けっ」と思う程度には乙女ゲーがファンタジー過ぎることを知っていて、それでもなお乙女ゲー要素の楽しみ方を知っている層に向けたパロ感がたまらん。何度も言うけど乙女ゲー大河で何が悪い!?って開き直りたい。
直虎を後ろからギュッとして「入りましたか?」とか、エロゲーかよって感じだけどそれでもゲラゲラ笑えるのは、制作側の「こういうの好きでしょ?」って態度が押しつけでなくて捻りも加えた新たな提案であると感じるからかなぁと思ったり。後ろからギュってするの、いいよね。で、その後にキュンとするんじゃなくて直虎がパニクって変な声出して「煩悩が…」とか反省会入っちゃったりしたらもっとよくない?みたいな、パロの自己回収感がものすごく見ていて安心感ある。制作側も楽しんでパロしてるのがわかるというか、視聴者に求められたからやってるんじゃない、自分たちがこういう面白さを提案したいからやってるんだ感というか。個人的に後ろからギュってするのはそこまで萌えないんだけど、その後の直虎の反省会はめっちゃツボったし可愛かった。いやー、上手いなー。
南渓和尚の「目がいいよね、見た目もいいしね」っていう下世話な野次馬根性が的確すぎて笑うしかない。直虎が龍雲丸を気に入っているというのは誰の目からも明らかだけど、そこに男女の感情を察知しているのは南渓和尚と政次だけなのかもなぁ。あ、方久とかは地味に気付いている気もする。直之とかは考えてもいなそうなのが面白い。
今週の直之。ちっさいなぁ!盗賊団にすごまれた時に見上げながら全然動揺を見せずに「無垢な村人と怪しい輩がいたら、怪しい方から疑うに決まっている」って吠えられるのすごい。直之にとってはあの体格はこれまでもずっとハンデだったはずで、ずっとキャンキャン吠え続けてそれが自分の自信になってるんだろうなぁと思えるから、人物を作るってこういうことだよなーって思う。盗賊を井伊に囲い込むという直虎の案に心底呆れつつ、「屈強な家来が出来るかもしれんぞ」って言われてまんざらでもない直之が可愛い。戦力が喉から手が出るほど欲しいんだろうなぁ…そしてそうやって懐柔することを覚えている直虎にも笑いつつも感心したり。いやー、ほんと可愛い主従だよ。六左衛門が直虎に「ひー!」ってしがみつくのも可愛かった。ヒロインかよ。
今週の政次。嫉妬w嫉妬www「くだらんぞ、但馬」って…www 自戒しちゃうほどに心乱されている政次が不憫過ぎていいぞもっとやれ状態。直虎がいないところではとことん翻弄されて振り回されまくってるんだけど、直虎の前ではずっと取り繕ってるのが本当に可笑しいし可愛い。最初の方で井戸のところで直虎の話聞いてる顔が面白すぎて声出して笑った。あの言葉じゃなくて表情で語るの最高。脚本は高橋一生の演技を思い浮かべながら書いてるんだろうし、役者はそれを忠実に再現しつつさらに一歩踏み込んで演じてるんじゃないかなー。脚本と演技が噛み合うとすごい爆発が起こるっていうのを2年連続で見続けられるとか、どれだけ奇跡なんだよ…幸せすぎる。そして政次は不憫だけどかなり幸せだよなーとも思う。恋愛感情の相手として見られるよりも、今の「同士としての鶴」と思われている状態の方が、政次にとっては居心地いいんじゃないかな。私がそういう関係が好きなだけとも言う。
酔っ払って(酒癖の悪い大河主人公w)龍雲丸に「我のものになれ!」って言っちゃって、龍雲丸がドキッとしたりせずに「うっわめんどくせー」って顔なのも良かったなー。内心ドキッとしててもそういう態度には出さないと読んでもいいし、この時点では本心からバカバカしいと思っていてもいい。あのあたり「はいからさんが通る」的な印象だったな。
・室井さん@ごちそうさんの村人がハマりすぎてて怖い。
・マキタスポーツさん裏ありそうで気になる。
・「わし?わし??」って濡れ衣着せられそうな南渓和尚可愛すぎ問題。
・タケさんに「とうがたっている」とバッサリ言われる直虎カワイソス。
・次回の副題のネタは郵便配達は二度ベルを鳴らす、かな?てことは色っぽいシーンあるのか!?
おんな城主直虎 第21回「ぬしの名は」
これまた攻めてる副題来たなー。最後に句点がないのはさすがにやり過ぎだと思ったのか、昔のラジオドラマの方からのパロディってことなのか。
「スリに財布を盗まれる→盗賊もびっくりするほどしぶとく追いかけて最終的に捕まる→身代金の要求のネタにされる」って正真正銘ダメ領主じゃないですかー!!自分という存在の意味を軽く見過ぎてる。でもまぁ直虎らしいっちゃーらしい行動ではある。そして後で高瀬ちゃんにすら説教されてシュンとしてるあたりも、直虎らしさでもあるんだろうな。
それにしても拐かされたのが紳士的な盗賊団(?)でよかったよねぇ。そのあたりのフィクション性は、キワドイ大きさのイモを口に突っ込まれたりしてる部分でセルフツッコミしてる感もあったかなー。あのあたり絶対わかっててやってる間違いない。誰かがこっそり助けに来るでもなく、身代金の交換場所でマヌケな顔で眠らされてるあたり、とことん直虎を美しくは撮らない演出なんだなって苦笑する。でも、だからこそ、男装して今川邸に乗り込んできた時のあの輝きや、夕焼けの画面で高瀬ちゃんとひっそりと語り合うシーンの美しさが映えるんだろうな。
設楽優弥のビジュアルの魅力ってこれまでピンと来なかったのだけど(魅力的な俳優なんだろうなとは思っていたけど、その魅力を実感できてなかった)、このドラマでの盗賊の頭は本当にピタリとハマったような色気と愛らしさに溢れていて、一気に魅力が(私の中で)開花した感じ。全体的に荒々しくて粗野な感じの中に、消せない品があるあの感じ。赤メッシュの入ったあの髪型といい、何風というのかわからない衣装といい、かなり気合い入れまくってデザインされてるよなーって思うし、設楽優弥という俳優のために作られている感すらある。
結構テンプレ題材でもある「支配者はなぜ支配を続けていけるのか?何の権利があって支配者として振る舞うのか?」という問題。武士というのは所詮盗人ではないか、という盗賊の頭(この時点ではまだ名前がわかってない)に対して、すぐに現在の自分の立場の危うさを理解するんじゃなく、心底「お前何言ってんだ?」って顔の直虎可愛かった。でも心の底から意外な指摘に対しても、きちんとすぐに考えて咀嚼して自分の中で判断しようとする直虎の実直さがなんとも上に立つものの資質って感じ。
・フランシスコザビエルみたいな襟飾り付けて嬉しそうな直虎かわいすぎかよ…
・本田博太郎さんの中村屋が胡散臭すぎて笑うしかない。
・傑山さんの筋肉美に磨きがかかってる。
おんな城主直虎 第20回「第三の女」
副題の元ネタはクリスティの「第三の女」だと思うけど、インスパイアされる内容ではなかったような…?私が第三の女の内容を良く覚えていないせいもあるけど。もしかして副題はなんとなくそれっぽければいいのか。今回で言えば、高瀬が第三の女であり、その母親であるゆきのことを言っているとも言える。直親をめぐる「第三の女」キター!
この時代、平均寿命も短いだろうし成人率だって低いだろうし、ある程度の身分のある人なら血筋を残すためにチャンスがあれば子供を作るというのは当たり前なんじゃないかなーとは思う。それはもちろん、なるべく家を存続させるためという政治的な思惑もあるだろうし、そういう雰囲気で許されるという大義名分を振りかざしていい思いする男性も多かったんじゃないかなーとか。でも、だからといって浮気を許せるかどうかというのはまた違う問題なわけで…それは戦国時代よりはるか前、平安時代の作である源氏物語でも浮気だーなんだーとすったもんだしてるんだから、もうこれは恋愛関係と切っても切れないお題なんでしょうなぁ。
直親に関して言えば、別に子供がいることを表向きは咎める必要はないわけで。ただ、今回の話でもうまく焦点をキレイにフォーカスしてたけど、直親はあの口調で散々直虎に「お前だけを思っていた(きらーん)」「お前がいなければオレの美しい思い出が…(きらーん)」て言ってきてたくせに、実はちゃっかり他にも心を通わせた女子がいて、子までなしていたという事実が判明したわけで、そりゃー「すけこましー!」って叫ばれるのも致し方なし。直虎の動揺は察するに余りある…でも笑っちゃう…ぷぷぷwww
そして隠し子騒動で直虎としのがこうやってお互いを認め合うっていう展開が、なんていうか「森下脚本だな~」って感じがした。これまでのわだかまりが、全く違う方向からの横やりでどうでも良くなってしまい、むしろこれまでの確執を共有出来る相手として親しくすら感じて仲良くなるっていうこの感じ、すごいわかりやすいし納得しやすい。和解の糸口が「相手の良いところに気付く」とかじゃなくて「共通の敵を見つけて共感し合う」っていうのが直虎としのらしくてすごく良かった。思いっきり笑った。
政次。何か今週の政次はすっごい幸せそうだった!人前では直虎と対立しているような硬めの対応を崩さないものの、その言葉が明らかに優しいし視線とかが柔らかいんだよねー。これまで「自分が井伊を守るためには直虎に嫌われるしかない」って思い詰めていたのが、第18回で直虎に本心を見抜かれてからは肩肘張った感じが取れて、根っこの部分で直虎と同じものを共有してるものの余裕みたいなのが感じられる。でももともとの性格が邪魔をしてついつい口調が皮肉っぽくなるし、優しい言葉はかけられないんだけどな!この!関係性が!めっちゃツボなんですけど!!
いやぁ、私的には政次は報われすぎていると言いたい。これは…これは幸せ絶頂だよ…絶頂でしょ…そもそも政次が直虎に抱いている想いは恋愛と言うよりは崇拝と献身みたいなもののような気がするので、その相手が自分を頼りにしてくれていて、なおかつ二人で同じ秘密(実は協力し合っている)を抱えているとか、もう完全に勝ち組だよ!ということは退場も間近なんだろうなぁ…夏くらいまで引き延ばしてくれると嬉しいな。
高瀬ちゃんが直親の笛の曲を鼻歌で歌ってホンモノ認定するっていうギミックはトリッキーで好きなのだけど、笛の音を鼻歌で歌うのってちょっと無理矢理感あるような…いや、インパクトあったし、そう来るか!って思ったし、いいんだけども。そしてあのシーンの見事さは、鼻歌を聴いた時の直虎と政次の表情の変化が全てを表していた…一瞬でおとわと鶴に戻るあの感じすごい。演技ってすごい。
そして最後に徳川の使者(僧)を見て、何やら不穏な表情になる高瀬ちゃん…ホンモノであることはおそらく間違いないと思うけど、何やら裏の面もありそうでなさそうな…どういう方向の驚きが待っているのか、楽しみ!