おんな城主直虎 第15回「おんな城主VSおんな大名」

今回もすっごい面白かった!6回目まで「面白い予感はするけどまだ実際に面白くはないな」って思ってたけど、7回の検地の話から毎週うなぎ上りに面白い。
 
案の定中野直之がデレた!安定のテンプレ過ぎるデレっぷりにニヤニヤが止まらない~。百姓の言葉にハッとする直之を見ながら夫と「チョロい!こいつチョロい!」とやんややんやの大喝采だった。そして剣術強すぎるチートっぷりにも笑った。一気に脳筋熱血野郎に格上げになったの面白かったー!「之の字って何だ」「お之の方がいいか?」「之の字で」ってやり取りも地味にニヤニヤした。直虎と直之の関係性が上手く表現出来てる会話だと思う。ていうかさー、最後に直虎が井伊に帰ってきた時の、刀を肩に両手で構える仕草、あれもうテンプレにガキ大将ポーズじゃね?主人公(♂)の親友で脳筋バカタイプじゃね?魔神の京一、ゼノブレイドのラインポジじゃね??くっそくっそ、滾るじゃないかー!こんな燃えるヒーローもの要素持ってくるのズルいー!あと直虎と服交換したんだから、女装の片鱗は見せてくれても良かったと思うんだ。ここまでやったんだから、最後もうちょっとサービスあっても良かったよね!?例えばとぼとぼと帰る直虎(中身直之)とそれを守る僧侶の一行の後ろ姿のみとか、ワンカットでもあったら妄想がもっと楽しかったのに!しかし、衣装を交換して直虎一人で馬で駿府に向かうっていう無茶苦茶な案を、直之も飲んだ(飲まされた)ってところにジワジワくるな。
 
寿桂尼様。下知に従わない井伊(特にその中でも直虎)に対して大きな不信があった寿桂尼が、面会の中の短い時間で直虎が民に慕われていることを知り、今川に対する誠意が見えることを読み取り、判断を改めて統治を任せるっていう流れが良かった。マイナスの印象だった相手に対して、きちんとニュートラルに判断できる才覚があるっていう描き方が素晴らしいよな。もちろん直虎の機転とか、南渓和尚の機知の効いた文章とかも良かったけど、それを受け取る寿桂尼が公平な判断をしてくれるからこその痛快さだったと思う。直虎のサクセスストーリーを、直虎を上げることだけではなく、その相手側の度量を見せることであの場の全員に対して清々しい気持ちにさせる脚本…!本当に素晴らしいし、これが絶対的な信頼だよってホント思う。百姓の連名状って一見ただの人情感動アイテムでもあって、それで終わらせちゃうことも出来るしそれが楽でもあるのに、寿桂尼が感動して感情論で直虎を認めたんじゃなくて、百姓に連名状を出させるほど信頼させている直虎という人物を理性的に見直した、って描写なのがいいんだよな。本当にここの見せ方が好きすぎる。
 
政次。ほんとにもー、今週も最初から最後まで不憫で素晴らしかった!(褒め方が雑)先週がずっと鉄仮面で最後一瞬だけデレだったのに対して、今週は漏れ出る心配を隠せてないっていう演技なのがまたコスいよな。誰よりも守りたい直虎に対して、直虎からだけは信じられてはいけないという二律背反。傑山に取り押さえられるのとか不憫すぎて普通にゲラゲラ笑ってしまう。直虎を「おとわ」と呼んでまで引き留めようと躍起になっているのに、いざ直虎が「後見は但馬に託す」と明言すると「いいのか?」と聞き返しちゃうのもね、あざといけど上手い見せ方だったよなーって。おとわのおとわらしさを信じると、「但馬に託す」は出てこないんだよな。だからこそ、駿府で男装の直虎を見た時の表情が活きてくる。手玉に取られて完全にしてやられて、でもそれこそがおとわだからこそ嬉しいんだよな。寿桂尼が直虎を認めた時のあのホッとした表情…!いやー、ほんと高橋一生っていい演技するよね。
 
直虎。直之との衣装替えの男装がめっちゃ、めっっっちゃ似合ってた!柴咲コウさん、尼姿の時は色気あるのに粗野な感じもあって似合ってるなーって思ってたのに、直虎ルック(禿ヘアーのやつ)になってからがいまいち魅力的に見えなくて残念に思っていたんだけど、ここに来てレアで超絶似合う衣装キター!ってテンション上がった。これからも時々ぼさぼさヘアアップにして男装してくれると私が嬉しい。あと、今回も直虎はとっさの機転がきく描写だったな。普段から聡明なわけではないんだけど、いざという時の発想と決断力が素晴らしいと見ててわかるこの演出。普段はボンクラでも非常時に輝いてくれればいい(byナルサス・意訳)という典型に収まりそうでいいよいいよー!そういう意味でも直虎はジャンプ的なんだよね。ベルばら的でもあり、ジャンプ的でもあるドラマって面白いに決まってるじゃん!
 
その他
昊天さんと傑山さんの武勇をもっと見せてくれても良かったのよ。槍無事に新調できて良かった良かった。
・しのちゃんが直之のようにデレるのか、和枝ちゃんポジでイケズのままなのかわからないけど、どっちでも多分面白い。
・なつさんの賢さ聡明さが目立つ回だったなー。弟の妻(未亡人)っていう関係性とともに、政次との絡みが楽しみ。

おんな城主直虎 第14回「徳政令のゆくえ」

政令って日本史で習ったけど、歴史っていうより経済学だよね…いまだに徳政令を出すことの具体的なデメリットがよくわからん。昔、徳政令の制度を知ったときに領主権限で借金踏み倒せるなら、踏み倒せばいいじゃんって思ったことを思い出した。徳政令を出すような領主の元では、真っ当な商人は商売をしたがらないから、経済がめちゃくちゃになって結局財政的に立ちゆかなくなるってことかしら。あるいは、徳政令を一度出すと、次から二度とお金を貸してもらえなくなって結局ダメになるってことかなぁ。どっちもか。今川ほどの実力があって、駿府という商業的に中心となる(商人にとってメリットの大きい)都市を抱えている国であれば徳政令って言うのは切り札になり得るけど、井伊のような地方の弱小にとっては次に金を貸してもらえないっていうのはダメージ大きいだろうしなぁ。
 
みたいなことをつらつらと考えながら先週からの流れを見てたんだけど、こういうことを考えさせてくれるのが、こういう歴史ドラマの良さだよなぁと思う。勉強になるドラマってこういうことだよね。ただ、勉強のために大河ドラマを見ましょうっていうのはやっぱり違うと思うんだよな。今、この年になったからこそ面白いんだろうなぁと思うと、作品との出会いのタイミングって難しいなぁとも。いやー、それにしても大河清盛との出会いは私にドラマの見方を教えてくれたよなぁ。いい時にいい作品に出会えて良かった良かった。
 
女性だからという理由で、家臣に領主として認めてもらえない直虎。中野くんに「男女の仲なのでは?」とか揶揄されたりするあたりが超テンプレ。中野くんこのままだとグレてる不良家臣一直線なんだけど、この潔いほどのヤンキーっぷりはいずれ手のひら返しで熱血家臣になるんだろうなぁと思わせてくれて、見ながらニヤニヤしてしまう。今回既に新田くんは直虎親衛隊に鞍替えしたし、中野くんが覚醒するときも近いか。多分来週だろうな~、ニヤニヤw
 
今川から徳政令を出せという命令が来てしまい、それに従わないために「寺に寄進してしまった」という方便で応じるっていうのが面白い。それがさらに今川の仮名目録からの小手先術だっていうのがまた痛快。結局のところただの詭弁なんだけど、こうやって詭弁で時間を稼ごうとするという発想が今までの井伊にはなかったよなぁと。それを初めてするのが、領主として経験の全く無い直虎っていう解釈は上手い。要は初心者だからこそ常識にとらわれずに一手が打てるってことだよね。
 
今回、直虎が方久をまるきり信じているわけじゃなく、金にあざとい部分を信じると言い切ってたのが興味深かった。直虎は多分人を見る目がある人として書かれていると思うんだけど、そんな直虎が政次のことだけは正しく評価出来てないのも面白いなぁ。良く考えると、直虎と政次ってちゃんと本心をさらけ出し合ったことってないんじゃない?直親と政次は、おとわという共通の思い人がいて、お互いにその思いを共有していて、ライバルでもあり同士でもあった。だからこそ嫉妬で反目し合ったりわかり合えない日々が続いたけど、一方でわかり合うことを受け入れれば、唯一無二の主従になれた…はずだった。直虎と直親はむしろ最初から許嫁として未来を共有していた。その未来が叶わないことが決まっても、一度未来を共有したという絆そのものは残った。でも、直虎と政次は直接は何も共有していない。子供の頃仲の良かった三人のうちの二人であるというだけ。そして三人のうちの二人であるからこその勘違いや捻れみたいなものが、実際以上に二人の間の距離を広げている気がするなぁ。
 
しのちゃん。あんなに憎かった政次に後見をさせる方を選ぶという視野狭窄っぷり。まぁねぇ、直虎に対しては最初から「直親の心の伴侶」みたいな嫉妬心があるんだろうから、仕方ないと言えば仕方ない。それでもやっぱり、この頑なさはそのうちデレが来るんでしょ?と思わせるから上手いよなぁ。こういうのって、本当にデレが来たら「ほらぁw」って思えるし、デレが来ない場合もそれはそれで別にどうとも思わない上に、今みたいなツン時にあまりヘイトを貯めずに見ていられるので、テクニックとして上級だよなぁって思う。でもさー、しのちゃんが「私は認めません!」てぷりぷりしてたシーン、しのちゃんが認めなくても誰も何も困らないっていう、無力さをまざまざと見せつけられるシーンでもあって、かなりエグいよねぇ。妹にすら「理屈じゃないから。放っておいておk」って言われるってどんだけ…さすがにちょっと気の毒になる。
 
政次。登場シーンのほぼ全てで鉄仮面を被って憎らしい敵役を演じつつ、最後の最後で「知っておる。昔からな」と一瞬見せるあの泣き笑いのような表情!すげーすげー!「領主は大事なものを盗んでいきました。百姓たちの心です」ってか!そんな直虎(おとわ)だからこそ守りたくて、そんな直虎だからこそ素直に守られてはくれないんだよなぁ。今川からの呼び出しは井伊にとってはイコール天誅であって、直親に続いて直虎すらも抹殺されるかもしれないピンチ。政次はこの事態だけは避けたくて、これまであれこれと直虎のことを妨害してたんだろうに…でも直虎が領民から慕われている姿を見て泣き笑いしちゃうあたりがほんっとマゾいな!
 
直虎。取り立てて賢いという描かれ方じゃない。竜宮小僧として頑張ってた姿を見ていた領民は慕ってくれるけど、それは「あのお姫様がよく頑張ってるよ」っていう慕い方であり、領主として忠誠を誓ってくれてるわけじゃない。直虎自身、我慢強いわけでも、聡明なわけでもない。ただ、ここぞという時に鋭い閃きを見せる。誰に対しても誠実であろうとする。そして、そういう姿勢が領民の心をとらえて、徐々に徐々に味方が増えていく。賞賛したりひれ伏したりするんじゃなく、同じ方向を向いて一緒に進もうとしてくれる仲間が出来る。私は直虎にちっともこれっぽっちも共感しないけど、それでも見ているといつの間にか直虎を応援している。そういう心境にさせる魅力が、直虎には確かにあると思う。
 
その他
・百姓の中によく見た顔をみかけて、誰だっけ…誰だっけ…と脳内データベース検索して「ごちそうさんの室井さんだ!」とスッキリ。室井さん、百姓姿すごい似合うw
傑山さんの筋肉美押しがすごいwww
 

おんな城主直虎 第13回「城主はつらいよ」

ちゃかした感じのサブタイトルとコメディタッチの作劇でぼやかされてるけど、井伊家の状況が詰みすぎてて真顔になるしかない。オンナには従いたくないと大声で言う家臣。「但馬よりはマシ」という理由のみでしぶしぶ従う家臣。そして、領主としての才覚を全く見せない直虎…前半ツラすぎて直視したくなかったよー。情にほだされて徳政令出しちゃうとことか、すっごい森下さんヒロインそのもので「あちゃー」って感じで見てた。でもまぁ、その後に必ず手痛いしっぺ返しと、自省がありつつも個性を殺さない成長エピソードがあるってわかってるから、我慢して見ていられる。この信頼感が「脚本家でドラマを見る」ってことだよなぁと思ったり。
 
味方が皆無で、母上と南渓和尚(と寺の僧侶)は味方だけどどちらもあまり力を持ってない(あるいは振るいたくない)状態で、家臣は全員直虎を舐めてるし、直虎も現状の難しさをきちんと理解できていない。政次への反発だけでやっていけるほど領地経営は簡単ではないわけで…特に借金が詰みすぎててなー。そして借金の話から井伊がお金を借りてる商人の話へ。ここでいかにもな感じのムロツヨシが再登場!方久のわらしべ長者マンガが展開されるなど、なかなか攻めてる絵作りだったなーと。
 
今回見ていて「あー森下作品だなー」と思ったのは、直虎が領主としては全然ダメな部分をこれでもかってくらい描いてみせて、そこから一気に「ダメなまま」突っ走らせるところだったなー。ごちそうさんのめ以子しかり、天皇の料理人の篤蔵しかり、森下さんの描く主人公は基本的に猪突猛進で痛いキャラのことが多くて、痛いがゆえに周りと摩擦があったり妨害があったりで、見てて自業自得な苦労をたくさんするんだけど、そこからの成長が「ダメな部分を直す」っていう方向じゃなく「ダメだと自覚させ反省させつつダメなまま走る」ってところで、周りが主人公のダメな部分に呆れて受け入れて解決することが多くて、直虎もまさにその流れでめっちゃ面白かった。この流れって一歩間違うと本当にご都合主義で腹立たしいことになりそうなんだけど、不思議と視聴者としても主人公のダメな部分を呆れて受け入れる心持ちになるから不思議なんだよなぁ。多分自覚と反省の描き方が上手いんだと思う。森下マジック。
 

おんな城主直虎 第12回「おんな城主直虎」

小野政次が完全に父政直と同化しちゃったかのような演技でびっくりした。吹越満をここまで感じさせる高橋一生ってすごい。しかし、完全に道を違えたように見える次郎と政次だけど、思った以上に政次を見ててしんどくなかったのが自分でも不思議だった。前回と前々回の政次と直親の和解劇が、心の支えになってるのかも。あと、これまで描かれてきた政次の性格が「一方的に不運ばかり引き寄せる」みたいなものじゃなく、政次の方も「いらんところで相手の神経を逆なでする」キャラであるとわかっているので、ツラい境遇も「さもありなん」って思えるというのもあるかもしれない。こういうところは森下さんのキャラ造形のさじ加減の上手さだと思う。脚本家の手のひらの上で転がされる感じがたまらない。
 
直親の最期は良かったなぁ。瀕死で「井伊はどっちだ」ってふらつく姿が印象的だった。一見爽やかイケメンなのにどこか笑顔が空虚で不気味で、それが一生懸命学ぶことで徐々に次期当主として、夫として、父として、少しずつ人間関係を構築しているように見えて、まさにこれからって時にこうやって摘み取られてしまうという、この物足りなさと悲劇性がクセになりそう。直親は自分の好みとは違うけど、それでも次郎がこの人とその心を捧げることに納得出来る魅力のある人物だって思えたので良かった。
 
そして井伊家の受難はまだ続く…ほとんどの男が死に、最後に残った直平、中野、左馬介までもが次々と戦に取られて死んでいく…もうやめて!井伊家のライフはもうゼロよ!ていうか、本当に壮絶だな。中野が「守るために死んでいけるのは本望」みたいなこと言ってたけど、お前らまで死んで、後には身を守る術すらない人たちばっかりが残ったら意味ないだろうが!しかしまぁ、時間を稼がなければならない、他に方法がないって時点で詰んでるよなぁ。当時の力のない国衆の現実を突きつけられる大河である。去年の真田のチートっぷりが際立つ。
 
最後に三人と次郎がお酒を飲むシーンも良かったなぁ。これまで話の通じない脳筋ジジイだとしか思えなかった直平の、前回の「もう見送るのは真っ平だ」という嘆きと今回の悟りきったような笑顔。直平には直平の譲れないものがあって、そのために精一杯生きてきたんだろうなぁと思わされる演出。いやぁ、上手い。脚本も演技もほんと上手い。
 
今川で(井伊存続のために)着々と己の居場所を作る政次。氏真に「怖いのぉ」って言われる程に既に信頼を勝ち得てるのがすごい。そして元康に敵対する一向一揆を影で操ってるっぽいのもすごい。ていうか、この辺ちょっと政次の能力盛りすぎじゃないの?って気もしたけど。まぁ前回の寿桂尼様の「どっちを選ぶ?」で覚醒せざるを得なかったってことなんだろう。ただねぇ、政次の「他人に理解される必要はない、自分だけが悪者になればいい」っていう割り切り方は、正直あまりいい手には見えないよねぇ。今川に食い込んで内部から井伊を(乗っ取られたように見せかけて)存続させるっていう作戦は、井伊側にその真意を理解してくれる者がいてこそ生きる策でしょうに。政次は次郎だけにでも、己の本心を明かすべきだったと思うんだよな。まぁ、直親があの結果になって、次郎が素直に言うことを聞くとは思えないっていう状況だったから無理だったんだろうけどさ。結局のところ、小野をきちんと取り込めなかった井伊が、滅びるべくして滅ぶって話なのか…無情だ。
 
次郎と政次の井戸での邂逅も絶望しかない。「最初から裏切るつもりだったのか、裏切らざるを得なかったのか」っていう問いかけがまた壮絶。どちらの回答でも「裏切った」ことは間違いなくて、それ故にどちらが答えだとしても二人にとって大した意味はないんだろうな。この後、二人がわかり合う時は来るんだろうか。政次はこのまま誰にも理解されずに死んでいくんだろうか。だとしたらあまりに不憫だなぁと思うんだけど、ふと和泉守はそういう生涯だったんだよなぁと思ったらやっぱり絶望しかない。
 
そして「直虎」爆誕。ここでパパ上の「辻が花を着た姿が見たい」が生きるのね~、小憎らしい脚本である。直親の「戻ったら一緒になろう」という言葉といい、ここでこうやって辻が花を着ることへのお膳立てにしてきた感すらある。これは滾りますわ~、さすが第一部の締めだけある。政次の「やってくれたな」って顔がまたおかしくも悲しい。井伊を、極論すればおそらく直虎を守るために政次は様々な策を弄しているというのに、その肝心の直虎が大人しく守られていてはくれないという悲劇が喜劇にもなって面白い。ホント上手いな~。最高だ。
 
その他
昊天さんの「私の槍…」に癒された
南渓和尚に「弓を持て!」と言われて、一瞬おろおろする傑山さんにも癒された
・坊主にしか癒しのない大河…
 

おんな城主直虎 第11回「さらば愛しき人よ」

バンのイケメンが石川数正って名乗って「えぇっ!?」となる真田丸ファン。イケメン!イケメンな石川数正真田丸では石川数正の離反の理由がすごく曖昧で物足りない描写だったけど、今回瀬名姫を救出することを熱心に元康に働きかけたのが石川数正っていう説明が入って、そこまで心を砕いた瀬名姫が未来にあーいう結末を迎えてしまう(そして多分それは家康の意思でもある)からこそ、数正は離反したのかなぁって思えたからすごい。脚本家を越えて響き合う大河ドラマ。すごい。
 
元康から次郎への礼状と、直親との面会。どう見ても阿部サダヲじゃない(w)元康は妙にテンション高くて、影武者なのは視聴者はわかるんだけどこれって元康の?それとも…ってここで引っかかるというのが面白い。そして最終的に今川のダミーだったことがわかった時の「あぁ!やっぱり!」って思うのと、寿桂尼様が政次に「どちらを選ばれるか」って言った時に「あぁ~~!和泉守の!直親ぱっぱ(直満)の謀反の時も同じことが行われたんだ!!」って思う二度の落としに感嘆した。一旦「そこ気になってたんだよね~」って優越感抱かせたあとで「うわっ!そっちも伏線回収なのか!」っていう伏兵に完全にしてやられた。和泉守~;;やっぱりアンタいいヤツだったんじゃん…;;そして既に政次にかけられている「お前は俺と同じ事をする」という呪いが発動しまくる…蒼白な政次の表情と、絞り出すような声。そして全く正反対の意味で繰り返される「選ぶ余地などない」のフレーズ。いやぁ、今回もかなり素晴らしかった。真田丸とは全然面白さのベクトルが違うけど、直虎は直虎ですんごい面白いって力強く言えるこの感覚が嬉しい。この感動、清盛の後に八重見てた時に感じたのと同じなんだけど、八重は後半の失速が本当に残念だったので森下さんには心を強く持って一年間書き切っていただきたい。ただ、展開早いからやっぱり後半が不安…;;
 
直親と政次の仲良し描写は今週も続く。なんだこの拷問!鬼畜脚本!視聴者のメンタルをゴリゴリ削ってくるよぉぉ;;そして駿河で今川を選んだ政次と、その政次が「井伊を守ろうとしたのだと信じたい」と言った直親の絆がまた泣ける。直親は政次が心底直親に心酔して命運を共にする家臣だとは信じていない。時に裏切り、直親に不利な選択をすることを多分知ってる。でもそれは政次なりに「井伊のため」であることは信じたいと思っている。これは検地の時の裏切りから直親が学んだことによる成長だと思うんだよな。イケメン爽やかクズだった直親が、ここまで成長したのだと思うとまた感慨深い…;;
 
ニセ元康に嵌められたことに気付いた次郎が助けを求めるのがホンモノの元康で、けんもほろろに断られて瀬名姫に「人質になってくれ」と直訴。まぁ次郎が直親を救おうと必死なのはもちろんわかる。なりふり構わなくなるのももちろんわかる。でも、瀬名姫に断られて閉められた門をドンドン叩きながら「瀬名!お前助けてやったのに!」って叫ぶのはどうだろ…そもそも次郎の嘆願は時間稼ぎにはなったかもしれないけど、結果的に瀬名を助けたのは元康自身(というか数正の働き)だよね…?ってツッコミ入れられるためのシーンだったと思うんだけど、いやぁ相変わらず女主人公にエグい脚本ですね!可愛さとか共感とかそういうの徹底的に排除してくるよね~。ごちそうさんを最終週まで見た今なら、これが森下さんの味であり狙いなんだろうなぁとすんなり納得出来る。め以子に最後まで共感出来なかったけど、それでもめ以子の事は大好きになったから、直虎もそういう主人公になるんだろうなぁ。楽しみ。
 
直親は、生きて帰れないと悟って、当主として弁明に出向く事を決めて直平に後を託し、夫としてしのに嫡男を産んでくれたことを感謝し、虎松に父としての言葉を残し、そしてただの亀として次郎…おとわに「戻ったら一緒になってくれ」と言うんだなぁと思ったら、なんか泣けてきたよ。政次に「次郎が還俗したらお前と一緒になるのが良い」と言ったのは、やせ我慢だったんだなぁ。もちろん、自分が井伊の当主として生きていく限りは十分に覆い隠せるやせ我慢だったんだろうけど。生きては戻れないと悟ったあとには、やはり一番亀の根っこにあるおとわへの思いが勝つんだろうなぁ。
 
直親が「たった一つの美しい思い出」って言った時には「おいおい、妻の立場は」って思ったけど、そうか、あの時きちんと夫として妻に誠実に向き合ってお別れしたから、ここにはもう当主だったり夫だったりする直親はいなくて、ただの亀なんだなって思えた。そう思えるのがとても自然な流れだった。根っこにあったおとわへの気持ちの上に、様々なものを羽織って背負って亀は直親に成長し、そして最後の時にそれを一つずつ下ろしたり脱いだりして、亀に戻ったんだろうなぁって。そして、井戸で見送る次郎の「どんな卑怯な手を使っても戻ってこい」っていう叫びが、子役時代のおとわそのものでびっくりした。このシーンも本当に素晴らしかったよぉ;;萌えはないけど燃えるよぉ~;;
 
その他
・佐名様は最後までお美しかった…でも瀬名姫に「今川を手に入れろ」ってそれは呪いですやん…;;
・そして瀬名姫は「今川絶対潰すマン」になり、それが元康との亀裂となる…んだろうなぁ;;
・直平じいちゃんの「もう見送るのはまっぴらじゃ!」って叫びが胸を打つ。あれだけめんどくさい爺さんの言葉だからこそ響く。

おんな城主直虎 第10回「走れ竜宮小僧」

先週のラストの政次の「奥山殿を斬ってしまった…」で今後政次がどれだけ苦労するのかと一週間ヤキモキしてたのに、導入で直親による華麗な推理が披露されて、あっさり真相発覚して気が抜ける。奥山は直親にとって義理の父でもあるのだけど、感情に流されずに真相だけを追い求めようとしてる感じが、直親のいいようのない掴み所のなさを上手く表現してると思う。去年の三成と同じ匂いを感じたなぁ。三成は他人に好かれることを諦めて効率重視で突き進んでた気がするけど、直親は必死で対人スキルを学んでるような気がするんだよねぇ。深読みしすぎかもしれないけども。
 
「真相などどうでもよい!小野を排除するいい機会だ!」って息巻く直平じいちゃんマジ直平。そして小野の名代として殺された奥山の娘であるなつが出てくる!まぁ先週あれだけ政次と心を通わせてたもんね。このまま井伊に何事もなければ、なつは政次の妻になってもおかしくなかったと思わせる色香があそこにはあったよね。だからこそこの嘆願に説得力がある。そしてそのすぐ後に、なつの嘆願は次郎の仕掛けた作戦だということも明かされる。次郎がこうやって策を練ってことを動かそうとするのって初めてな気がする。そしてそれは次郎の覚醒でもあったのかもしれないと思う。こういう一皮むける的エピソードを、さり気なく見せるのいいなぁ。
 
その後も次郎は政次のイメージアップ(?)のためにいろんな人にひっそりと働きかける。直平じいちゃんには「小野は心を入れ替えたようだ」「奥山殿の怨霊が怖くて写経をしているようだ」と気の小さいような噂を立て、政次には「奥山殿を弔うために写経はどうか」と勧めてみせる。双方へ微妙なニュアンスの違う伝え方をしてあるので、双方が同じことを話題にしてもちゃんと会話は破綻しない。ここではこのエピソードだけだったけど、多分次郎は同じようなコトをいろんなところに仕掛けて、少しずつ小野の居場所を作ることに苦心したのだろう。そしてその後、次郎の苦労は一気に報われる。
 
直親と政次の和解は、とてもいいシーンだったよなぁ。まぁ、検地の時のムチャ振りを「これで借りを返したぞ」っていうのはどうなのよとはちょっと思ったけど。だって直親は政次のために誤魔化したり言い訳したりしたわけじゃなく、正しく推理しただけだよね?まぁ、先入観なく事件を推理したことそのものを評価すべきというのは確かにその通りなんだけどさ。ともあれ、直親と政次はここに初めてお互いがお互いを認め合っているということを確認して、今後力を合わせていくための土台を作ることができたのであった。つまり、作った土台は踏みにじられるのが定石。破滅への序章がどんどんクライマックスに向けて突き進んでるってことだよ!ツラ…この大河本当にテンプレを上手く使うよね…!
 
・虎松誕生。梓弓を手持ち無沙汰にベベンと打つ直親の描写がいいね!こういう細かい描写は歴史好きにウケると思う。
・直親が「いい父親であろうと努力してる」ように見える。これって演技プランなのかなぁ、それとも素なんだろうか。演技プランだとしたらど偉い才能のような気がする。今後見守りたい役者さんだ~!

おんな城主直虎 第9回「桶狭間に死す」

バン桶狭間終了。信長の存在どころか、義元の討ち死にシーンすらない、なんともあっけない桶狭間だったことよ。でも水たまりに落ちた扇が象徴的だった。次郎にとっての桶狭間は正にこういう状態だったってことなんだろうな。真田丸でも関ヶ原がほぼ描写なしで話題になってたけど、脚本を書く時期と撮影スケジュール考えたら、多分偶然の一致なんだろうなぁ。二年連続で主要な華々しい合戦シーンをこうやって「描かない」っていう表現が出てくるのが面白かった。
 
直盛が死んだことで井伊は一気に混乱に陥る。あんなに頼りなく見えていた直盛だけど、失われてみるとそれでもこの時期の井伊にとって重要な人物だったのだと言うことが良くわかる。直平の暴走をギリギリでなだめ、小野家との決裂を食い止め、表面上だけでも井伊を一つにまとめ上げていたのは、多分直盛の人柄だったんだろう。その死で一気に崩れ始める井伊家 (の家臣団)の結束が哀れであった…。奥山(でんでん)がねぇ…息子さえドン引きするほどに凝り固まってしまった小野への恨みがまた、怖いし愚かしい。直平以下の井伊家家臣の「小野が嫌いだ。嫌いなあいつは何か悪いことをしているに違いない」っていう思考回路が救いようがないよなー。直盛だって小野が嫌いだっただろうけど、感情で暗殺という手段に走らなかったところがやっぱり違うんだよな。
 
直親は今回は全体的にマイルドだった。特に最後に子供が出来たって喜ぶ姿に「あ、ちゃんとしのと向き合おうと努力してるんだな」って思えて良かった。前回次郎に怒られたから、彼なりに反省したのかと思うと微笑ましい。思うに、直親は他人の心がどう動くかというのを読み解くのが苦手なんだろうなぁと。読み解けないわけではない(検地の時政次に「怒ってるな?」って聞いてたから)けど、自分と違う感じ方考え方をシミュレーションするのは苦手そう。そして、直親自身は高潔で真っ直ぐな人間でありたいと思っているからこそ、そうでない卑屈で捻じ曲がった人間の考え方が理解できないし、そこに決定的な亀裂が生まれるのかなぁと。ただ、直親は直親なりに理解しようと努めているし、怒られれば素直に反省もする。根っからの悪人じゃないんだよな。どうして政次と上手くいかないんだろうねぇ…だからこその人間ドラマであるわけだけども。
 
政次は本当に不憫だよなぁ…たった一人の身内である弟を亡くしてしまって、これから井伊の中で孤立まっしぐらかと思うといたたまれない。あと、今回の奥山との対峙のシーンは本当にすごかった。それまで形だけでも弟の義父として接していた空気から一遍、すっと表情を消して相手に一番威力のある言葉での攻撃に転じる姿には、小野和泉の面影が重なって見えたもんな~。短い期間で強烈に存在感を放った吹越満の小野和泉と、それを意識させる高橋一生の演技がガッチリかみ合った感あった。すごいよね、あのシーン。そしてラストの「奥山殿を切ってしまった…」!あんたそこで次郎を頼るのか…頼らざるを得ないのか…ツラい。本当に政次がツラい。そしてツラいけどそこがいいと思ってしまう高橋一生の捻じれた魅力。なんだろね、これは…。
 
今回は千賀の見せ場回だったのかな。当主の妻として手紙を書きまくってそれぞれの家(を取り仕切る妻)を支えるという仕事。女性のネットワークというものがきちんとこの時代にあったんだなぁと思うと感慨深い。次郎にとっての瀬名も、文通相手というよりはそういう政治的なネットワークという背景から来てるんだろうなぁ。時代劇でいう「奥を取り仕切る」って、言葉ではよく出てくるけど実際に何をしていたかイメージできない部分も大きくて、今回はその一端を垣間見たような気にもなれて、面白かった。あと、最後にしのの懐妊を聞いた時の涙が素晴らしかった。「気が緩んでしまって」っていうあの涙の美しさよ!そしてそれを垣間見る次郎の複雑な表情がまた…千賀が次郎を誇り、頼りに思っているのは確かなのだけど、千賀を本当の意味で救ったのは井伊家の跡継ぎという存在であり、それを自分では決して与えることはできないということを実感しちゃったのかなぁ。エグい脚本だ。だがそこがいい。
 
元康(家康)の岡崎城奪還。桶狭間の大敗北という窮地に、瀬名の叱咤を思い出して取った行動だというのが皮肉よなぁ…阿部サダヲの「戻れてしまったのぉ!」と掴みどころなく喜ぶ姿がまた不穏というかなんというか。瀬名と元康の夫婦の面白くも胃がキリキリする感じは清盛の鳥羽院とたまちゃんみたいな感じなんだけど、瀬名が愛嬌あるキャラ立ちなので今後の展開考えるとちょっと重苦しい気持ちになる…森下さん結構視聴者に対して容赦ないことするよね。だがそこがいい。